腎疾患患者の死亡リスクが、従来の1回4時間、週3回の透析治療に比べて、夜間に1回8時間の透析を週3回行うほうが大幅に減少することが示され、米フィラデルフィアで開催された米国腎臓病学会(ANS)年次集会で発表された。
報告を行ったトルコ、エーゲEge大学(イズミル)腎臓病学科のErcan Ok博士によると、透析技術や医療は向上しているものの、従来の4時間、週3回の透析治療を受ける患者の死亡率は依然として受け入れ難いほど高いという。透析は腎不全患者の水分除去措置としては最も一般的な方法で、入院、外来のいずれでも実施されるが、通常は何らかの医療機関で行われる。患者の多くは、週3回、1回3〜5時間の処置を受けている。
今回の研究では、従来の方法から、週3回、夜間8時間の透析に切り替えたトルコ人患者224人(平均45歳)を追跡した。研究グループによると、患者が処置を受けながら眠れるようになるまでには、通常1カ月の「適応期間」を要したという。
1年後、夜間治療群と、従来の週3回4時間の治療を継続した同様の患者群とを比較したところ、夜間治療群は死亡率が78%低かったほか、血圧管理に顕著な改善がみられ、降圧薬の使用が3分の2減少した。また、リン酸塩濃度が正常値まで低下し、リン酸塩吸収を抑える薬剤の使用が72%減少。さらに、食欲向上、望ましい体重増加および血中蛋白濃度の増大がみられたほか、患者の多くが仕事に復帰し、業績や精神状態も改善されたと報告している。「このデータによって、医師、患者、保健当局、社会保障機関をなど社会全体が長時間の透析の必要性について納得してくれると期待している」とOk氏は述べている。
米セント・ジョンSt. John病院(デトロイト)のRobert Provenzano博士は今回の研究について、称賛できるものだが、腎臓は1日24時間働いており、透析時間が長ければ長いほうがよいのは明白と述べている。より頻繁な透析が健康状態全般を向上させることは、欧米の研究ですでに示されているという。
今回の研究では患者が自己選択されており、無作為化対照試験となっていない点が問題と指摘。トルコ、中国、インドなどの発展途上国では、透析などの治療を受けることのできる患者は比較的裕福で健康状態もよい傾向があり、このことが研究結果にどのような影響を及ぼしているのかわからないことからも、無作為化研究が必要であると同氏は述べている。
(夜間の人工透析で死亡率が大幅に低下)
腎機能の低下が起こってくると、老廃物の蓄積や水・電解質の不均衡から生体内の恒常維持ができなくなり、いわゆる尿毒症症状を呈してきます。主たる原因物質(尿毒症性物質)として、グアニジン、フェノール、インドールなどの低分子物質、アルカロイド、脂肪族アミン、副甲状腺ホルモンをはじめとするホルモン、ポリペプチドなどが挙げられています。
透析療法とは、血液を半透膜を用いて透析し、水分および溶質を除去して血液の浄化を図る方法です。急性腎不全や慢性腎不全、透析可能な薬物による中毒(医療用薬剤,農薬,工業薬品など)、急性肝不全などの治療として行われます。
透析導入の基準としては、
こうした項目を参考にします。合併症の多い高齢者や糖尿病患者では、生命予後や良好な社会復帰のためにも早めの導入がよいとされています。
大別して、血液を透析器(ダイアライザー)に導き浄化した後に体内に返血する血液透析と、透析液を腹腔内に注入し腹膜の半透膜機能を利用して透析を行う腹膜透析とがあります。
血液透析とは、カテーテルあるいは皮下の動静脈瘻(シャント)のいずれかにより、血液をダイアライザーに導入し、透析液と透析膜を介して、血液中の高窒素血症、水・電解質異常を是正する方法です。
シャント(血液路 blood access)とは、動脈と静脈を直接つなぎ合わせた部分をつくる必要があります。これは、動脈から血液を体外循環回路に導き、十分な血液量を得るためのものです。腹膜透析(PD)に比べて、体内から除去したい物質を除く効率は良いですが、不均衡症候群といったものが生じることがあります。
不均衡症候群とは、急激な血液透析により血液透析中あるいは直後に起こる一過性脳症で、頭痛、悪心、嘔吐、筋のけいれん、全身倦怠感、血圧上昇、四肢しびれ感、意識障害などの症状が出現する場合をいいます。これは、透析により尿素などの溶質の除かれる速さが,体の各部位により差を生じることで発生すると考えられます。
腹膜透析(PD)とは、腹腔内に腹膜透析液を注入し、1〜数時間貯留した後、排出するという操作を繰り返す方法です。腹膜透析液の注入、排出には腹膜カテーテルを用います。そのため、シャントは不要となります。
