読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
関節リウマチと診断されました。一生治らない病気だと聞いていますが、本当にそうなのでしょうか。現在は手足の指に少し痛みがある程度です。軽いうちに何か対策は取れますか。(埼玉・56歳女性)
この相談に対して、長野県厚生連篠ノ井総合病院リウマチ膠原病センター長である浦野房三先生は、以下のようにお答えになっています。
手足に軽い痛みがあり、関節リウマチと診断されたとのことですが、手足の指にほんの少し痛みがあるだけでは関節リウマチという診断はつきません。手足の指には腫れはありますか? 腫れがないと関節リウマチという診断名はつきません。「線維筋痛症」など、ほかの疾患の可能性も考えなくてはなりません。

関節リウマチであると仮定してお答えすると、一番重要なのは、専門医を受診し、しっかりした治療を受けることです。治療は投薬治療が中心になります。

抗リウマチ薬「ブシラミン」(商品名リマチル)や「サラゾスルファピリジン」(同アザルフィジンEN)などに加え、最近は免疫抑制剤「メトトレキサート」(商品名リウマトレックス)なども投与され、痛みを和らげます。ステロイド剤の少量投与もあります。

関節リウマチ(RA)とは、骨の破壊を特徴とする慢性の多関節炎であり、しばしば関節以外の臓器病変(発熱、全身倦怠感、食欲不振などの全身症状や間質性肺炎、リウマトイド結節、アミロイドーシスなど)も引き起こすことがあります。

原因は不明ですが、自己免疫機序が関係していると考えられています。特に、関節局所において腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン1(IL-1)、IL-6などの炎症性サイトカインが過剰に産生され、これが関節破壊を導くと推測されています。

これらのサイトカインが産生され、炎症に強く関与します。サイトカイン産生により形質細胞が浸潤し、リウマチ因子(RF)が産生されます。また、関節滑液中に最も多く遊走してきた好中球は、蛋白分解酵素や活性酵素を放出することにより、骨・軟骨の破壊に働いてしまいます。

症状としては、多発性(3関節以上)対称性関節炎を特徴とします。ですが、はじめは必ずしもこの限りではありません。手関節、中手指節関節(指の第二関節)、近位指節間関節(指の付け根の関節)などの手の関節が最も侵されやすく、初発部位も手の関節が最も多く、約50%を占めます(遠位指節間関節[指の第一関節]が侵されることは稀です)。

罹患関節の疼痛、腫脹、熱感、可動域制限(動かしづらい)といった症状が現れます。また、炎症が著明であれば、発赤も出現します。さらに、関節リウマチで特徴的な朝のこわばり、安静後のこわばりもほとんど必発し、大きな特徴となっています。進行すると骨破壊が起こり、次第に変形してきます。たとえば、関節を支える靱帯の弛緩とともに関節の屈曲や過進展をきたして、指のスワンの首変形やボタン穴変形と呼ばれる変形が起きることもあります。

さらには、足では、中足趾節関節(足のつけ根の関節)が特に変形をきたしやすく、第1趾(親指)は外反変形して下にもぐりこみ、第2、3、4趾は先端が上方に変位しやすく伸展拘縮し、第一関節の伸展拘縮を伴うと槌趾となり、歩行に障害が出やすくなります。

上記にもありますが、関節痛を起こす疾患は他にもあります。たとえば、変形性関節症では、関節炎は遠位指節間関節(指の第一関節)に対称性かつ多発性に起こります。腫脹は骨形成性の変化を反映して硬く触れ、時に発赤を伴います(Heberden結節といいます)。また、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病や、乾癬(多発性かつ対称性の関節炎を起こし、同時に特有の皮疹と爪変化が起こる)などでも起こりえます。

関節リウマチの治療は、非ステロイド抗炎症薬や副腎皮質ステロイド剤により、患者さんのQOLを保ちつつ(痛みや全身症状を抑え)、抗リウマチ薬(disease-modifying antirheumatic drugs:DMARDs)や抗サイトカイン療法により、関節破壊の進行を阻止して、関節リウマチの長期予後を改善させることにあります。

関節痛に対しては、非ステロイド抗炎症薬が用いられ、ロキソニンやハイペンなどが用いられます。高齢者や潰瘍既往歴を有する患者さんにはCOX-2選択性の高い薬剤を優先します。消化器症状の訴えがあれば胃粘膜保護薬を併用することになります。

活動性が低〜中等度、関節破壊の進行は遅いと判断できる場合では、アザルフィジンENやリマチルなどの抗リウマチ薬が用いられます。また、活動性が高く、関節破壊の進行が予知される場合は、リウマトレックス(DMARDs)、プレドニゾロンなどが用いられます。

リウマトレックスは関節リウマチ治療の標準薬となっています。週4mgから開始し、その効果と副作用をチェックしながら週8mgまで増量します。ただ、肝機能異常や口内炎をきたす場合や、副作用を起こすリスクが高い場合には、フォリアミン(葉酸)を投与します。

ほかにも、最近では以下のような治療薬があります。
最近、関節リウマチに画期的な治療薬が使われるようになりました。生物学的製剤といわれる薬で、現在、日本では4種類の薬(レミケードなど)が使われています。病気の進行による関節破壊を抑えると言われ、痛みに対する効果も以前の薬に比べて格段に優れた効果が期待できます。

治癒は難しいですが、症状が軽くなる場合もあります。特に、症状の軽いうちに投与すると、かなりの患者さんで軽い症状を維持できます。10年前には考えられなかった良い治療ができるようになりました。あまり悲観しないようにしましょう。
上記にもありますが、関節リウマチでは、炎症を起こしたり、骨を破壊する細胞を活性化させたりする物質、サイトカインが病状悪化の一因となります。

その働きを防ぐよう、遺伝子組み換え技術を使って作ったのが生物製剤であるTNF阻害薬(レミケード、エンブレル)などです。従来使われていた抗リウマチ薬は、ある程度、炎症を抑えることはできましたが、関節破壊を防ぐ効果は低いと考えられています。

ほかにも、今年4月承認された「アクテムラ(一般名トシリズマブ)」と「ヒュミラ(同アダリムマブ)」があります。他の生物製剤3薬は、サイトカインの中でも「TNF(腫瘍壊死因子)-α」の働きを抑えますが、アクテムラは別のサイトカイン「IL(インターロイキン)-6」を標的とするといった違いがあります。ですので、ほかの薬が無効な場合にも効く可能性がある、と期待されます。

ですが、感染症や注射時反応など、重篤な副作用をきたすことがあります。そのため、使用開始前に結核既往歴および曝露歴を確認、ツベルクリン反応、胸部X線撮影などを行う必要があります。また、ニューモシスチス肺炎や細菌性肺炎にも、注意する必要があります(これらの肺炎は高齢者、糖尿病や呼吸器疾患合併者にきたしやすいです)。

さらに、高価であり、患者さんの医療費負担が大きいというデメリットもあります。これら4製剤は、保険の3割負担でも年40万〜60万円ほどかかるといわれています。

こうしたメリット・デメリットをしっかりと認識された上で、治療を選択されることが望まれます。

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