東京都内で妊婦が相次いで搬送を断られた問題で、都内の周産期母子医療センターの「新生児集中治療室(NICU)」が満床になる一因に、NICU治療の必要性が高い低出生体重児出産の増加が挙げられている。無理なダイエットで胎児に十分な栄養を与えられないやせ過ぎの若い妊婦や、子宮機能が低下した高齢出産の増加などが背景にあると指摘する関係者も多い。(植木裕香子)
都内の妊婦(36)が10月4日に計8病院から搬送を拒否され出産後に死亡した問題で、搬送拒否の理由で最も多かったのが「NICUの満床」だった。9月23日には、脳内出血を起こした調布市内の妊婦(32)の受け入れを断り、約25キロ離れた都立墨東病院への搬送を要請した杏林大学病院(三鷹市)も同様の理由だった。
なぜ、都内のNICUは満床なのか。都では医師不足以外に、NICUでの治療必要性が高まる2500グラム未満の低出生体重児の増加を指摘する。
都の調査では、平成2年の都内の低出生体重児数は6583人だったのに対し、平成18年には約1.5倍の9564人まで増加、全国最多にのぼっている。低出生体重児の出産は子宮機能の低下により胎内で胎児を育てられず、胎児が一定の体重になる前に出産する早産や、不妊治療による双子や三つ子など、母体から受け取る栄養分の量が少ない多胎児を妊娠した妊婦にみられる。いずれも一般的に高齢出産といわれる妊婦に多いのが特徴だ。
実際、厚生労働省の平成18年の調査によると、低出生体重児を出産する割合は、45歳以上が16.2%と最も多い。以下、40〜44歳は13.3%、35〜39歳の11.1%。女性の初産平均年齢が全国最高の30.7歳の都にとって、出産の高齢化による低出生体重児の増加の深刻さを裏付けている。
岡山大病院産科婦人科長の平松祐司教授は、無理なダイエットでやせすぎの20代の妊婦について触れ、「お母さんからの栄養が足りなければ、胎児に補給される栄養も少なくなる。その結果、低体重の子供が生まれやすくなる」と指摘する。
都はNICU満床問題などを受け、周産期医療協議会を開催。新生児救急とは別に母胎救急に対応する拠点病院を設けたり、搬送業務の振り分けを担うコーディネーターについて議論を進めている。ただ、低出生体重児の増加については、「女性側が抱える事情にまで行政が踏み込むことはできない。対応が難しい」と頭を悩ませている。
(増える低出生体重児出産 やせ過ぎ妊婦、高齢出産が背景に)
一般的には、小さいままで生まれてきた赤ちゃんを未熟児と呼ばれますが、医学的には体重が少ない新生児を低出生体重児といい、出生時に体重が2,500g未満の新生児のことを言います。
低出生体重児は、その出生体重によりさらに以下のように分類されます。
新生児が生まれるまでの妊娠期間は、通常では37〜41週間であるといわれています(ゴロ合わせで、「皆よい子(37〜41週)」と覚えます)。妊娠期間が23週以下もしくは体重が400グラム未満の新生児は生存が難しいといわれています。胎内発育不全のない場合、出生体重1,000gの児の在胎期間は、日本人では妊娠27週にほぼ相当します。
本来であれば胎内で過ごす時期を、早産低出生体重児は、胎内環境とは全く異なるNICUの中で過ごすことになります。人工的環境であるNICU内の過剰な刺激を減らし、一方では、発達に必要と思われる適度な刺激を与え、非常に未熟な中枢神経系の発達への悪影響をできるだけ避けようとすることが必要となります。
本来であれば早産児が過ごしていたであろう、薄暗い静かな胎内環境に近づけるべく、モニターの同期音を消し、話し声も小さくし、昼夜の区別をしながらも室内を薄暗くすることが望ましいと考えられます。また、直接光の照射を避け、間接照明を行います。光を避けることでREM睡眠が確保され、大きな音を避けることで聴覚の正常な発達が促されることも考えられています。
ほかにも、低出生体重児のケアとしては、以下のようなものがあります。
都内の妊婦(36)が10月4日に計8病院から搬送を拒否され出産後に死亡した問題で、搬送拒否の理由で最も多かったのが「NICUの満床」だった。9月23日には、脳内出血を起こした調布市内の妊婦(32)の受け入れを断り、約25キロ離れた都立墨東病院への搬送を要請した杏林大学病院(三鷹市)も同様の理由だった。
