オフィスにいると、どうも乾燥しがち。肌もカサカサするし、なんだか口も渇くし…。と思っていたら、これ「ドライマウス」という病気らしい。鶴見大学歯学部附属病院長の斎藤一郎先生、詳しく教えてください!

「欧米の疫学調査では患者数は『人口の25%』といわれており、そこから推計すると、日本では3000万人がドライマウス(口腔乾燥症)と考えられるんですよ」
そ、そんなに!? ただ、これは、昔からあったものが「ドライマウス」という病名によって顕在化したのか、新しく発生したのかはわからないのだという。

「ドライアイ患者の多くが、ドライマウスだといわれています。これは『乾燥症候群』の典型的な一つ。現代人は、住環境の変化などで適度な湿気を失い、目も口も肌も髪も乾燥しているんです」(同)

口の渇き以外にも、「口がマズイ」「ネバネバする」「ペットボトルを手放せない」など、様々な症状があるそうだ。でも、口が渇くと何が困るんでしょう?
「唾液が少なくなると、虫歯や歯周病になりやすく、口臭が強くなったり、ものを飲みこみにくくなることもあります。それに、感染症にもかかりやすくなるんですよ」

唾液には、消化作用や抗菌作用、粘膜保護作用や歯の保護作用などがあるほかに、「全身の状態のバロメーター」にもなり、唾液量の多少で自分の健康状態やストレスもわかるのだとか。症状が気になる人は医師に相談する必要があるそうだが、唾液量を減らさないためにはどうしたらいいのでしょう?

「軟らかいものばかり食べていると、噛む回数の低下にともない唾液も減るので、噛みごたえのある食事をしましょう。ストレスも一因になりますね」

唾液量が減ってしまう原因にはクスリの副作用もあり、クスリに頼らない生活も大切だそう。もともと「虫歯になりにくい人」「風邪をひきにくい人」などは、唾液量の多さと関係があるとか。唾液って、健康体を作る意外な名脇役だったのね。
(口の現代病ドライマウスキミは大丈夫?)


口腔乾燥症とは、唾液分泌の減少により生じる口腔乾燥状態を示す症状名です。簡単に言ってしまえば、何らかの原因によって口の中が乾燥してしまう疾患です。口腔乾燥感のみの場合と、実際に口腔乾燥症状を呈するものとがあります。

そもそも唾液は、食べ物の消化を助けたり口の中を清潔に保つなど、数多くの重要な役割を果たしている分泌液です。その分泌量は、実に一日約1.5リットルです。分泌量そのものは加齢とともに減少し、特に50歳代以降の女性において著しいといわれています。

口腔乾燥症状の主な原因としては、加齢による変化のほかに、脱水や糖尿病、シェーグレン症候群などの全身的な疾患、薬剤の副作用、ストレス、口呼吸や齲蝕(むし歯)、歯周病、義歯不適合などの局所的な問題も関与していると考えられています。

唾液の分泌は、自律神経によってコントロールされています。リラックスして副交感神経が活発になると、唾液の量は増加し、逆に緊張し交感神経が活発になると減少します。ストレスが多い生活をしていると、唾液分泌が低下してしまうことになります。

唾液の分泌の減少は、口内炎や口腔粘膜の萎縮変性、嚥下困難、齲蝕の進行や義歯の不適合などさまざまな不快症状を呈することになります。

唾液分泌の減少により口の中が渇き「乾いた食べ物が飲み込みにくい」といった症状が現れることがあります。これは「クラッカーサイン」と呼ばれるドライマウスの最も典型的な初期症状です。

さらに唾液量の低下により、口の中の雑菌の増加が起こります。通常、口の中にいる常在菌は、唾液によって定期的に洗い流され、唾液の抗菌物質により一定量に抑えられています。ですが、唾液が減るとこの洗浄効果が低下し、カンジダ菌というカビの一種が一気に増殖し、炎症を引き起こしてしまいます。さらに味を感じる味蕾にまで及ぶと、その機能が極端に低下し、ほとんど味を感じることができなくなってしまうといった事態にもなりかねません。

診断や治療としては、以下のように行います。
診断としては、まず問診により基礎疾患の有無、常用薬剤のチェックを行います。次いで口腔粘膜の萎縮、口内炎や粘膜疾患の有無のほかに、齲蝕(虫歯)・歯周病や義歯の状態などを診てから、実際の唾液分泌量を測定します。

唾液分泌量を検査するには、安静時唾液量、刺激時唾液量(ガムテスト、サクソンテスト)があります。安静時唾液量1.5mL/15分以下、ガムテスト(ガムを10分間咬んで出てきた唾液の量を測定)10mL/10分以下、サクソンテスト(ガーゼに吸収した唾液量を測定)2g/2分以下で唾液分泌量低下と診断します。

膠原病の一種であるシェーグレン症候群の診断のためには、血液検査にて抗SS-A/Ro、抗SS-B/La抗体を含む自己免疫検査を行います。唾液腺機能検査としては、唾液腺シンチグラフィー、唾液腺造影、口唇腺生検などがあります。

治療としては、原因の除去と含嗽(うがい)、人工唾液などの対症療法を行います。こまめな水分摂取や、キシリトール配合ガムの咀嚼により唾液分泌は促進されます。また、唾液腺のマッサージ、舌や口腔の運動なども効果的です。口腔乾燥が強い場合には、保湿成分の入った洗口剤など(絹水、オーラルウエット、オーラルバランス)を用います。

外用剤として人工唾液であるサリベート(噴霧式エアゾール)、うがい液であるアズノール、イソジンガーグルなどがあります。内服薬としてツムラ麦門冬湯やツムラ白虎加人参湯などの漢方薬、去痰剤などが用いられることもあります。

口腔乾燥が強い場合には、保湿成分の入った洗口剤など(絹水、オーラルウエット、オーラルバランス)などを用いることもあります。口内炎が起こっている場合は、ビタミン剤(ビタノイリン)やアムホテリシンB(ファンギゾン)のシロップなどを用いることがあります。

「口が渇く」「乾いた物が食べにくくなった」といった方は、耳鼻咽喉科などを受診されてはいかがでしょうか。

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