ダウン症などの染色体異常の有無を出生前に調べる、リスクの少ない検査法が実現に近づいていることが報告された。現在行われている羊水穿刺や絨毛生検では、子宮に針を刺す必要があり、約0.5%の流産リスクを伴う。
今回の新しい技術は、母体の血液中の胎児DNAを利用するというもの。米スタンフォード大学、ハワード・ヒューズ医療研究所およびルーシー・パッカードLucile Packard小児病院の研究グループ(いずれもカリフォルニア州)は、母体DNAとそれに混じるわずかな胎児DNAとを区別する必要がないことを明らかにし、これまでの問題を克服することに成功した。
この技術は、胎児の染色体数の異常(異数性異常)を調べるもの。ダウン症は21番染色体に重複が生じる異数性異常の一種。今回の研究では、胎児に異数性異常のある妊娠女性12人と、正常な妊娠女性6人の検体を用いた。その結果、ダウン症児を妊娠中の女性は、正常妊娠の女性に比べて血液中に21番染色体の断片が多く認められたという。
この検査法で、21番以外のほかの染色体の異数性異常も検知できるという。また、胎児DNAは妊娠初期から母体血中に認められるため、胎児の異数性異常をこれまでよりも早く診断できるようになる可能性もある。スタンフォード大学教授のStephen Quake氏は「胎児がダウン症であると早く知ることができれば、心構えも十分にできる」と述べている。この技術は、高速DNAシークエンシングが医療に用いられるさまざまな方法の最先端をいくもので、次のステップは、さらに多数の女性を対象とする研究で今回の結果を再現することだという。
(ダウン症の出生前診断が母親の血液検査で可能に)
ダウン症(21-トリソミー症候群)とは、21番染色体の過剰による染色体異常です。全体の93−95%は21番染色体が1本過剰の21トリソミーで、親のどちらかの配偶子形成過程(減数分裂時)の染色体不分離に起因するといわれています。
出生率は約1,000人に1人であり、出生時の母親の年齢が高くなると、出生頻度は高くなるといわれています。数%に認められる転座型21トリソミーの場合は、散発性であれば遺伝性はありませんが、親のどちらかが転座染色体保因者であれば遺伝性となります。
中等度精神遅滞、特異な顔貌のほか(平坦な顔面中央部、眼瞼裂斜上、耳介異形成、内眼角贅皮、鼻橋の低下した小さい鼻など)、筋緊張低下、低身長、小頭症、短い手指、第5指内彎が認められます。合併症として先天性心奇形、十二指腸閉鎖、ヒルシュスプルング病、鎖肛、環軸椎脱臼が知られています。指紋、手掌紋にも特徴があります。
先天性心奇形(約40%に合併がある)として、心室中隔欠損症、心内膜床欠損症、心房中隔欠損症、ファロー四徴症、動脈管開存症などさまざまで、小児循環器専門家の診察と心エコー検査が必須となります。
頚椎脱臼・亜脱臼も合併症としてよく知られており、5mm以上のADI(環軸椎亜脱臼の指標)はダウン症患児の約15%にみられます。さらにダウン症患児は、関節の可動性が大きいとされ、小児期に後天性の股関節脱臼が時にみられる。膝蓋骨脱臼の例も稀にあるといわれています。
足も特徴的で、とくに筋緊張低下による外反位と、小さく外反位をとる(簡単にいえば、X脚気味になる)踵骨がみられます。このため歩行障害や疼痛を訴えることも多い。それを補正する靴が、ほとんどの児で必要になるようです。
診断や加療としては、以下のようなものがあります。
今回の新しい技術は、母体の血液中の胎児DNAを利用するというもの。米スタンフォード大学、ハワード・ヒューズ医療研究所およびルーシー・パッカードLucile Packard小児病院の研究グループ(いずれもカリフォルニア州)は、母体DNAとそれに混じるわずかな胎児DNAとを区別する必要がないことを明らかにし、これまでの問題を克服することに成功した。
この技術は、胎児の染色体数の異常(異数性異常)を調べるもの。ダウン症は21番染色体に重複が生じる異数性異常の一種。今回の研究では、胎児に異数性異常のある妊娠女性12人と、正常な妊娠女性6人の検体を用いた。その結果、ダウン症児を妊娠中の女性は、正常妊娠の女性に比べて血液中に21番染色体の断片が多く認められたという。
この検査法で、21番以外のほかの染色体の異数性異常も検知できるという。また、胎児DNAは妊娠初期から母体血中に認められるため、胎児の異数性異常をこれまでよりも早く診断できるようになる可能性もある。スタンフォード大学教授のStephen Quake氏は「胎児がダウン症であると早く知ることができれば、心構えも十分にできる」と述べている。この技術は、高速DNAシークエンシングが医療に用いられるさまざまな方法の最先端をいくもので、次のステップは、さらに多数の女性を対象とする研究で今回の結果を再現することだという。
