読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
先天性肝嚢胞は、胆管の形成不全のため、胆管同士の交通が不十分となり嚢胞状に拡張して形成されると考えられています。内壁は1層の上皮性細胞に覆われた真性嚢胞で、内容は漿液性の液体成分です。孤立性嚢胞と多発性肝嚢胞があります。後天性のものでは、寄生虫によるものや腫瘍(良・悪性)、外傷や炎症、医原性といった原因があります。
通常は無症状で、偶然の機会に発見されます。発育はきわめて緩慢ですが、ときに嚢胞が巨大になり、腹痛や腹部膨満感を訴えます。また、胆管を圧迫して、黄疸や胆管炎をきたすことがあります。嚢胞内出血、破裂、捻転、感染をきたすと急性症状を起こしえます。多発性肝嚢胞では、多発嚢胞病の部分症で腎、脾、卵巣などにも多発嚢胞を有し、頭蓋内動脈瘤を合併していることがあります。門脈圧亢進症を伴う場合があります。
診断としては、超音波検査とCTでほとんどの場合診断可能となります。嚢胞は1層の胆管上皮で囲まれており、内腔はそこからの分泌液で満たされています。したがって、超音波画像上は極めて低エコー領域として描出されます。
単純CTでは低吸収領域として描出されます。血管成分は全くないので、造影CTの意義はありません。一方、MRIに関してはT1強調画像では低吸収域、T2画像で肝血管腫と同様高信号域としてとらえられます。選択的肝動脈造影では、血管が構成成分にないので無血管領域としてとらえられます。
治療としては、以下のようなものがあります。
予後は良好ですが、嚢胞腺癌に変化した症例もあり注意を要します。無症状である場合は治療は必要なく、症状や合併症を有するものが治療の対象となります。侵襲が少ない方法として超音波誘導下の穿刺排液があります。
嚢胞と胆道系の交通がない場合は、再発予防のために同時に純エタノール、または塩酸ミノサイクリンの注入が行われます。効果がない場合、腹腔鏡下嚢胞切開術、または切除術が行われます。門脈圧亢進症で食道静脈瘤をきたした場合、硬化療法や結紮術が行われます。
腹部の圧迫症状などがあれば、まずは内科的に治療を行い、様子をみていただければと思われます。その後、再び治療方法などを検討されてはいかがでしょうか。
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「肝嚢胞」で、肝臓全体に水がたまり、他の臓器まで押している状態です。注射で水を抜くのでは、またたまってしまうので、食事ができないほど苦しくなったら、手術すると言われています。(63歳女性)この相談に対して、虎の門病院副院長消化器内科である竹内和男先生は、以下のようにお答えになっています。
肝嚢胞とは、肝臓の中にできた水泡のようなものです。人間ドックの超音波(エコー)検査で、6〜7%の方に認められる、よくある疾患です。肝嚢胞は、1層の扁平上皮に覆われ、嚢胞壁からの分泌液に満たされます。先天性と後天性に分けられ、40歳以降で多発することが多いです。
生まれつきのもので、大きさが5mmくらいの小さなものから、中には10cmを超える大きなものを持っている方もいます。しかし、ほとんどが無害なので、治療の対象となるのは大きなもののうちでも、ごく一部に限られます。
周囲の臓器が押されて、圧迫感があったり、おなかに手で触れてしこりが感じられたりする場合など、自覚症状があって初めて治療の対象となります。このような症状がある場合は、かつてはお尋ねのような開腹手術による治療が行われたことがありました。しかし今ではほとんど行われません。
先天性肝嚢胞は、胆管の形成不全のため、胆管同士の交通が不十分となり嚢胞状に拡張して形成されると考えられています。内壁は1層の上皮性細胞に覆われた真性嚢胞で、内容は漿液性の液体成分です。孤立性嚢胞と多発性肝嚢胞があります。後天性のものでは、寄生虫によるものや腫瘍(良・悪性)、外傷や炎症、医原性といった原因があります。
通常は無症状で、偶然の機会に発見されます。発育はきわめて緩慢ですが、ときに嚢胞が巨大になり、腹痛や腹部膨満感を訴えます。また、胆管を圧迫して、黄疸や胆管炎をきたすことがあります。嚢胞内出血、破裂、捻転、感染をきたすと急性症状を起こしえます。多発性肝嚢胞では、多発嚢胞病の部分症で腎、脾、卵巣などにも多発嚢胞を有し、頭蓋内動脈瘤を合併していることがあります。門脈圧亢進症を伴う場合があります。
診断としては、超音波検査とCTでほとんどの場合診断可能となります。嚢胞は1層の胆管上皮で囲まれており、内腔はそこからの分泌液で満たされています。したがって、超音波画像上は極めて低エコー領域として描出されます。
単純CTでは低吸収領域として描出されます。血管成分は全くないので、造影CTの意義はありません。一方、MRIに関してはT1強調画像では低吸収域、T2画像で肝血管腫と同様高信号域としてとらえられます。選択的肝動脈造影では、血管が構成成分にないので無血管領域としてとらえられます。
治療としては、以下のようなものがあります。
現在では内科的治療が主流です。まず、皮膚に局所麻酔(歯を抜く時の麻酔と同じ)を行い、肝嚢胞に体外から細いチューブを差し込みます。画像診断で嚢胞壁の全体または部分的肥厚を認めたり、内容物の性質がCT、MRIで通常と異なる場合は嚢胞穿刺や、経過観察が必要となります。
その後、内溶液を十分に吸いだした後、内部に薬液を注入して、水がたまらないように治療します。薬液には日常の診療でよく使われている抗生物質(塩酸ミノサイクリン)が用いられます。
もし、大きな肝嚢胞で圧迫感などの症状がありましたら、急ぐ必要はありませんが、一度肝臓の専門医を受診し、自分に適した治療方法などについて、具体的にお聞きになるのがよいでしょう。
予後は良好ですが、嚢胞腺癌に変化した症例もあり注意を要します。無症状である場合は治療は必要なく、症状や合併症を有するものが治療の対象となります。侵襲が少ない方法として超音波誘導下の穿刺排液があります。
嚢胞と胆道系の交通がない場合は、再発予防のために同時に純エタノール、または塩酸ミノサイクリンの注入が行われます。効果がない場合、腹腔鏡下嚢胞切開術、または切除術が行われます。門脈圧亢進症で食道静脈瘤をきたした場合、硬化療法や結紮術が行われます。
腹部の圧迫症状などがあれば、まずは内科的に治療を行い、様子をみていただければと思われます。その後、再び治療方法などを検討されてはいかがでしょうか。
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