双極性障害(bipolar disorder)は躁うつ病(manic depression)とも呼ばれ、脳内の化学物質のアンバランスによって引き起こされる精神疾患である。薬剤による管理が可能だが、それに加えて、米国家庭医学会(AAFP)では以下のことを勧めている:
・自分の症状について調べ、学習し、家族とその情報を共有する。
・就寝と起床、食事と運動について毎日の習慣を確立する。
・医師の指示通りに正しく服薬する。
・カフェイン、風邪薬、アレルギー薬、鎮痛薬の使用を避ける。アルコールやその他の薬剤を摂取する前には必ず医師に相談する。
・ストレスを抑える。
・行動の変化や躁うつの症状に気付いたときは医師に相談する。
・サポートグループを見つけて加入する。

(双極性障害への対処)


「双極性障害」とは、一般的にいわれている躁うつ病のことです(国際的には、双極性障害 bipolar disorderと呼ばれています)。躁病相が中等度以上であるものを双極?型障害、軽躁に留まるものを双極?型障害と呼び、それらに気分循環性障害を加えたものからなります。

双極?型障害や気分循環性障害は若年発症が多いですが、双極?型障害は単極性うつ病で経過していたものが、ある時期から軽躁を示すタイプも多く、発症がやや遅くなります。

双極性障害は、気分の変動を主体とするエピソード(躁病やうつ病)を繰り返すということが特徴的です。つまり、いつも元気に見える人が何らかの原因で憂うつな気分になり、社会生活に支障を来たす心の病です。推定患者数は20万人以上と言われ、近年、うつ病と診断されている患者の5人に1人が、実はこの病ではないかと考えられています。

実は、軽躁病エピソードで自覚に乏しい場合は診断が難しく(躁状態が見逃されやすい)、しかも抗うつ薬服用中のうつ病性障害に出現した躁症状では、判断に迷うことが少なくないといわれています。

一般に、双極性障害では躁病の期間よりも、うつ病エピソードを呈する期間が長く、再発・再燃を繰り返しやすいといわれています。そのため、社会的にさまざまな障害や制約を受けてしまうことがあります。また、双極性障害ではうつ状態で自ら命を絶ってしまうの危険性が高いことが知られており、注意を要します。

躁状態では、気分の高揚が基本症状であり、爽快感や快調感がみられ、自信に満ち、楽観的となり、幸福感、万能感を伴うこともあります。ですが、些細なことで刺激を受けやすく、喜怒哀楽を表しやすくなり、気分が変わりやすい(気分易変性)です。さらに、病勢が悪化すると不機嫌、攻撃的となり興奮しやすくなります。時に抑うつ気分を伴う躁うつ混合状態を呈することがあります。

また、着想豊富で多弁となりますが、論理が飛躍してまとまりが悪くなってしまいます(観念奔逸)。思考内容も誇大的となり、誇大妄想に発展することがあります。このように多動となり様々な活動を企画しますが、集中力に欠けるため、失敗に終わることが多いです。

乱費や社会的逸脱行動などもみられ、それまでの対人関係が破壊されたり、職業的機能に著しい障害を惹起することも稀ではありません。睡眠欲求は減少し、夜間や早朝構わずに活動を行ったりして、周囲を困惑させることもあります。

うつ状態では、抑うつ気分が基本症状であり「憂うつ、気分が滅入る、気分が沈む、何もかもわずらわしい」などと表現され、不安や焦燥感が目立つこともあります。何に対しても興味や関心が持てなくなり、よいことが起こっても喜べなくなります。

朝方の気分が悪く、夕方にかけて改善するという気分の日内変動がみられることが少なくありません。一方で、重症になると喜怒哀楽がなくなり、抑うつ気分すら訴えなくなったり、日内変動もみられなくなります。

思考の進行が遅滞し、理解力や注意力、集中力も低下してしまいます。自分を過小評価しやすくしたり、劣等感を抱きやすくし、過去を過剰に後悔し、また悲観的で取り越し苦労をしやすくなります。重症化すると貧困妄想(お金が払えずに受診・入院できない、といったことを思う)、心気妄想(重い体の病気にかかっていると思い込む)、罪業妄想(自分が悪いと思いこむ)がみられることがあります。

動作が遅くなり、口数も少なくなり、決断力や集中力も低下してしまいます。重症化すると、自発性が全く欠如した抑うつ性昏迷状態となってしまいます。逆に、不安焦燥感が強く、部屋の中を落ち着きなく徘徊する焦燥性うつ状態を呈することもあります。

身体症状では、不眠(特に早朝覚醒)や食欲減退、体重減少などが出現し、頭重感や肩こり、胸痛、筋肉痛、全身倦怠感、易疲労感、性欲低下、月経異常など全身にわたる多彩な身体症状が出現するのが特徴的です。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療方針としては、単極性うつ病の治療は抗うつ薬が中心ですが、双極性うつ病の場合には気分安定薬を用いる必要があります。というのも、以前は双極性うつ病に対しても抗うつ薬を主体とした薬物療法が行われてきましたが、病相の急速交代化を促進する危険性が高いことから(躁鬱の交代が早くなってしまう)、必ず気分安定薬を使用することが重要であるといわれています。

躁状態では、治療の第1選択は躁病治療効果とともに病相予防効果もある気分安定薬です。リーマスは気分高揚した典型的な躁状態に有効性が高く、デパケンやテグレトールは不機嫌で易怒的なタイプや抑うつ症状を混合するタイプに有効であるとされています。

興奮の強い躁状態の治療導入期には、抗精神病薬を併用します。抗精神病薬の非特異的な鎮静作用には即効性があるため、効果発現に日数を要するという気分安定薬の弱点を補うことができます。精神病症状の混入するときにも積極的に併用します。

抗精神病薬にはそれ自体にも躁病治療効果があるといわれ、躁病に対して保険適用があるのはクロルプロマジン、レベメプロマジン、ハロペリドール、スルトプリドの各薬剤およびチミペロンの注射製剤ですが、ほかの薬剤も有効となります。

うつ状態であっても、気分安定薬が第1選択であり、軽症例では可能な限り単独で治療を行います。中等症例でも気分安定薬の単剤治療が原則ですが、抗うつ薬を併用する場合は躁転の危険性が低い選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を追加します。

こうした内服治療に加え、上記のような生活上での注意点もしっかりと守ることが重要です。

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