(ダウン症の出生前診断が母親の血液検査で可能に)
ダウン症(21-トリソミー症候群)とは、21番染色体の過剰による染色体異常です。全体の93−95%は21番染色体が1本過剰の21トリソミーで、親のどちらかの配偶子形成過程(減数分裂時)の染色体不分離に起因するといわれています。
出生率は約1,000人に1人であり、出生時の母親の年齢が高くなると、出生頻度は高くなるといわれています。数%に認められる転座型21トリソミーの場合は、散発性であれば遺伝性はありませんが、親のどちらかが転座染色体保因者であれば遺伝性となります。
中等度精神遅滞、特異な顔貌のほか(平坦な顔面中央部、眼瞼裂斜上、耳介異形成、内眼角贅皮、鼻橋の低下した小さい鼻など)、筋緊張低下、低身長、小頭症、短い手指、第5指内彎が認められます。合併症として先天性心奇形、十二指腸閉鎖、ヒルシュスプルング病、鎖肛、環軸椎脱臼が知られています。指紋、手掌紋にも特徴があります。
先天性心奇形(約40%に合併がある)として、心室中隔欠損症、心内膜床欠損症、心房中隔欠損症、ファロー四徴症、動脈管開存症などさまざまで、小児循環器専門家の診察と心エコー検査が必須となります。
頚椎脱臼・亜脱臼も合併症としてよく知られており、5mm以上のADI(環軸椎亜脱臼の指標)はダウン症患児の約15%にみられます。さらにダウン症患児は、関節の可動性が大きいとされ、小児期に後天性の股関節脱臼が時にみられる。膝蓋骨脱臼の例も稀にあるといわれています。
足も特徴的で、とくに筋緊張低下による外反位と、小さく外反位をとる(簡単にいえば、X脚気味になる)踵骨がみられます。このため歩行障害や疼痛を訴えることも多い。それを補正する靴が、ほとんどの児で必要になるようです。
診断や加療としては、以下のようなものがあります。
診断としては、上記のような身体的特徴(顔貌、外表奇形)、筋緊張低下などから本症を疑い、確定診断は染色体検査で行います。出生時体重は、特に男児で平均より小さいです。
このような確定診断を行う際、診断のための採血を行う時点から両親へ十分な説明を行う必要があります。染色体結果を告知する際には、ダウン症候群の症状や予後だけでなく、染色体のしくみや染色体異常の説明、遺伝性の有無(21トリソミーは両親の染色体は正常であること、転座型では両親の染色体検査が必要なこと)など時間をかけた説明が必要となります。
育てる上では、発育発達障害があり、哺乳力の弱い場合も多いですが、育児は普通に行います。また、軽いかぜや滲出性中耳炎などを繰り返すことが多いです(予防接種は通常のスケジュールで行う)。かかりつけの小児科医、耳鼻科医をみつけておくことも重要です。
年齢に応じた健診、検査が必要となり、乳児期は1−3ヶ月間隔で、特に心疾患、けいれん、難聴の有無に注意する必要があります。発達に合わせて就学前までに視力、聴力、頸椎X線写真撮影(環軸椎脱臼の精査)を行っておく必要もあります。血液検査では白血病、甲状腺機能障害、高尿酸血症などをきたしやすいので、こうした検査も必要になります。
上記の技術は、倫理的な問題をはらんでいるとも考えられますが、その一方で流産のリスクを低下させるという利点もあります。侵襲性の低い検査を行えるということは、妊婦さんにとっても有用なことであると考えられます。
【関連記事】
不妊症・不妊治療のまとめ
羊水とは何か−妊娠中における機能と臨床的意義
このような確定診断を行う際、診断のための採血を行う時点から両親へ十分な説明を行う必要があります。染色体結果を告知する際には、ダウン症候群の症状や予後だけでなく、染色体のしくみや染色体異常の説明、遺伝性の有無(21トリソミーは両親の染色体は正常であること、転座型では両親の染色体検査が必要なこと)など時間をかけた説明が必要となります。
育てる上では、発育発達障害があり、哺乳力の弱い場合も多いですが、育児は普通に行います。また、軽いかぜや滲出性中耳炎などを繰り返すことが多いです(予防接種は通常のスケジュールで行う)。かかりつけの小児科医、耳鼻科医をみつけておくことも重要です。
年齢に応じた健診、検査が必要となり、乳児期は1−3ヶ月間隔で、特に心疾患、けいれん、難聴の有無に注意する必要があります。発達に合わせて就学前までに視力、聴力、頸椎X線写真撮影(環軸椎脱臼の精査)を行っておく必要もあります。血液検査では白血病、甲状腺機能障害、高尿酸血症などをきたしやすいので、こうした検査も必要になります。
上記の技術は、倫理的な問題をはらんでいるとも考えられますが、その一方で流産のリスクを低下させるという利点もあります。侵襲性の低い検査を行えるということは、妊婦さんにとっても有用なことであると考えられます。
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