メカニズムとしては、腹腔に貯留された腹膜透析液と腹膜に分布する毛細血管内血液との間で、溶質が濃度差による拡散現象(透析)で除去されます。透析効率は血液透析に比べてはるかに劣り、体液異常の改善に時間がかかります。ですが、それだけに循環系に及ぼす影響も少なく、不均衡症候群も起こりにくいという利点もあります。また血液路を必要とせず,抗凝固療法も不要であるという利点があります。
透析療法に伴う合併症としては、以下のようなものがあります。
報告を行ったトルコ、エーゲEge大学(イズミル)腎臓病学科のErcan Ok博士によると、透析技術や医療は向上しているものの、従来の4時間、週3回の透析治療を受ける患者の死亡率は依然として受け入れ難いほど高いという。透析は腎不全患者の水分除去措置としては最も一般的な方法で、入院、外来のいずれでも実施されるが、通常は何らかの医療機関で行われる。患者の多くは、週3回、1回3〜5時間の処置を受けている。
今回の研究では、従来の方法から、週3回、夜間8時間の透析に切り替えたトルコ人患者224人(平均45歳)を追跡した。研究グループによると、患者が処置を受けながら眠れるようになるまでには、通常1カ月の「適応期間」を要したという。
1年後、夜間治療群と、従来の週3回4時間の治療を継続した同様の患者群とを比較したところ、夜間治療群は死亡率が78%低かったほか、血圧管理に顕著な改善がみられ、降圧薬の使用が3分の2減少した。また、リン酸塩濃度が正常値まで低下し、リン酸塩吸収を抑える薬剤の使用が72%減少。さらに、食欲向上、望ましい体重増加および血中蛋白濃度の増大がみられたほか、患者の多くが仕事に復帰し、業績や精神状態も改善されたと報告している。「このデータによって、医師、患者、保健当局、社会保障機関をなど社会全体が長時間の透析の必要性について納得してくれると期待している」とOk氏は述べている。
米セント・ジョンSt. John病院(デトロイト)のRobert Provenzano博士は今回の研究について、称賛できるものだが、腎臓は1日24時間働いており、透析時間が長ければ長いほうがよいのは明白と述べている。より頻繁な透析が健康状態全般を向上させることは、欧米の研究ですでに示されているという。
今回の研究では患者が自己選択されており、無作為化対照試験となっていない点が問題と指摘。トルコ、中国、インドなどの発展途上国では、透析などの治療を受けることのできる患者は比較的裕福で健康状態もよい傾向があり、このことが研究結果にどのような影響を及ぼしているのかわからないことからも、無作為化研究が必要であると同氏は述べている。
(夜間の人工透析で死亡率が大幅に低下)
腎機能の低下が起こってくると、老廃物の蓄積や水・電解質の不均衡から生体内の恒常維持ができなくなり、いわゆる尿毒症症状を呈してきます。主たる原因物質(尿毒症性物質)として、グアニジン、フェノール、インドールなどの低分子物質、アルカロイド、脂肪族アミン、副甲状腺ホルモンをはじめとするホルモン、ポリペプチドなどが挙げられています。
透析療法とは、血液を半透膜を用いて透析し、水分および溶質を除去して血液の浄化を図る方法です。急性腎不全や慢性腎不全、透析可能な薬物による中毒(医療用薬剤,農薬,工業薬品など)、急性肝不全などの治療として行われます。
透析導入の基準としては、
1)乏尿、貧血、重症高血圧、不眠、頭痛、悪心・嘔吐、体液貯留などの臨床症状
2)血清クレアチニン濃度8mg/dl以上か、内因性クレアチニンクリアランス10ml/分以下3)軽い日常作業が困難
こうした項目を参考にします。合併症の多い高齢者や糖尿病患者では、生命予後や良好な社会復帰のためにも早めの導入がよいとされています。
大別して、血液を透析器(ダイアライザー)に導き浄化した後に体内に返血する血液透析と、透析液を腹腔内に注入し腹膜の半透膜機能を利用して透析を行う腹膜透析とがあります。
血液透析とは、カテーテルあるいは皮下の動静脈瘻(シャント)のいずれかにより、血液をダイアライザーに導入し、透析液と透析膜を介して、血液中の高窒素血症、水・電解質異常を是正する方法です。
シャント(血液路 blood access)とは、動脈と静脈を直接つなぎ合わせた部分をつくる必要があります。これは、動脈から血液を体外循環回路に導き、十分な血液量を得るためのものです。腹膜透析(PD)に比べて、体内から除去したい物質を除く効率は良いですが、不均衡症候群といったものが生じることがあります。
不均衡症候群とは、急激な血液透析により血液透析中あるいは直後に起こる一過性脳症で、頭痛、悪心、嘔吐、筋のけいれん、全身倦怠感、血圧上昇、四肢しびれ感、意識障害などの症状が出現する場合をいいます。これは、透析により尿素などの溶質の除かれる速さが,体の各部位により差を生じることで発生すると考えられます。
