読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
靭帯付着部などの関節辺縁に限局した骨炎が生じ、軟骨下骨や線維軟骨が肉芽組織に置換され、炎症が収まるのに伴いこの肉芽組織が骨化し、骨強直をきたします。主に脊椎椎間関節、椎体辺縁、仙腸関節などにこうした変化が現れます。
原因は不明ですが、HLA-B27は95%前後陽性であるといわれています。発生頻度は0.04%程度で家族内発生が多く、20歳代が好発年齢で、90%は男性に発症します。
症状は非定型的で、両側性の腰痛、背部痛、坐骨神経痛が特徴です。腰背部の運動に制限があり、深呼吸で胸部痛がみられます。臨床検査では、赤沈亢進や血清CRP濃度の増加と、脊椎X線所見では仙腸関節炎や竹節様脊椎などの所見がみられます。緩徐に発症し、背部痛・腰痛に加え、腱・靭帯付着部や股関節の疼痛も訴えることがあります。ぶどう膜炎や、時に大動脈弁閉鎖不全を有する例もあります。
診断としては、3か月以上続く炎症性腰痛、腰椎運動制限、胸郭運動制限の臨床症状と、仙腸関節炎のX線学的所見にて行います(改訂ニューヨーク基準)。
治療としては、以下のようなものがあります。
また、海外では腫瘍壊死因子阻害剤(レミケード、エンブレル)の有効性を示すエビデンスがあります。股関節などの関節破壊や脊椎障害が進み、日常生活動作が損なわれる場合、手術療法の適応となります。
日常で気をつける点や内服にともなう注意点など、やはり一度は主治医としっかり話をすることが必要であると考えられます。
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右の背中が痛くなり、「強直性脊椎炎」と診断されました。薬を飲んでいます。20年間やってきたエアロビクスを今後も続けたいと思います。病気と共に楽しく暮らすための助言をお願いします。(63歳女性)この相談に対して、東邦大大森病院リウマチ膠原病センター長の川合真一先生は、以下のようにお答えになっています。
強直性脊椎炎は、脊椎や仙腸関節・股関節など体の中心にある大きな関節に慢性的な炎症が続く原因不明の病気で、脊椎などが長年の間に徐々に硬くなり、動きにくくなるのが特徴です。関節リウマチとは異なる病気で、症状や血液検査で確認できます。眼や心臓や腸などにも炎症が起きることがありますが、命にかかわることはあまりありません。強直性脊椎炎とは、仙腸関節(腰椎の下にある仙骨と、その外側にある腸骨の接する関節)および脊椎の慢性炎症を特徴とする疾患です。
治療の前提として、まず病気の性質を知っていただきます。そのうえで、脊椎や関節が硬くなることを防ぐために定期的に運動することが必要になります。
ご質問者がしているエアロビクスなどの運動でよろしいのですが、あまり激しいものは勧められません。関節への負担が少ない水泳や水中歩行は良い選択でしょう。また、ストレッチは毎日続けることが大切です。
靭帯付着部などの関節辺縁に限局した骨炎が生じ、軟骨下骨や線維軟骨が肉芽組織に置換され、炎症が収まるのに伴いこの肉芽組織が骨化し、骨強直をきたします。主に脊椎椎間関節、椎体辺縁、仙腸関節などにこうした変化が現れます。
原因は不明ですが、HLA-B27は95%前後陽性であるといわれています。発生頻度は0.04%程度で家族内発生が多く、20歳代が好発年齢で、90%は男性に発症します。
症状は非定型的で、両側性の腰痛、背部痛、坐骨神経痛が特徴です。腰背部の運動に制限があり、深呼吸で胸部痛がみられます。臨床検査では、赤沈亢進や血清CRP濃度の増加と、脊椎X線所見では仙腸関節炎や竹節様脊椎などの所見がみられます。緩徐に発症し、背部痛・腰痛に加え、腱・靭帯付着部や股関節の疼痛も訴えることがあります。ぶどう膜炎や、時に大動脈弁閉鎖不全を有する例もあります。
診断としては、3か月以上続く炎症性腰痛、腰椎運動制限、胸郭運動制限の臨床症状と、仙腸関節炎のX線学的所見にて行います(改訂ニューヨーク基準)。
治療としては、以下のようなものがあります。
薬の治療には、関節や脊椎の痛みやこわばりを緩和し、病気の進行を遅くすることが期待されます。使われる薬の種類は関節リウマチに似ています。最近海外では、関節リウマチで注目されている「生物学的製剤」が強直性脊椎炎にも効くことが証明されていますが、わが国ではまだ保険適用されていません。治療の基本は適切な運動療法と薬物療法です。薬物療法としては抗炎症薬と一部の抗リウマチ薬を使用します。抗炎症薬としてはロキソニン、ボルタレン、ハイペンなど、症状によって抗リウマチ薬のアザルフィジンEN、リウマトレックスなどが用いられています。
病気の進んだ一部の患者には手術が行われることもあります。
この病気は長く付き合う病気です。薬や適度な運動はもちろんですが、なるべく外の行事などに参加して生活の質を保つことも大切です。家族の協力も大いに助けになります。
また、海外では腫瘍壊死因子阻害剤(レミケード、エンブレル)の有効性を示すエビデンスがあります。股関節などの関節破壊や脊椎障害が進み、日常生活動作が損なわれる場合、手術療法の適応となります。
日常で気をつける点や内服にともなう注意点など、やはり一度は主治医としっかり話をすることが必要であると考えられます。
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