なぜ、都内のNICUは満床なのか。都では医師不足以外に、NICUでの治療必要性が高まる2500グラム未満の低出生体重児の増加を指摘する。
都の調査では、平成2年の都内の低出生体重児数は6583人だったのに対し、平成18年には約1.5倍の9564人まで増加、全国最多にのぼっている。低出生体重児の出産は子宮機能の低下により胎内で胎児を育てられず、胎児が一定の体重になる前に出産する早産や、不妊治療による双子や三つ子など、母体から受け取る栄養分の量が少ない多胎児を妊娠した妊婦にみられる。いずれも一般的に高齢出産といわれる妊婦に多いのが特徴だ。
実際、厚生労働省の平成18年の調査によると、低出生体重児を出産する割合は、45歳以上が16.2%と最も多い。以下、40〜44歳は13.3%、35〜39歳の11.1%。女性の初産平均年齢が全国最高の30.7歳の都にとって、出産の高齢化による低出生体重児の増加の深刻さを裏付けている。
岡山大病院産科婦人科長の平松祐司教授は、無理なダイエットでやせすぎの20代の妊婦について触れ、「お母さんからの栄養が足りなければ、胎児に補給される栄養も少なくなる。その結果、低体重の子供が生まれやすくなる」と指摘する。
都はNICU満床問題などを受け、周産期医療協議会を開催。新生児救急とは別に母胎救急に対応する拠点病院を設けたり、搬送業務の振り分けを担うコーディネーターについて議論を進めている。ただ、低出生体重児の増加については、「女性側が抱える事情にまで行政が踏み込むことはできない。対応が難しい」と頭を悩ませている。
(増える低出生体重児出産 やせ過ぎ妊婦、高齢出産が背景に)
一般的には、小さいままで生まれてきた赤ちゃんを未熟児と呼ばれますが、医学的には体重が少ない新生児を低出生体重児といい、出生時に体重が2,500g未満の新生児のことを言います。
低出生体重児は、その出生体重によりさらに以下のように分類されます。
・狭義の低出生体重児(Low birth weight infant:LBWI):出生体重2500g未満。2,500g未満を総括して低出生体重児(low birth weight infant)といい、さらに分類して上記のようになるわけです。
・極低出生体重児(Very low birth weight infant:VLBWI):出生体重1500g未満。
・超低出生体重児(Extremely low birth weight infant:ELBWI):出生体重1000g未満。
新生児が生まれるまでの妊娠期間は、通常では37〜41週間であるといわれています(ゴロ合わせで、「皆よい子(37〜41週)」と覚えます)。妊娠期間が23週以下もしくは体重が400グラム未満の新生児は生存が難しいといわれています。胎内発育不全のない場合、出生体重1,000gの児の在胎期間は、日本人では妊娠27週にほぼ相当します。
本来であれば胎内で過ごす時期を、早産低出生体重児は、胎内環境とは全く異なるNICUの中で過ごすことになります。人工的環境であるNICU内の過剰な刺激を減らし、一方では、発達に必要と思われる適度な刺激を与え、非常に未熟な中枢神経系の発達への悪影響をできるだけ避けようとすることが必要となります。
本来であれば早産児が過ごしていたであろう、薄暗い静かな胎内環境に近づけるべく、モニターの同期音を消し、話し声も小さくし、昼夜の区別をしながらも室内を薄暗くすることが望ましいと考えられます。また、直接光の照射を避け、間接照明を行います。光を避けることでREM睡眠が確保され、大きな音を避けることで聴覚の正常な発達が促されることも考えられています。
ほかにも、低出生体重児のケアとしては、以下のようなものがあります。
特に、超低出生体重児の場合、解剖学的、生理的な未熟性のためNICU(新生児集中治療室)での管理が必要となります。呼吸管理、循環管理、栄養管理、感染予防管理に至るまで、注意深く観察することが必要となります。
低出生体重児では、無呼吸発作が起こりやすくなります。20秒以上の呼吸停止、20秒未満でも徐脈やチアノーゼを伴う場合に無呼吸発作と診断します。早産児では無呼吸発作が起こりやすく、これは呼吸中枢の未熟性、化学受容体機能の未熟性に加え、REM睡眠が多くみられることが関与していると考えられます。
