手術の真っ最中に意識が戻ってしまい、恐怖と戦いながらおなかを切られた女性が裁判を起こそうとしているそうです。彼女は病院側が意識を取り戻していることを分かって手術を進めたと話しており、病院の体制や麻酔の管理・使用方法に問題があるのではないかと主張しているとのこと。

確かに意識がある状態で自分の体が切られていくのはかなり怖いものですが、具体的にどのような状況だったのか見てみましょう。

今回、手術中に目を覚ましてしまったのはレベッカ・ジョーンズさん(24歳)。彼女はAlice Springs病院で胆のう摘出手術を受けることになったのですが、手術の最中に意識が戻ってしまったそうです。意識が戻った時、彼女は手術が終わって医者が起こしてくれたのだろうと思ったそうですが、実は手術の真っ最中であったことを確認。レベッカさんはパニック状態になったそうです。

彼女はマヒしていたため体を動かすことができず、助けを求めることができなかったとのこと。しかし聴覚などは残っていたため、オペ室でどのような会話がなされているのか分かっていたそうです。また、痛みを感じたのかは定かではないのですが、おなかを切られる感覚もあったようです。

彼女は意識があることを伝えようとして必死だったとのこと。何とか手を動かすことができ、医者はそれを気付いたそうですが、手術はそのまま続行されたそうです。

今回の件に対し院長であるヴィッキ・テーラー氏はコメントを拒否。しかし、レベッカさんが手術中に目を覚ましていた事は認めているそうです。レベッカさんは法的措置を考えており、現在話し合いが進められているとのこと。
(外科手術中に目を覚ましてしまいパニック状態で手術が進められる)


麻酔方法は大きく分けて
1)局所麻酔:表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、神経ブロック(脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔)
2)全身麻酔:吸入麻酔、静脈麻酔、筋注による麻酔、直腸麻酔

に分けることができます。また、特殊な麻酔方法としては低体温麻酔、低血圧麻酔などがあります。これらの麻酔方法については、疾患、部位、手術方法、患者さんの状態、病院設備などを考えて決定します。

全身麻酔は、吸入麻酔薬または静脈麻酔薬を用いて、意識消失、鎮痛、有害反射の抑制を得る麻酔法です。吸入麻酔薬であるハロタン、イソフルラン、セボフルラン、亜酸化窒素を用いて行う吸入麻酔法、静脈麻酔薬のプロポフォールとフェンタニルを用いる全静脈麻酔法や、ドロペリドールとフェンタニルを用いるニューロレプト麻酔法、ケタミン筋注法、チオペンタールまたはチアミラールによる注腸法があります。

全身麻酔は、血圧の低下や呼吸抑制など重篤な合併症を生じる場合が多いです。そのため、気管挿管を行わない場合でも、静脈路を確保し、緊急医薬品を用いるための注射器や気管挿管用具を常に準備しておくことが必要となります。

静脈麻酔としては、塩酸ケタミン(ケタラール)、チオペンタールナトリウム(ラボナール)、プロポフォール(ディプリバン)などがあります。

塩酸ケタミン(ケタラール)は血圧の低下や呼吸の抑制も少ないので、緊急麻酔、poor riskの患者さん、小手術、検査、処置などによく用いられます。ですが、頭蓋内圧亢進のある患者、高血圧、心不全、肝不全、精神疾患の患者には不適当であるといわれています。悪心・嘔吐、分泌過多、舌根沈下、夢・幻覚、覚醒の遅延、発汗、発疹といった副作用があります。

また、チオペンタールナトリウム(ラボナール)による麻酔としては、麻酔の導入にしばしば用いられますが、血圧の低下、呼吸抑制をきたすので、poor riskの患者やショック状態の患者には用いないほうがよいとされています。また気管支喘息の患者にも用いてはならないとされています。

プロポフォール(ディプリバン)は、チオペンタールナトリウムよりもさらに速効性で、かつ作用時間が短いとされています。GABAA受容体に結合して鎮静と催眠作用を発現します。欠点としては、難水性のため急速静注時に血管痛を生じることがあります。

また、鎮静あるいは鎮痛を得るためには以下のようなものを用います。
ジアゼパム(セルシンまたはホリゾン)やミダゾラム(ドルミカム)、ドロペリドール(ドロレプタン)、クエン酸フェンタニル(フェンタネスト)などが用いられます。一般的には、最初はジアゼパムかドロペリドールを用いますが、その後はクエン酸フェンタニルを適量追加します。

吸入麻酔薬とは、ガス麻酔薬(主に亜酸化窒素)や揮発性麻酔薬(主にハロタン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン)を気道系より吸入して麻酔状態を得る方法です。吸入された麻酔薬は分圧勾配により肺より循環器系さらには中枢神経系へと分布し、全身麻酔効果を発揮します。吸入麻酔薬としては亜酸化窒素(笑気)、セボフルラン(セボフレン)、イソフルラン(フォーレン)などが多く使用されています。

こうした薬剤を組み合わせ、適切な麻酔深度にて管理を行います。日本麻酔科学会による麻酔関連偶発症例調査では、死亡や植物状態などの重篤な合併症の原因は、換気・気道に関するもの、薬剤投与、輸液・輸血、監視不十分が主なものであるとされています。

薬剤誤投与防止のためには、シリンジのカラーリングやラベリングなどのシステムを導入し、薬剤の用意は使用者が行うとする原則を遵守することが重要です。そして、アンプルを取り出す時、シリンジに移す時、アンプルを捨てる時など、薬剤の確認を行うことが必要となります。

ほかにも、気道・換気のエラー防止のためにはパルスオキシメーター、呼気終末CO2モニターなどの装備を徹底することが必要となります。

こうした管理を徹底しても、ヒューマンエラーは起こりえてしまいます。上記のケースでは、果たしてどんな状況にあって、実際に起こったことなのか不明ですが、こうしたことも起こりえる、といった認識の下でしっかりと管理することが必要であると考えられます。

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