以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。
商店街で小さな書店を営むH・Tさん(42)は、普段から姿勢が悪く、ひどい肩こり。そこでいつも首をコキコキと鳴らしてしまうのが癖でしたが、ある朝、突然指先にピリピリとしたしびれを感じました。
ずいぶん寒くなってきたので、こんな日に水仕事をすればしびれぐらい当然と、特に気にしていなかったところ、気になる異変がその後も続きます。具体的には、以下のような症状が現れてきました。
頚椎症性脊髄症とは、頸椎の経年的変化による椎体後縁の骨棘や、椎間板の膨隆により脊髄が圧迫され、脊髄白質の感覚や運動伝導路が障害され、四肢に運動・感覚障害を生じる疾患です。
頚椎・胸椎、腰椎など脊椎において、骨と骨のクッションの役割をしているものとして椎間板があります。これは歳と共に弾力性を失い、次第にしぼんでいきます。すると、頚椎は不安定になり、骨同士がガタついて擦れ合うようになってしまいます。結果、今度は骨や靱帯が椎間板の代わりに頚椎を支えようと変形していってしまいます。この変形は、横から見ると、まるで棘のようにみえ、骨棘と呼ばれます。この骨棘が首の神経を圧迫すると、痺れや痛みを引き起こしてしまいます。この病態を「頚椎症性脊髄症」と呼ぶわけです。
原因としては、頸椎の発育性脊柱管狭窄や骨棘による静的脊髄圧迫因子と、頸椎後屈動作により脊髄圧迫が増加する動的因子が関わっているといわれています。40〜50歳の中年以降の男性に多く、50代以上の70%の人が、症状は無くとも骨に何らかの加齢変化が認められると言われています。
上肢症状は手指のしびれ感や鈍痛で始まり、次第に手指巧緻運動障害が起こってきます。手のしびれ、知覚低下、巧緻運動障害(箸、書字、ボタンかけなどが困難となる)、筋力低下などが訴えられます。こうした症状の鑑別としては、一側上肢の痛みが主である頸椎症性神経根症、母指側4本のしびれる手根管症候群、小指側2本のしびれる肘部管症候群などがあります。知覚の異常がなく、肩が上がらないなど脱力と筋の萎縮を訴える病型(頸椎症性筋萎縮症)もありますが、運動ニューロン疾患との鑑別を要します。
下肢では痙性歩行障害および感覚障害が出現し、脊髄障害が高度になると歩行不能となり、膀胱直腸障害も出現してきます。四肢の深部腱反射は障害レベル以下では亢進し、病的反射も認められます。歩行ではまず走るときや、座位から立ち上がって歩き始めるとき、階段昇降では降りるときのほうが昇るときよりも困難を感じるようになります。頻尿や排尿遅延、便秘傾向なども出現してきます。重症例では、四肢機能が廃絶し、箸を使えず、歩行に介助を要し、尿失禁を来すこともあります。
膀胱直腸障害では、排尿の異常(頻尿、尿勢低下、開始遅延、尿意切迫、残尿感など)、便秘も中等症以上では頻発します。ほかに体幹の締めつけ、帯状の知覚異常などがみられることがあります。
H・Tさんの場合は、以下のようなことが言えると思われます。
商店街で小さな書店を営むH・Tさん(42)は、普段から姿勢が悪く、ひどい肩こり。そこでいつも首をコキコキと鳴らしてしまうのが癖でしたが、ある朝、突然指先にピリピリとしたしびれを感じました。
ずいぶん寒くなってきたので、こんな日に水仕事をすればしびれぐらい当然と、特に気にしていなかったところ、気になる異変がその後も続きます。具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)指のしびれそのまま病院へ緊急搬送され、CT検査などが行われた結果、H・Tさんに告げられた診断名は、頚椎症性脊髄症でした。
食器を洗っているときに、指先にピリピリとした痺れを感じました。
2)腕全体のしびれ
指先の痺れを感じるようになってしばらくして、朝に起床したとき、腕全体に痺れを感じました。ですが、「腕を圧迫して寝てしまったのかも知れない」と考えて、病院には行きませんでした。
3)首から両腕に鋭い痛みが走る
書店で棚卸しの作業などを行っていたとき、上の棚のものを取り出すとき、首を後ろに反りました。その時、首から両腕にかけて鋭い痛みを感じました。「首の筋をちがえてしまったのかもしれない」と考え、そのときは湿布を貼って対処しました。
4)指の動きがぎこちない
上記のような痺れ感や痛みを感じて、さらにしばらく経ったときのこと。お客さんにお釣りを渡そうと思ったそのとき、小銭を上手く掴めませんでした。ぎこちない動きで、小銭を落としてしまいました。
5)両腕と両足に激しい痛み
お釣りを拾って、お客さんに渡そうと思って顔を上げた瞬間、両腕と両足に激しい痛みを感じてその場にうずくまってしまいました。
