いよいよ出産かと期待されていた妊婦パンダが、なんと妊娠していなかった。つまり…“想像妊娠”していたんです。
そんなことってあるんですか? 某動物園の繁殖担当者さんによると…。
「専門用語で“偽妊娠”といいます。パンダだけではなく、クマやイヌでもよく見られる症状です。パンダの場合、妊娠の判定は『交配後の食欲低下や、エサを食べる量の減少、睡眠時間の増加などの行動面』と『陰部や乳首の腫れ』、『黄体ホルモン(プロゲステロン)の変化』などで行われますが、実は妊娠していなくても同じような症状が出る場合があります」
確実なのはエコーやレントゲンでの胎児の確認だそうですが、実施していない動物園も多いのだとか。
では、なぜ偽妊娠が起きるの?
「あくまで仮説ですが。パンダやクマなどのクマ科は交配後に受精卵がすぐ着床せずに、数回分裂して胚の状態で子宮を浮遊しています。これは“着床遅延”といって、出産時に巣にこもって子育てをする動物ならではの現象です。偽妊娠が起きるのは、着床遅延のまま受精卵が着床しなかった場合や、あるいは着床しても途中で流産してしまった場合でも、子宮が妊娠状態で保たれるからではないでしょうか」
なるほど。では、ヒトの場合の“想像妊娠”はどうなのか?
精神科ポケット辞典(弘文堂)によると、「妊娠しているという想像を強固かつ持続的に抱き、その結果、つわり様症状、腹部膨満感、胎動の知覚などあらゆる妊娠を思わせる徴候の他、無月経、乳房の発生、乳汁の分泌、腹部膨張などの身体徴候も伴うもの」とありますが、実際、医療の現場ではどうなのか。
産婦人科医の須藤なほみ先生にうかがいました。
「実は、医学的に“想像妊娠”は存在しません。『心当たり』のある女性が、一時的な月経の遅れや、妊娠の可能性を配するあまり、自分の体調不良をすべて『妊娠の徴候』と結びつけてしまう、単なる勘違いです」
ええー、そうなんですか。
「いずれにせよ、妊娠か想像妊娠かに関わらず、月経が遅れて心当たりがあるなら妊娠検査薬を使うべきです。妊娠していないとわかった途端に月経が来るケースもありますから」
なるほど。「案ずるより…検査するが易し」ですね。
(実はパンダにもあるらしい…“想像妊娠”ってナンダ?)
想像妊娠(妊娠妄想ともいう)とは、自分は妊娠したと誤って確信することであり、いわゆる思いこみによる妊娠です。生殖器や腹部の体感異常を伴うことが多く、「寝ている間に無理やり妊娠させられた」と被害的になることや、「有名人の子を宿した」と誇大的になることもあります。
統合失調症患者にみられることもあり、慢性期には「おなかに100人も入っている」などといった、荒唐無稽で空想的な色彩を帯びることもあります。ヒステリー性の想像妊娠ではつわり、無月経、腹部膨張などの身体所見を伴うことがあります。
無月経、つわり様症状などは卵巣機能不全と自律神経失調症によるもので、腹部の膨隆は鼓腸(ガスが貯まり腹部が膨隆した状態)、胎動感などの症状は腸の蠕動によるものを勘違いしていると考えられます。診断の結果、妊娠でないことが明らかになると、これらの症状は自然に消失することもあります。
一方、偽妊娠とは何かというと、以下のようなものを指します。
そんなことってあるんですか? 某動物園の繁殖担当者さんによると…。
「専門用語で“偽妊娠”といいます。パンダだけではなく、クマやイヌでもよく見られる症状です。パンダの場合、妊娠の判定は『交配後の食欲低下や、エサを食べる量の減少、睡眠時間の増加などの行動面』と『陰部や乳首の腫れ』、『黄体ホルモン(プロゲステロン)の変化』などで行われますが、実は妊娠していなくても同じような症状が出る場合があります」
確実なのはエコーやレントゲンでの胎児の確認だそうですが、実施していない動物園も多いのだとか。
では、なぜ偽妊娠が起きるの?
「あくまで仮説ですが。パンダやクマなどのクマ科は交配後に受精卵がすぐ着床せずに、数回分裂して胚の状態で子宮を浮遊しています。これは“着床遅延”といって、出産時に巣にこもって子育てをする動物ならではの現象です。偽妊娠が起きるのは、着床遅延のまま受精卵が着床しなかった場合や、あるいは着床しても途中で流産してしまった場合でも、子宮が妊娠状態で保たれるからではないでしょうか」
なるほど。では、ヒトの場合の“想像妊娠”はどうなのか?
