読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovary syndrome)とは、日本産科婦人科学会による診断基準によると、
障害の発端となる原因は不明ですが、視床下部−下垂体−卵巣で構成される内分泌機能循環の円滑な回転が障害されて起こる疾患と考えられています(どの異常を発端としても同様の悪循環に陥り、最終的には類似の症状を呈すると考えられる)。ちなみに、日本では欧米女性に比較して多毛、肥満の頻度が低い一方、排卵障害に基づく月経異常や、不妊の頻度が高く、卵巣の形態的変化も軽い傾向にあるといわれています。
検査としては、内分泌検査および卵巣の超音波が重要となります。血中ゴナドトロピン値の中でもLHの基礎分泌値の上昇(80%以上で7mIU/mlを超える)、FSHは正常範囲、その結果LH/FSH比は高値(80%以上で1.0以上)を示します。また、LHRH負荷試験でLHは過剰反応(80%以上)、FSHは正常反応(90%以上)を示します。
さらに、性ステロイドホルモン値はエストロン/エストラジオール比の上昇(80%以上)、テストステロン、遊離テストステロン、アンドロステンジオンの異常高値が30〜50%で認められます。
超音波断層検査により約半数に卵巣の腫大、80%以上に嚢胞状変化が認められています(開腹手術などの肉眼的な観察でも、卵巣腫大、白膜肥厚、隆起などの変化が認められるそうです)。
治療としては、以下のようなものがあります。
具体的には、クロミフェン療法といって排卵誘発薬であるクロミッド錠(50mg)1〜3錠を月経または消退出血の5日目から5日間投与すると、投与終了後に7日間程度で排卵に至ることがあります。クロミフェン療法を数周期行っても妊娠が成立しない場合では、インスリン抵抗性があるときには血糖降下薬であるメルビンや副腎性アンドロゲン高値ではプレドニン錠(5mg)1〜2錠内服を行います。
クロミフェンが奏功しない場合は、ゴナドトロピン療法が用いられます。精製FSH製剤(フェルティノームP注、ゴナピュール、HMG日研注など)を月経または消退出血の5日目から連日投与します。75単位/日から開始し、卵胞発育に応じて適宜増量します。卵胞が成熟(18mm)したら、hCG製剤(ゴナトロピン注、5,000単位)を投与して、排卵を誘起します。ただ、卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠などの副作用の発生が起こる可能性があり、注意が必要です。
薬物療法が奏効しない場合には、腹腔鏡下に電気焼灼術やCO2レーザーやKTPレーザーによる卵巣の蒸散が行われます。排卵率は薬物療法と遜色なく、副作用は少ないといわれています。
こうした治療があり、お子さんを希望される場合は、主治医としっかりと話し合いをもち、選択されることが望まれます。
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24歳の娘のことで相談します。月経がなく、「多嚢胞(のうほう)性卵巣症候群」と診断され、現在は服薬して月経を起こしています。娘は来年結婚する予定ですが、妊娠は可能ですか。(千葉県母)この相談に対して、国立成育医療センター不妊診療科医長である斉藤英和先生は、以下のようにお答えになっています。
多嚢胞性卵巣症候群は、妊娠、出産を考える年齢の女性によく起こるホルモンの病気です。原因は不明ですが、全世界で15人に1人の割合で見られます。
今回のように、月経不順になって病院を訪れて見つかる人が多く、
1)無月経などの月経不順
2)男性ホルモンが高かったり多毛などの男性化兆候が見られる
3)卵子を含む小さな卵胞が異常に多く存在する
――ことにより診断されます。
この症候群は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の効きが悪くなることが指摘されています。
妊娠するには、飲み薬や注射薬で排卵促進剤を投与することが多く、この方法で多くの方が排卵するようになり、妊娠、出産することができます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovary syndrome)とは、日本産科婦人科学会による診断基準によると、