頚椎症性脊髄症とは、頸椎の経年的変化による椎体後縁の骨棘や、椎間板の膨隆により脊髄が圧迫され、脊髄白質の感覚や運動伝導路が障害され、四肢に運動・感覚障害を生じる疾患です。
頚椎・胸椎、腰椎など脊椎において、骨と骨のクッションの役割をしているものとして椎間板があります。これは歳と共に弾力性を失い、次第にしぼんでいきます。すると、頚椎は不安定になり、骨同士がガタついて擦れ合うようになってしまいます。結果、今度は骨や靱帯が椎間板の代わりに頚椎を支えようと変形していってしまいます。この変形は、横から見ると、まるで棘のようにみえ、骨棘と呼ばれます。この骨棘が首の神経を圧迫すると、痺れや痛みを引き起こしてしまいます。この病態を「頚椎症性脊髄症」と呼ぶわけです。
原因としては、頸椎の発育性脊柱管狭窄や骨棘による静的脊髄圧迫因子と、頸椎後屈動作により脊髄圧迫が増加する動的因子が関わっているといわれています。40〜50歳の中年以降の男性に多く、50代以上の70%の人が、症状は無くとも骨に何らかの加齢変化が認められると言われています。
上肢症状は手指のしびれ感や鈍痛で始まり、次第に手指巧緻運動障害が起こってきます。手のしびれ、知覚低下、巧緻運動障害(箸、書字、ボタンかけなどが困難となる)、筋力低下などが訴えられます。こうした症状の鑑別としては、一側上肢の痛みが主である頸椎症性神経根症、母指側4本のしびれる手根管症候群、小指側2本のしびれる肘部管症候群などがあります。知覚の異常がなく、肩が上がらないなど脱力と筋の萎縮を訴える病型(頸椎症性筋萎縮症)もありますが、運動ニューロン疾患との鑑別を要します。
下肢では痙性歩行障害および感覚障害が出現し、脊髄障害が高度になると歩行不能となり、膀胱直腸障害も出現してきます。四肢の深部腱反射は障害レベル以下では亢進し、病的反射も認められます。歩行ではまず走るときや、座位から立ち上がって歩き始めるとき、階段昇降では降りるときのほうが昇るときよりも困難を感じるようになります。頻尿や排尿遅延、便秘傾向なども出現してきます。重症例では、四肢機能が廃絶し、箸を使えず、歩行に介助を要し、尿失禁を来すこともあります。
膀胱直腸障害では、排尿の異常(頻尿、尿勢低下、開始遅延、尿意切迫、残尿感など)、便秘も中等症以上では頻発します。ほかに体幹の締めつけ、帯状の知覚異常などがみられることがあります。
H・Tさんの場合は、以下のようなことが言えると思われます。
頚椎症性脊髄症の原因となっていたのは、首をコキコキと鳴らす癖が一因だったと考えられます。これは椎間板に急激な負荷をかけて、椎間板の老化を後押ししてしまいます。さらには、肩こりの原因でもある、姿勢の悪さがありました。
姿勢が良い場合、背骨はゆるやかにS字状のカーブを描き、4〜5 Kgある頭を支えます。しかし彼女の場合、前屈みでパソコンに向かう生活をずっと続けたことで、首の骨が本来の位置より後ろに反ってしまい、首全体に大きな負荷をかけていました。さらにうつぶせになって本を読むという姿勢も、椎間板に大きな負担となっていました。これらを長年し続けたことで、椎間板の老化を早めてしまったと考えられます。結果、首の骨は不安定になり、ついには骨にトゲができてしまいました。
しかし症状が指先や腕のしびれ程度だったため、首のコキコキも姿勢の悪さも正すことはありませんでした。そしてついには、急に首を上げたあの時、トゲの圧迫でギリギリの状態だった神経が押しつぶされてしまいました。すぐさま緊急手術を行い、腕のしびれこそ残ってしまったものの、重篤な麻痺などの後遺症はなんとか回避することができました。
必要な検査として、まずは単純X線で、頸椎の変性程度と脊柱管前後径を知ることはスクリーニングとして重要です。脊柱管前後径が15mm以上あれば本症はまれです。MRIは必須で診断的価値が高いといわれています。ですが、T2強調矢状断像では、狭窄が強調されるので過剰に診断される例を時にみます。T1強調矢状断、水平断で圧迫による脊髄変形を確認することも重要です。一方、CTは後縦靭帯骨化の診断には絶対に必要となります。
治療としては、圧迫され脊髄に生じた虚血状態を改善する絶対的方法は外科的な除圧です。ですが、軽微な外傷で一時的に脊髄に生じた浮腫で発症した場合、入院して軽度の頸椎屈曲位での持続牽引治療とステロイド薬の内服が有効なこともあります。
そのほかの保存治療、頸椎カラー、外来頸椎牽引、プロスタグランジン製剤静脈投与あるいは内服、消炎薬内服は気休め以上の効果はないと考えてもらった方がいいでしょう。
手術の適応は、脊髄症(特に下肢の症状)が発症した時点です。ですが、初期は症状が軽微で患者が手術に踏み切れない場合が多いです。症状の進行が緩徐であると、ADL障害にも慣れてしまい、手術怖さもあって手術の時期が遅れ、重篤化してしまうこともあります。その場合、成績は不良となってしまいます。
