読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
粥状動脈硬化の危険因子を背景としています。特に、喫煙の影響が大きいです。上肢には少なく、下肢動脈系の大腿動脈、膝窩動脈、腸骨動脈、腹部大動脈の順に多いといわれますが、通常は複数の病変を認めます。
病理学的には、粥状硬化病変の潰瘍形成・石灰化・出血・血栓付着のために内腔が閉塞または狭窄を起こしています。安静時においては、血管内腔断面積が75%以下になると血流減少が起こります。運動時には安静時の10倍以上の血流が必要とされるため、歩行時などには運動に見合った血流が供給できなくなると、虚血症状が出現することになります。
足の血流が悪くなってしまうことで、様々な症状が現れてきます。たとえば、初発症状の一つに、間欠性跛行というものがあります。これは、「しばらく歩くと、ふくらはぎが痛んで歩けなくなる。だが、しばらく休むと、また歩けるようになる」という症状です。この点が、単なる冷え性と大きな違いです。ただ、動脈閉塞部位によってお尻から太ももにかけて痛みが起こってくることもあります。
これを間欠性跛行といい、特徴的な症状です。一定の距離を歩くと下腿の筋に疲労感・疼痛が生じます。休息により数分で軽減するので、再び歩行が可能となります。そのほか、指趾(足の指)の痺れ、冷感、チアノーゼなどを伴うことがあります。動脈閉塞が広範に及ぶと症状が高度となり、筋萎縮、阻血性潰瘍、壊死に陥ってしまうこともあります。最悪の場合、片足の切断も余儀なくされることもあります。
視診では四肢、指の色と形態を観察します。蒼白やチアノーゼ、皮膚・筋の萎縮、爪の変形、潰瘍病変の有無を観察します。触診では、罹患側で皮膚温が低下し、動脈の拍動も減弱または消失しています。体表面から通常、触知可能な動脈(総頸動脈、鎖骨下動脈、腋窩動脈、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈、後脛骨動脈)をすべて触診し、特に左右差を比較します。聴診では、血管雑音を頸部、鎖骨下、腹部、鼠径部、四肢で聴取します。
血圧測定は、聴診器またはドプラ血流速計を用いて四肢の各部で行います。正常上肢の血圧に対しての比を求めて血圧比(pressure index)とします。また、足関節/上腕血圧比(ankle-brachial pressure index; API)は一般的に用いられています(正常APIは > 0.9)。上肢での左右差は20 mmHg以上、下肢の分節的血圧測定法では大腿上部、膝上部、膝下部、踝上部の血圧測定を行い、15 mmHg以上の血圧低下部位から狭窄を推定します。
超音波検査ではBモード法で動脈病変部の狭窄を内腔の形態から観察可能となります。さらに、カラードプラ法、パルスドプラ法を併用して、乱流の有無、血流速波形・血流速度記録を行って狭窄・閉塞病変部を診断します。
MRアンギオグラフィー(MRA)では非侵襲的に動脈の走行、狭窄部位が推定可能となります。サーモグラフィーは体表面温度を客観的に測定し、色調変化として画像表示させることができ、Raynaud(レイノー)現象の評価や治療効果の判定に有効です。
さらに、血管撮影は病変部より中枢側にカテーテルを留置し、造影剤を注入します。直接撮影法、シネアンギオ法、デジタルサブトラクション血管造影(digital subtraction angiography; DSA)などで狭窄・閉塞病変の部位、範囲、程度、側副血行路が最も正確に診断可能となり、近年では、これらの診断からカテーテル治療へと応用されています。
その他に考慮すべき疾患としては、以下のようなものがあります。
また、膠原病ではRaynaud現象(Raynaud症状)といって、寒冷刺激や精神的緊張などによって誘発される可逆的な血管攣縮による皮膚の色調変化も起こりえます。典型的には蒼白化、チアノーゼ(紫色)、発赤の順に3相性の変化を認めます。手指末端(特に第2〜5指)に対称的または非対称的に起こることが最も多いです。足趾、耳、鼻、舌、口唇、乳頭にも稀に認められます。
こうした疾患を否定することが、まずは必要となると考えられます。その上で、もし冷え性であるということであれば、上記のような日常生活を送る上でご注意すべきことを守られることが重要であると思われます。
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本当は怖い足の冷え−閉塞性動脈硬化症
極端な足先の冷えに悩んでいます。MRI(磁気共鳴画像)検査では、足の動脈の血流に異常はなかったのですが、今は両足の先が痛く感じられるほど、症状が悪化しています。(70歳男性)この相談に対して、東海病院下肢静脈瘤リンパ浮腫・血管センター長の平井正文先生は、以下のようにお答えになっています。
足が冷たく感じる原因は様々で、それぞれ治療法も異なります。重大な病気が隠されていることもあります。まず、原因をはっきりさせることが大切です。間欠性跛行をきたす疾患としては、閉塞性動脈硬化症があります。閉塞性動脈硬化症とは、腹部大動脈または四肢の主要動脈が粥状硬化病変のために狭窄または閉塞して、四肢に慢性の循環障害をきたす疾患です。簡単にいってしまえば、足の血管で動脈硬化が進行し、狭窄ないしは閉塞をきたすために血流が悪くなってしまう疾患です。
足が冷たいというと、誰でもまず、動脈の血行障害を疑います。現在は動脈硬化の人が増え、血行障害がある人が急増しています。
