左ひざ前十字じん帯の再建手術を10日に受けた鹿島のMF小笠原が、25日から鹿嶋のクラブハウスでリハビリを開始することになった。全治6カ月の診断で来季の開幕戦出場も絶望的だが、チームは4月上旬での復帰を目標に全力でバックアップしていくことになる。

一方、右ひざ痛で離脱中のDF中田は、患部の再手術を決断した。バーゼルに所属していた4月に初めて手術を受けたが、いまだに回復の兆しが見られないため「これまで、だましだましでやってきたけどもう限界」と再度メスを入れることを決めた。復帰時期について「3カ月以上はかかると思う」と話しており、来季の開幕に間に合うかは微妙だ。
(「もう限界」中田浩二が再手術決断)


膝関節の主要な支持機構として、前十字靱帯、後十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯があります。

前十字靱帯は、前内側線維束と後外側線維束に分けられ、脛骨顆部の前方への亜脱臼を抑止します。5mmの前方移動に対して、前十字靱帯は全抑制力の87%(30°)および85%(90°)を担います。また、下腿内旋および膝関節の過伸展を制動する役割があります。

前十字靱帯は、スポーツに伴い損傷することが多いようです(受傷機転は膝の外反と下腿の内旋強制が多いが、時には自己筋力によっても損傷する)。バスケットボールやバレーボールのジャンプ・着地あるいは急な停止時に受傷する、非接触性損傷が60〜70%を占めます。ほかにも、スキーの転倒や膝外側にタックルを受け、膝関節の外反を強制され内側側副靱帯とともに損傷するケースがあります。

受傷時に断裂音・断裂感(popping)を認めることがあります。こうした断裂感は、35〜80%にみられます。受傷後数時間で関節の腫脹(関節血腫)をきたします。関節血症による腫脹が生じた場合、屈伸、荷重は困難となります。受傷時には、スポーツ活動時に膝くずれを生じることがあります(放置すると階段を下りる時などに膝がわるいと、意識していないと膝くずれを起こします)。

スポーツに復帰すると、再受傷や膝くずれに対する不安感から、スポーツの継続は困難となってしまいます。やがて半月板損傷を合併し、嵌頓症状を訴えて来院することも多いです。

診断や治療としては、以下のようなものがあります。
検査としては、まず徒手不安定性テストがあり、前方引き出しテスト、Lachmanテスト、Nテストなどがあります。具体的には、健常な膝では前方への引き出しに対して“ガツッ”と膝の制動(hard end point)を触知しますが、損傷膝でははっきりしません(soft end point)。ただ、新鮮例では疼痛のため深い屈曲が困難となることもあります(不安定性の検査にあたっては健側と比較することが重要)。

単純X線で、Segond骨折といわれる前外側の関節包の小さな剥離骨折を認めれば、前十字靱帯損傷を伴います。ストレスX線は、徒手テストで検出しにくい症例や後十字靱帯損傷の鑑別に役立ちます。

MRIは靱帯の走向、形態、性状を検出するので、前十字靱帯損傷の診断の精度は高いでです。不全損傷も高信号化から明らかになります。また、MRIで大腿骨外側顆と脛骨外側顆後部に骨挫傷を認めれば、前十字靱帯損傷の補助診断となります。

治療方法には保存療法、一次修復術、再建術があります。保存療法としては、筋力強化や膝くずれをしないようにスポーツや日常生活動作を指導し、新たな半月板や軟骨の損傷を予防します。新鮮例の部分損傷には、ブレースなどの外固定によりある程度の機能回復を得られることもあります。

一次修復術としては、大腿骨付着部の新鮮損傷に対して、関節鏡視下または直視下に2針ほど糸をかけ、大腿骨側にpull outを行います。

再建術としては、受傷後すぐに行うのでなく、3〜4週経過して急性期の炎症が消失し可動域がほぼ正常に回復してから行います(急性期に行うと術後に拘縮を生じる危険性があります)。再建術を行うにあたっては、侵襲をできる限り小さくするため関節鏡視下に行います。再建靱帯の材料には、?膝屈筋腱(半腱様筋腱、薄筋腱)、?膝蓋腱が主に使われています。

筋力と可動域の回復が大切となりますが、荷重は3〜4週で全荷重とし、6週間程度は角度制限つきブレースを装着します。ジョギングを6〜8週ではじめ、全力走行は6ヶ月以降、スポーツ完全復帰は8〜10カ月を目指します。

スポーツ選手、とくにサッカー選手では多い疾患であると考えられます。しっかりと静養なさって、再び活躍なさることを期待しております。

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