腹膜透析(PD)とは、腹腔内に腹膜透析液を注入し、1〜数時間貯留した後、排出するという操作を繰り返す方法です。腹膜透析液の注入、排出には腹膜カテーテルを用います。そのため、シャントは不要となります。
メカニズムとしては、腹腔に貯留された腹膜透析液と腹膜に分布する毛細血管内血液との間で、溶質が濃度差による拡散現象(透析)で除去されます。透析効率は血液透析に比べてはるかに劣り、体液異常の改善に時間がかかります。ですが、それだけに循環系に及ぼす影響も少なく、不均衡症候群も起こりにくいという利点もあります。また血液路を必要とせず,抗凝固療法も不要であるという利点があります。
透析療法に伴う合併症としては、以下のようなものがあります。
治療期間の延長に伴う加齢や快適な生活を阻止する合併症、あるいは原疾患に伴う合併症が問題となります。骨異栄養症、透析低血圧、動脈硬化症、透析アミロイドーシス、手根管症候群などは、重要な問題として残されています。
高齢者および糖尿病患者の増加は、動脈硬化病変による合併症が起こります。また、特に糖尿病患者における起立性低血圧は、通常の患者にみられる透析低血圧にも増して社会復帰の妨げになっています。
また、慢性透析のようにヘパリン必要量がわかっている場合は透析中に出血傾向が出現することは少ないですが、緊急透析時には通常のヘパリン量(1000〜1500単位/時)を投与しても思わぬ出血傾向を見ることがあるため注意が必要です。
血液透析回路は、人体→脱血側回路→ポンプ→ダイアライザー→還血側回路→人体…という閉鎖系です。したがって、通常は回路内に空気が入り込む余地はありません(還血側回路には気泡感知装置が取り付けられており、安全性に考慮が払われている)。ですが、それでも回路のいずれかから空気が吸い込まれて、血管内に入り空気塞栓となる可能性があります。
一方、腹膜透析の特有な合併症としては、頻度は少ないですが偶発事故として、腹壁からの出血、腸管・膀胱穿孔があります。長期腹膜透析における合併症でもっとも重要なのは腹膜炎、中でも硬化性腹膜炎です。多くの場合、腹痛、液の混濁、排液困難で気付かれることが多いです。起因菌としては、ブドウ球菌やレンサ球菌などの皮膚常在菌、大腸菌などグラム陰性桿菌が多いです。
腎不全状態に陥ってしまった場合、人工透析が必要となります。ですが、週に3〜5回、しかも1回数時間という大きな負担を強いられます。まだ十分とは言えませんが、上記のような研究が進むことはその負担を軽減できる可能性もあると考えられます(それに医療提供側が沿えるかどうかは別問題ですが)。
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降圧薬や抗生物質などと、注意すべき食品の飲み合わせ
高齢者および糖尿病患者の増加は、動脈硬化病変による合併症が起こります。また、特に糖尿病患者における起立性低血圧は、通常の患者にみられる透析低血圧にも増して社会復帰の妨げになっています。
また、慢性透析のようにヘパリン必要量がわかっている場合は透析中に出血傾向が出現することは少ないですが、緊急透析時には通常のヘパリン量(1000〜1500単位/時)を投与しても思わぬ出血傾向を見ることがあるため注意が必要です。
血液透析回路は、人体→脱血側回路→ポンプ→ダイアライザー→還血側回路→人体…という閉鎖系です。したがって、通常は回路内に空気が入り込む余地はありません(還血側回路には気泡感知装置が取り付けられており、安全性に考慮が払われている)。ですが、それでも回路のいずれかから空気が吸い込まれて、血管内に入り空気塞栓となる可能性があります。
一方、腹膜透析の特有な合併症としては、頻度は少ないですが偶発事故として、腹壁からの出血、腸管・膀胱穿孔があります。長期腹膜透析における合併症でもっとも重要なのは腹膜炎、中でも硬化性腹膜炎です。多くの場合、腹痛、液の混濁、排液困難で気付かれることが多いです。起因菌としては、ブドウ球菌やレンサ球菌などの皮膚常在菌、大腸菌などグラム陰性桿菌が多いです。
腎不全状態に陥ってしまった場合、人工透析が必要となります。ですが、週に3〜5回、しかも1回数時間という大きな負担を強いられます。まだ十分とは言えませんが、上記のような研究が進むことはその負担を軽減できる可能性もあると考えられます(それに医療提供側が沿えるかどうかは別問題ですが)。
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