読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
急性化膿性骨髄炎とは、骨髄内に細菌が定着増殖して、急性発症をきたした状態を指します。細菌が血行性に骨組織に侵入した場合、まず最初に炎症が起きる部位は血液供給の豊富な骨髄であり、その後に炎症は皮質骨・骨膜へ波及していきます。したがって、骨組織の感染症を総称して化膿性骨髄炎という名称が使われています。局所熱感、発赤、腫脹などの局所所見や、悪寒や戦慄、発熱などの全身症状を伴うことがあります。
血液検査にて、白血球数や赤沈値、CRP値などはある程度病勢の判断の指標となります。また、細菌培養では診断、抗生物質の選択に重要ですが、起炎菌の証明率は高くはありません。血行性骨髄炎が疑われる場合は血液培養も重要です。
画像診断では、骨萎縮像、骨膜反応、骨破壊像など単純X線像上の変化が出現します。CTは初期における軟部組織の変化、あるいは骨髄内のdensityの変化の描出により、X線所見が出現するより早期に診断が可能であるといわれています。骨シンチグラフィーやMRIよりは遅れるとされていますが、病変の詳細な描出はMRIより優れているといわれています。
骨シンチグラフィーは炎症の存在は描出できても、その局在性に関しては正確に描出し難いといえます。一方、MRIでは炎症および浮腫ともT1強調画像で低輝度、T2強調画像で高輝度を示すため両者の鑑別は困難です。このように、骨シンチグラフィーおよびMRIは骨髄炎の早期診断には適していますが、実際の範囲より広範に異常を呈する傾向にあります。
慢性硬化性骨髄炎は、血行性に生じる一次性慢性化膿性骨髄炎の1つです。膿瘍や瘻孔を伴わず、骨の膨隆と肥厚を起こす骨髄炎を硬化型と名づけると定義されています。膿瘍形成が少ないため、起炎菌の検出は困難なことが多いです。
普段は何ら愁訴なく、ときに患部の発赤、腫脹、疼痛などの炎症症状が出現しますが、その症状は軽度です。こうした繰り返す症状と、特徴的なX線所見(病巣部を中心に骨皮質は紡錘状に肥大し、硬化像が強く、骨髄腔を認め難い。病巣部と健常部の境界が不明であるのも特徴的)で診断されます。
治療としては、以下のようなものがあります。
骨髄炎である場合、やはり上記のような治療を行う必要があります。しっかりと検査を行い、治療方針を決定されることが望まれます。
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画像診断により、左顎下に5mmの唾石が発見された56歳女性
以前治療した左下奥歯が再び痛み出し、6月に抜歯しましたが、いまだに痛みがとれません。かかりつけの歯科医には骨髄炎と言われました。どうしたらよいでしょうか。(55歳女性)この相談に対して、東京医科歯科大歯学部病院顎顔面外科教授である天笠光雄先生は、以下のようにお答えになっています。
抜歯後に痛みがあり、骨髄炎と診断されたとのことですので、まず、骨髄炎の一般的なことから話します。骨髄炎とは、骨髄と骨膜とその周囲の軟部組織に及ぶ感染症です。症状経過により急性と慢性とに分類されます(骨髄炎は急性から慢性へ移行しやすい)。骨髄炎の中で最も多いのが、細菌性の化膿性骨髄炎で、黄色ブドウ球菌によるものが最も多いです。ですが、外傷などで骨組織が露出した場合には、大腸菌や緑膿菌などのグラム陰性桿菌が比較的多いです。
骨髄炎は骨の表層だけではなく、深部の骨髄にまで化膿などの炎症がある状態で、抜歯した場所だけでなく、周りの広い範囲に痛みがでます。主に〈1〉急性化膿性骨髄炎、〈2〉慢性硬化性骨髄炎に分けられます。〈1〉は痛みのほか、周囲が赤く腫れ発熱し、うみが出てきます。〈2〉は痛みがあるだけで、外見では分かりません。