・臨床症状:月経異常、不妊、多毛、肥満を主訴とする症候群です。これらの必須項目である、臨床症状として無月経、稀発月経、無排卵周期症などの月経異常や、内分泌検査所見としてはLHの基礎分泌値高値、FSHは正常範囲、卵巣所見として超音波断層検査で多数の卵胞の嚢胞状変化のすべてが認められた場合、多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。
・卵巣の形態的変化:多嚢胞性変化
・内分泌異常:血中LH/FSH比の高値、血中男性ホルモンの過剰
障害の発端となる原因は不明ですが、視床下部−下垂体−卵巣で構成される内分泌機能循環の円滑な回転が障害されて起こる疾患と考えられています(どの異常を発端としても同様の悪循環に陥り、最終的には類似の症状を呈すると考えられる)。ちなみに、日本では欧米女性に比較して多毛、肥満の頻度が低い一方、排卵障害に基づく月経異常や、不妊の頻度が高く、卵巣の形態的変化も軽い傾向にあるといわれています。
検査としては、内分泌検査および卵巣の超音波が重要となります。血中ゴナドトロピン値の中でもLHの基礎分泌値の上昇(80%以上で7mIU/mlを超える)、FSHは正常範囲、その結果LH/FSH比は高値(80%以上で1.0以上)を示します。また、LHRH負荷試験でLHは過剰反応(80%以上)、FSHは正常反応(90%以上)を示します。
さらに、性ステロイドホルモン値はエストロン/エストラジオール比の上昇(80%以上)、テストステロン、遊離テストステロン、アンドロステンジオンの異常高値が30〜50%で認められます。
超音波断層検査により約半数に卵巣の腫大、80%以上に嚢胞状変化が認められています(開腹手術などの肉眼的な観察でも、卵巣腫大、白膜肥厚、隆起などの変化が認められるそうです)。
治療としては、以下のようなものがあります。
ただ、排卵促進剤を使うと一度に多くの排卵が起こることがあり、卵巣が腫れやすくなったり、多胎妊娠も起こしやすくなったりするので注意が必要です。上記のように、挙児希望がある場合は、排卵障害の程度に合わせて積極的に排卵誘発治療を行います。一方、挙児希望がない場合には、子宮内膜癌発生の予防を目的に性ホルモン周期投与によるホルモン補充を行います(にきびや多毛などに対する治療希望がある場合にも、性ホルモン療法を行います)。
また妊娠後は、流産や糖尿病、高血圧など妊娠合併症を起こしやすくなるので、注意深く経過を診ていかなければなりません。
肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人は、減量してから妊娠した方が、妊娠合併症を起こす割合が減ります。減量することで、自然に排卵することもあります。
この症候群の患者は、高齢になってから、糖尿病や心血管疾患を起こしやすくなるとも指摘されています。医療機関で、体の状態を注意深く診ていくことが必要です。
具体的には、クロミフェン療法といって排卵誘発薬であるクロミッド錠(50mg)1〜3錠を月経または消退出血の5日目から5日間投与すると、投与終了後に7日間程度で排卵に至ることがあります。クロミフェン療法を数周期行っても妊娠が成立しない場合では、インスリン抵抗性があるときには血糖降下薬であるメルビンや副腎性アンドロゲン高値ではプレドニン錠(5mg)1〜2錠内服を行います。
クロミフェンが奏功しない場合は、ゴナドトロピン療法が用いられます。精製FSH製剤(フェルティノームP注、ゴナピュール、HMG日研注など)を月経または消退出血の5日目から連日投与します。75単位/日から開始し、卵胞発育に応じて適宜増量します。卵胞が成熟(18mm)したら、hCG製剤(ゴナトロピン注、5,000単位)を投与して、排卵を誘起します。ただ、卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠などの副作用の発生が起こる可能性があり、注意が必要です。
薬物療法が奏効しない場合には、腹腔鏡下に電気焼灼術やCO2レーザーやKTPレーザーによる卵巣の蒸散が行われます。排卵率は薬物療法と遜色なく、副作用は少ないといわれています。
こうした治療があり、お子さんを希望される場合は、主治医としっかりと話し合いをもち、選択されることが望まれます。
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