また、早産児はその発達の段階によって、刺激にうまく対処できずにストレスのサインを出すことがあります。指を広げるような動き、身体各部位の伸展を惹起したり、徐脈、無呼吸、大理石様皮膚などを示したり、自己制御ができているサインである手を口元に持ってきたり、驚いてもすぐに泣きやんだりなどのサインを示すことがあります。こうしたサインを見逃さずに対処することも必要です。
さらに、新生児仮死、呼吸窮迫症候群、動脈管開存症、低血糖、電解質異常などが生後数日間の間に起こることがあります。また、生後数日から数週間にかけて、慢性肺疾患、無呼吸発作、貧血、黄疸などが起こることがあります。免疫力も弱いため、重症の感染症にかかりやすくなります。また、未熟児網膜症(重症例では網膜剥離となり重度の視力障害を生じます)がみられることもあります。
故に、呼吸や感染症などの管理が上手くいかなかったことなどで生じる、後遺症を残さないことが重要な治療方針となります。
加療としては、一般管理として吸引による分泌物除去、頭部位置の確認(屈曲を避ける)、皮膚温を中枢温度環境下限に保つ、腹臥位にして胃食道逆流を防ぐ、腹部膨満の回避、低濃度酸素投与を行うことが重要です。
呼吸状態の管理としては、テオフィリン製剤(初回4〜6mg/kg 維持量1日3〜5mg/kg 静注)やドプラム(0.2mg/kg/時 持続静注)などの薬剤を用います。nasal CPAP管理を行い、無呼吸発作の管理ができない場合には挿管・人工換気の適応となります。
低出生体重児が増加していることと、上記のような問題が関連しているとはっきりとしたことはいえないかも知れませんが、少なくとも、こうした状態で生まれてきた場合、しっかりと管理・治療を行う必要があります。そのためには、日頃からかかりつけ医に定期検診を受け、もしものときのために備えることが重要であると思われます。
【関連記事】
不妊症・不妊治療のまとめ
民間の生殖医療機関、提供卵子による体外受精施行へ
低出生体重児では、無呼吸発作が起こりやすくなります。20秒以上の呼吸停止、20秒未満でも徐脈やチアノーゼを伴う場合に無呼吸発作と診断します。早産児では無呼吸発作が起こりやすく、これは呼吸中枢の未熟性、化学受容体機能の未熟性に加え、REM睡眠が多くみられることが関与していると考えられます。
また、早産児はその発達の段階によって、刺激にうまく対処できずにストレスのサインを出すことがあります。指を広げるような動き、身体各部位の伸展を惹起したり、徐脈、無呼吸、大理石様皮膚などを示したり、自己制御ができているサインである手を口元に持ってきたり、驚いてもすぐに泣きやんだりなどのサインを示すことがあります。こうしたサインを見逃さずに対処することも必要です。
さらに、新生児仮死、呼吸窮迫症候群、動脈管開存症、低血糖、電解質異常などが生後数日間の間に起こることがあります。また、生後数日から数週間にかけて、慢性肺疾患、無呼吸発作、貧血、黄疸などが起こることがあります。免疫力も弱いため、重症の感染症にかかりやすくなります。また、未熟児網膜症(重症例では網膜剥離となり重度の視力障害を生じます)がみられることもあります。
故に、呼吸や感染症などの管理が上手くいかなかったことなどで生じる、後遺症を残さないことが重要な治療方針となります。
加療としては、一般管理として吸引による分泌物除去、頭部位置の確認(屈曲を避ける)、皮膚温を中枢温度環境下限に保つ、腹臥位にして胃食道逆流を防ぐ、腹部膨満の回避、低濃度酸素投与を行うことが重要です。
呼吸状態の管理としては、テオフィリン製剤(初回4〜6mg/kg 維持量1日3〜5mg/kg 静注)やドプラム(0.2mg/kg/時 持続静注)などの薬剤を用います。nasal CPAP管理を行い、無呼吸発作の管理ができない場合には挿管・人工換気の適応となります。
低出生体重児が増加していることと、上記のような問題が関連しているとはっきりとしたことはいえないかも知れませんが、少なくとも、こうした状態で生まれてきた場合、しっかりと管理・治療を行う必要があります。そのためには、日頃からかかりつけ医に定期検診を受け、もしものときのために備えることが重要であると思われます。
【関連記事】
不妊症・不妊治療のまとめ
民間の生殖医療機関、提供卵子による体外受精施行へ