診断は、痛み、腫れ、うみがあるかなどを調べ、さらに、骨の状態を見る骨シンチグラフィ、コンピューター断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像(MRI)などの画像検査を行います。
急性化膿性骨髄炎とは、骨髄内に細菌が定着増殖して、急性発症をきたした状態を指します。細菌が血行性に骨組織に侵入した場合、まず最初に炎症が起きる部位は血液供給の豊富な骨髄であり、その後に炎症は皮質骨・骨膜へ波及していきます。したがって、骨組織の感染症を総称して化膿性骨髄炎という名称が使われています。局所熱感、発赤、腫脹などの局所所見や、悪寒や戦慄、発熱などの全身症状を伴うことがあります。
血液検査にて、白血球数や赤沈値、CRP値などはある程度病勢の判断の指標となります。また、細菌培養では診断、抗生物質の選択に重要ですが、起炎菌の証明率は高くはありません。血行性骨髄炎が疑われる場合は血液培養も重要です。
画像診断では、骨萎縮像、骨膜反応、骨破壊像など単純X線像上の変化が出現します。CTは初期における軟部組織の変化、あるいは骨髄内のdensityの変化の描出により、X線所見が出現するより早期に診断が可能であるといわれています。骨シンチグラフィーやMRIよりは遅れるとされていますが、病変の詳細な描出はMRIより優れているといわれています。
骨シンチグラフィーは炎症の存在は描出できても、その局在性に関しては正確に描出し難いといえます。一方、MRIでは炎症および浮腫ともT1強調画像で低輝度、T2強調画像で高輝度を示すため両者の鑑別は困難です。このように、骨シンチグラフィーおよびMRIは骨髄炎の早期診断には適していますが、実際の範囲より広範に異常を呈する傾向にあります。
慢性硬化性骨髄炎は、血行性に生じる一次性慢性化膿性骨髄炎の1つです。膿瘍や瘻孔を伴わず、骨の膨隆と肥厚を起こす骨髄炎を硬化型と名づけると定義されています。膿瘍形成が少ないため、起炎菌の検出は困難なことが多いです。
普段は何ら愁訴なく、ときに患部の発赤、腫脹、疼痛などの炎症症状が出現しますが、その症状は軽度です。こうした繰り返す症状と、特徴的なX線所見(病巣部を中心に骨皮質は紡錘状に肥大し、硬化像が強く、骨髄腔を認め難い。病巣部と健常部の境界が不明であるのも特徴的)で診断されます。
治療としては、以下のようなものがあります。
治療法は、抗菌薬の注射(または内服)のほか、必要に応じ、腐ったり、硬くなったりした骨の削除などを行うことがあります。骨髄炎が疑われるなら、放置せずに、検査のうえ、こうした治療を行う必要があります。骨髄炎の治療の基本は、感染壊死組織の除去、抗菌薬投与、局所の安静です。手術で腐骨や不良肉芽組織を除去し、術後起炎菌に感受性のある抗菌薬を全身投与します(赤沈、CRPを指標に投与を続ける)。再発が繰り返され、症状が強い一部の症例に対しては、広範囲の切除などが必要になることもあります。
しかし、骨髄炎でなくても、抜歯後に痛みが残ることはあります。歯や骨の破片などの異物が残った場合などです。
抜歯後に傷がふさがっているのに痛みが残る場合はエックス線検査を行い、異物がなければ、短期間、抗菌薬を服用し、様子をみることもあります。
強い痛みが続くなら、骨髄炎を疑って検査を進めることも必要かもしれません。再度歯科医にご相談下さい。不安が残る場合は、ほかの歯科医の診察を受け、意見を聞いてもよいでしょう。
骨髄炎である場合、やはり上記のような治療を行う必要があります。しっかりと検査を行い、治療方針を決定されることが望まれます。
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