手術法は、後方脊柱管拡大術が主で、後縦靭帯骨化症には前方除圧固定術も行われます。後方脊柱管拡大術は、頚部脊柱管の発育性狭窄因子や後方圧迫因子の強い症例がよい適応となります。椎弓切除術と椎弓形成術がありますが、前者は最近ではほとんど行われません。後者にはZ型形成術、片開き式、棘突起縦割法などさまざまな方法があり、原則としてC3椎弓からC7椎弓まで行います。
前方除圧固定術では、脊柱管前後径が少なくとも13 mm以上の症例で前方圧迫因子の強い症例に適用となります。手術椎間はMRI所見と神経症状に基づいて決定されます。
MRIで脊柱管が狭いと指摘されて、本症の発症・進行を阻止したい場合は、頸の過度の伸展を避けることが重要です。また、マッサージや矯正などで、他人に頸の運動を強制させないことも重要です。転倒が予期されるスポーツ(スキー、スケートなど)は避けるべきでしょう。
このような危険性を指摘されている場合、生活習慣をしっかりと見直すことが必要となってきます。そして何より、痺れなどの症状がみられたら早期受診、早期治療を行うべきであると考えられます。
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姿勢が良い場合、背骨はゆるやかにS字状のカーブを描き、4〜5 Kgある頭を支えます。しかし彼女の場合、前屈みでパソコンに向かう生活をずっと続けたことで、首の骨が本来の位置より後ろに反ってしまい、首全体に大きな負荷をかけていました。さらにうつぶせになって本を読むという姿勢も、椎間板に大きな負担となっていました。これらを長年し続けたことで、椎間板の老化を早めてしまったと考えられます。結果、首の骨は不安定になり、ついには骨にトゲができてしまいました。
しかし症状が指先や腕のしびれ程度だったため、首のコキコキも姿勢の悪さも正すことはありませんでした。そしてついには、急に首を上げたあの時、トゲの圧迫でギリギリの状態だった神経が押しつぶされてしまいました。すぐさま緊急手術を行い、腕のしびれこそ残ってしまったものの、重篤な麻痺などの後遺症はなんとか回避することができました。
必要な検査として、まずは単純X線で、頸椎の変性程度と脊柱管前後径を知ることはスクリーニングとして重要です。脊柱管前後径が15mm以上あれば本症はまれです。MRIは必須で診断的価値が高いといわれています。ですが、T2強調矢状断像では、狭窄が強調されるので過剰に診断される例を時にみます。T1強調矢状断、水平断で圧迫による脊髄変形を確認することも重要です。一方、CTは後縦靭帯骨化の診断には絶対に必要となります。
治療としては、圧迫され脊髄に生じた虚血状態を改善する絶対的方法は外科的な除圧です。ですが、軽微な外傷で一時的に脊髄に生じた浮腫で発症した場合、入院して軽度の頸椎屈曲位での持続牽引治療とステロイド薬の内服が有効なこともあります。
そのほかの保存治療、頸椎カラー、外来頸椎牽引、プロスタグランジン製剤静脈投与あるいは内服、消炎薬内服は気休め以上の効果はないと考えてもらった方がいいでしょう。
手術の適応は、脊髄症(特に下肢の症状)が発症した時点です。ですが、初期は症状が軽微で患者が手術に踏み切れない場合が多いです。症状の進行が緩徐であると、ADL障害にも慣れてしまい、手術怖さもあって手術の時期が遅れ、重篤化してしまうこともあります。その場合、成績は不良となってしまいます。
手術法は、後方脊柱管拡大術が主で、後縦靭帯骨化症には前方除圧固定術も行われます。後方脊柱管拡大術は、頚部脊柱管の発育性狭窄因子や後方圧迫因子の強い症例がよい適応となります。椎弓切除術と椎弓形成術がありますが、前者は最近ではほとんど行われません。後者にはZ型形成術、片開き式、棘突起縦割法などさまざまな方法があり、原則としてC3椎弓からC7椎弓まで行います。
前方除圧固定術では、脊柱管前後径が少なくとも13 mm以上の症例で前方圧迫因子の強い症例に適用となります。手術椎間はMRI所見と神経症状に基づいて決定されます。
MRIで脊柱管が狭いと指摘されて、本症の発症・進行を阻止したい場合は、頸の過度の伸展を避けることが重要です。また、マッサージや矯正などで、他人に頸の運動を強制させないことも重要です。転倒が予期されるスポーツ(スキー、スケートなど)は避けるべきでしょう。
このような危険性を指摘されている場合、生活習慣をしっかりと見直すことが必要となってきます。そして何より、痺れなどの症状がみられたら早期受診、早期治療を行うべきであると考えられます。
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