血行障害が原因の場合、足の先、特に指が冷えます。血行障害は、片足だけに起こりやすく、歩行時に足が痛む「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という症状を伴うことがよくあります。
質問者は、MRI検査の結果では血流に異常がなく、しかも両足ともに冷えるということですので、血行障害の可能性は低いかもしれません。
粥状動脈硬化の危険因子を背景としています。特に、喫煙の影響が大きいです。上肢には少なく、下肢動脈系の大腿動脈、膝窩動脈、腸骨動脈、腹部大動脈の順に多いといわれますが、通常は複数の病変を認めます。
病理学的には、粥状硬化病変の潰瘍形成・石灰化・出血・血栓付着のために内腔が閉塞または狭窄を起こしています。安静時においては、血管内腔断面積が75%以下になると血流減少が起こります。運動時には安静時の10倍以上の血流が必要とされるため、歩行時などには運動に見合った血流が供給できなくなると、虚血症状が出現することになります。
足の血流が悪くなってしまうことで、様々な症状が現れてきます。たとえば、初発症状の一つに、間欠性跛行というものがあります。これは、「しばらく歩くと、ふくらはぎが痛んで歩けなくなる。だが、しばらく休むと、また歩けるようになる」という症状です。この点が、単なる冷え性と大きな違いです。ただ、動脈閉塞部位によってお尻から太ももにかけて痛みが起こってくることもあります。
これを間欠性跛行といい、特徴的な症状です。一定の距離を歩くと下腿の筋に疲労感・疼痛が生じます。休息により数分で軽減するので、再び歩行が可能となります。そのほか、指趾(足の指)の痺れ、冷感、チアノーゼなどを伴うことがあります。動脈閉塞が広範に及ぶと症状が高度となり、筋萎縮、阻血性潰瘍、壊死に陥ってしまうこともあります。最悪の場合、片足の切断も余儀なくされることもあります。
視診では四肢、指の色と形態を観察します。蒼白やチアノーゼ、皮膚・筋の萎縮、爪の変形、潰瘍病変の有無を観察します。触診では、罹患側で皮膚温が低下し、動脈の拍動も減弱または消失しています。体表面から通常、触知可能な動脈(総頸動脈、鎖骨下動脈、腋窩動脈、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈、後脛骨動脈)をすべて触診し、特に左右差を比較します。聴診では、血管雑音を頸部、鎖骨下、腹部、鼠径部、四肢で聴取します。
血圧測定は、聴診器またはドプラ血流速計を用いて四肢の各部で行います。正常上肢の血圧に対しての比を求めて血圧比(pressure index)とします。また、足関節/上腕血圧比(ankle-brachial pressure index; API)は一般的に用いられています(正常APIは > 0.9)。上肢での左右差は20 mmHg以上、下肢の分節的血圧測定法では大腿上部、膝上部、膝下部、踝上部の血圧測定を行い、15 mmHg以上の血圧低下部位から狭窄を推定します。
超音波検査ではBモード法で動脈病変部の狭窄を内腔の形態から観察可能となります。さらに、カラードプラ法、パルスドプラ法を併用して、乱流の有無、血流速波形・血流速度記録を行って狭窄・閉塞病変部を診断します。
MRアンギオグラフィー(MRA)では非侵襲的に動脈の走行、狭窄部位が推定可能となります。サーモグラフィーは体表面温度を客観的に測定し、色調変化として画像表示させることができ、Raynaud(レイノー)現象の評価や治療効果の判定に有効です。
さらに、血管撮影は病変部より中枢側にカテーテルを留置し、造影剤を注入します。直接撮影法、シネアンギオ法、デジタルサブトラクション血管造影(digital subtraction angiography; DSA)などで狭窄・閉塞病変の部位、範囲、程度、側副血行路が最も正確に診断可能となり、近年では、これらの診断からカテーテル治療へと応用されています。
その他に考慮すべき疾患としては、以下のようなものがあります。
ただ、MRIではわからない血行障害もあります。足の指の皮膚の色が白や青っぽく変色するようでしたら、血管外科を受診されることを勧めます。鑑別すべき疾患としては、Buerger病(閉塞性血栓血管炎)や脊柱管狭窄、急性動脈閉塞、血管炎などがあります。
このほか、腰椎の病気や糖尿病などによって神経が障害を受けている場合も、感覚異常として冷感を訴えることが少なくありません。また、甲状腺などのホルモン異常、貧血、膠原病でも足が冷たくなります。
はっきりした病気がなければ、自律神経の障害や、いわゆる「冷え症」が疑われます。この場合は足だけでなく、体全体を温めることが大切です。
入浴や運動、体操によって体を温め、その後も体を冷やさないようにします。また、規則正しい生活をし、ストレスを減らす工夫も心がけましょう。
また、膠原病ではRaynaud現象(Raynaud症状)といって、寒冷刺激や精神的緊張などによって誘発される可逆的な血管攣縮による皮膚の色調変化も起こりえます。典型的には蒼白化、チアノーゼ(紫色)、発赤の順に3相性の変化を認めます。手指末端(特に第2〜5指)に対称的または非対称的に起こることが最も多いです。足趾、耳、鼻、舌、口唇、乳頭にも稀に認められます。
こうした疾患を否定することが、まずは必要となると考えられます。その上で、もし冷え性であるということであれば、上記のような日常生活を送る上でご注意すべきことを守られることが重要であると思われます。
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本当は怖い足の冷え−閉塞性動脈硬化症