精神科ポケット辞典(弘文堂)によると、「妊娠しているという想像を強固かつ持続的に抱き、その結果、つわり様症状、腹部膨満感、胎動の知覚などあらゆる妊娠を思わせる徴候の他、無月経、乳房の発生、乳汁の分泌、腹部膨張などの身体徴候も伴うもの」とありますが、実際、医療の現場ではどうなのか。
産婦人科医の須藤なほみ先生にうかがいました。
「実は、医学的に“想像妊娠”は存在しません。『心当たり』のある女性が、一時的な月経の遅れや、妊娠の可能性を配するあまり、自分の体調不良をすべて『妊娠の徴候』と結びつけてしまう、単なる勘違いです」
ええー、そうなんですか。
「いずれにせよ、妊娠か想像妊娠かに関わらず、月経が遅れて心当たりがあるなら妊娠検査薬を使うべきです。妊娠していないとわかった途端に月経が来るケースもありますから」
なるほど。「案ずるより…検査するが易し」ですね。
(実はパンダにもあるらしい…“想像妊娠”ってナンダ?)
想像妊娠(妊娠妄想ともいう)とは、自分は妊娠したと誤って確信することであり、いわゆる思いこみによる妊娠です。生殖器や腹部の体感異常を伴うことが多く、「寝ている間に無理やり妊娠させられた」と被害的になることや、「有名人の子を宿した」と誇大的になることもあります。
統合失調症患者にみられることもあり、慢性期には「おなかに100人も入っている」などといった、荒唐無稽で空想的な色彩を帯びることもあります。ヒステリー性の想像妊娠ではつわり、無月経、腹部膨張などの身体所見を伴うことがあります。
無月経、つわり様症状などは卵巣機能不全と自律神経失調症によるもので、腹部の膨隆は鼓腸(ガスが貯まり腹部が膨隆した状態)、胎動感などの症状は腸の蠕動によるものを勘違いしていると考えられます。診断の結果、妊娠でないことが明らかになると、これらの症状は自然に消失することもあります。
一方、偽妊娠とは何かというと、以下のようなものを指します。
妊娠時の子宮内膜(脱落膜)の形成(脱落膜反応)を、脱落膜形成といいます。脱落膜は非妊娠子宮の分泌期末期の子宮内膜から連続的に移行して生じるので、組織学的には分泌像や細胞内へのグリコーゲン顆粒の蓄積など、同一の所見を示します。
こうした脱落膜形成は、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)の作用で起こり、子宮内における妊卵や胎芽の存在は不要となります。こうした妊娠によらない脱落膜形成を、偽妊娠(pseudopregnancy)と呼び、実験動物ではホルモン処理や子宮頸部の機械的刺激により、人為的に起こすことができます。ちなみに、偽妊娠状態の動物に胚盤胞を移植すると高率に着床、妊娠が成立するそうです。
また、ヒトの場合、流産とされる症例で子宮内に絨毛が認められないにもかかわらず脱落膜が維持される場合は、子宮外妊娠を疑う必要があります。
さらに、「偽妊娠療法」と呼ばれるものがあります。これは、性ステロイドホルモンの長期投与で偽妊娠状態として各種病態の改善をめざす治療法です。
卵巣機能低下による子宮発育不全では、エストロゲンとプロゲステロンを併用持続投与することで子宮の軟化増大を起こします。月経困難症では、プロゲステロン単独またはプロゲステロンとエストロゲンの併用投与(連続あるいは周期的)で排卵を抑制すると症状は改善します。
また、子宮内膜症の進展抑制にも用いられ、これは排卵周期に比べて、低エストロゲン状態となるため、さらにはプロゲステロンには異所性の子宮内膜組織を脱落膜化へと誘導して萎縮させる効果があるといわれています(ただし、偽閉経療法より劣るため、現在はあまり用いられていません)。
【関連記事】
仰天ニュース系の症例集
胃バイパス手術−妊娠しているのに痩せていく不思議
こうした脱落膜形成は、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)の作用で起こり、子宮内における妊卵や胎芽の存在は不要となります。こうした妊娠によらない脱落膜形成を、偽妊娠(pseudopregnancy)と呼び、実験動物ではホルモン処理や子宮頸部の機械的刺激により、人為的に起こすことができます。ちなみに、偽妊娠状態の動物に胚盤胞を移植すると高率に着床、妊娠が成立するそうです。
また、ヒトの場合、流産とされる症例で子宮内に絨毛が認められないにもかかわらず脱落膜が維持される場合は、子宮外妊娠を疑う必要があります。
さらに、「偽妊娠療法」と呼ばれるものがあります。これは、性ステロイドホルモンの長期投与で偽妊娠状態として各種病態の改善をめざす治療法です。
卵巣機能低下による子宮発育不全では、エストロゲンとプロゲステロンを併用持続投与することで子宮の軟化増大を起こします。月経困難症では、プロゲステロン単独またはプロゲステロンとエストロゲンの併用投与(連続あるいは周期的)で排卵を抑制すると症状は改善します。
また、子宮内膜症の進展抑制にも用いられ、これは排卵周期に比べて、低エストロゲン状態となるため、さらにはプロゲステロンには異所性の子宮内膜組織を脱落膜化へと誘導して萎縮させる効果があるといわれています(ただし、偽閉経療法より劣るため、現在はあまり用いられていません)。
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