読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
発生の原因としては、打撲、捻挫、骨折などの外傷が発症の引き金となることが多いですが、医原性と考えられるものや、原因が特定できない症例もみられます。
痛みが起こる機序としては、次のように考えられています。そもそも、外傷などの侵害刺激が加わると防御反射として、一過性の交感神経緊張状態が生じます。すると、末梢血管が収縮されて、局所の出血や炎症が鎮静化されます。やがて、一過性の交感神経緊張状態は終焉し、血管は拡張されて組織修復が行われます。
ところが、何らかの原因により交感神経が過剰に反応し、緊張が持続されると、長期にわたる血管収縮のために局所は低酸素、アシドーシス、栄養低下(異栄養)が生じます。これが疼痛の原因となり、新たな侵害刺激となって悪循環が形成され、発症に至ると考えられています。
症状として、最も特徴的なものは激烈な自発痛です。疼痛は外傷の程度とは不釣り合いに強く、損傷神経の支配領域にとどまらないことが多いです。また、皮膚に触れたり、患肢の自動・他動運動により疼痛が誘発されます。持続する激しい疼痛のため、心理的不安から、不眠や不穏症状がみられることもあります。
皮膚・皮下の変化も、特徴的な症状の1つで、初期には皮膚の発赤、腫脹、皮膚温の上昇、発汗過多などがみられますが、次第に皮膚は光沢を失い蒼白・萎縮し、皮膚温の低下や発汗の減少がみられ、爪の変形などもみられるようになります。さらに進行すると、「pencil-pointing」と呼ばれる指の先細り現象が認められます。
治療としては、以下のようなものがあります。
薬物治療としては、ステロイド剤の少量あるいは短期間の大量経口投与が有効とされ、局所静脈内への投与が有効な症例もみられます。また、早期例では交感神経遮断剤や、自律神経調節作用をもつワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン)などの投与が有効とされています。
骨萎縮の防止の点からは、カルシトニン製剤が使用されます。また、疼痛などのために抑うつ症状がみられる場合は、抗うつ剤を併用します。
理学療法としては、疼痛の軽減・機能維持のための温熱療法、運動療法(ただし、他動運動は症状の悪化を来すことがある)・作業療法が有効で、早期例では適切な指導により症状の改善が得られる場合が多いです。腫脹や骨萎縮を伴った疼痛には、温冷交代浴(患肢を温水、冷水交互に浸し末梢血管運動神経系を刺激)が効果的であるといわれています。
ほかにも、除痛のために星状神経節ブロックや持続硬膜外ブロック、あるいは腰部交感神経ブロックが有効であるといわれています。さらに、経皮的電気神経刺激法(TENS)といって、疼痛が最も軽減する条件を設定し、30〜60分間の通電を行う治療法もあります。
治療に対しても抵抗性の場合があり、ご自身にあった治療法を選択されることが重要となると考えられます。
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1年前、突起物を踏んでから下肢が腫れ上がりました。治療しても痛みが取れず、半年後、別の医院で「RSD」と診断されました。電気マッサージなどをしていますが、改善しません。(51歳女性)この相談に対して、愛知医科大病院痛みセンター部長の牛田享宏先生は、以下のようにお答えになっています。
RSDは「反射性交感神経ジストロフィー」の略ですが、現在は「複合性局所疼痛症候群(CRPS)1型」と呼ばれます。骨折や、ねん挫、打撲などの外傷で神経が傷ついたことで生じる痛みの中では、重症なものとされています。反射性交感神経性ジストロフィーreflex sympathetic dystrophy(RSD)とは、外傷をはじめとするさまざまな原因によって発症し、持続する難治性疼痛あるいは血管運動障害、発汗障害などに代表される自律神経症状を伴う1つの症候群を指します。
特徴は、外傷の程度とは不釣り合いなほどの持続的な強い痛み、軽く触られただけで痛みを感じる「アロデニア」、小さな痛み刺激が何倍にも感じられる過剰な痛みです。
痛みのある部分が腫れたり、異常に冷たく感じられたり、または異常に汗をかいたりという症状が表れるほか、重症になると骨が萎縮(骨量の低下)することもあります。
原因は不明ですが、基本的には神経が傷つくことで末梢神経や脊髄の神経が過剰に興奮し、異常な痛みになると考えられています。こうした強い痛みが長期間続くと、脳に痛みが記憶されてしまい、さらに改善が難しくなります。
発生の原因としては、打撲、捻挫、骨折などの外傷が発症の引き金となることが多いですが、医原性と考えられるものや、原因が特定できない症例もみられます。
痛みが起こる機序としては、次のように考えられています。そもそも、外傷などの侵害刺激が加わると防御反射として、一過性の交感神経緊張状態が生じます。すると、末梢血管が収縮されて、局所の出血や炎症が鎮静化されます。やがて、一過性の交感神経緊張状態は終焉し、血管は拡張されて組織修復が行われます。
ところが、何らかの原因により交感神経が過剰に反応し、緊張が持続されると、長期にわたる血管収縮のために局所は低酸素、アシドーシス、栄養低下(異栄養)が生じます。これが疼痛の原因となり、新たな侵害刺激となって悪循環が形成され、発症に至ると考えられています。
症状として、最も特徴的なものは激烈な自発痛です。疼痛は外傷の程度とは不釣り合いに強く、損傷神経の支配領域にとどまらないことが多いです。また、皮膚に触れたり、患肢の自動・他動運動により疼痛が誘発されます。持続する激しい疼痛のため、心理的不安から、不眠や不穏症状がみられることもあります。
皮膚・皮下の変化も、特徴的な症状の1つで、初期には皮膚の発赤、腫脹、皮膚温の上昇、発汗過多などがみられますが、次第に皮膚は光沢を失い蒼白・萎縮し、皮膚温の低下や発汗の減少がみられ、爪の変形などもみられるようになります。さらに進行すると、「pencil-pointing」と呼ばれる指の先細り現象が認められます。
治療としては、以下のようなものがあります。
治療は、神経に直接針を刺して麻酔薬を入れる「神経ブロック」、抗てんかん薬、抗うつ薬、消炎鎮痛薬などを使った薬物療法に加え、冷水と温水に患部を交互につける「交代浴」を含む理学療法がありますが、いずれも有効性が低いのが現状です。慢性期に移行した症例の多くは難治性で、治療に強い抵抗を示すために、種々の治療法を組み合わせて行う必要があります。
痛みのある所をかばい過ぎると、関節が固まったり、痛みの悪化につながったりします。逆に「痛くても、こんなことができる」と積極的な気持ちに切り替え、出来ることを増やしていくことも大切です。
薬物治療としては、ステロイド剤の少量あるいは短期間の大量経口投与が有効とされ、局所静脈内への投与が有効な症例もみられます。また、早期例では交感神経遮断剤や、自律神経調節作用をもつワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン)などの投与が有効とされています。
骨萎縮の防止の点からは、カルシトニン製剤が使用されます。また、疼痛などのために抑うつ症状がみられる場合は、抗うつ剤を併用します。
理学療法としては、疼痛の軽減・機能維持のための温熱療法、運動療法(ただし、他動運動は症状の悪化を来すことがある)・作業療法が有効で、早期例では適切な指導により症状の改善が得られる場合が多いです。腫脹や骨萎縮を伴った疼痛には、温冷交代浴(患肢を温水、冷水交互に浸し末梢血管運動神経系を刺激)が効果的であるといわれています。
ほかにも、除痛のために星状神経節ブロックや持続硬膜外ブロック、あるいは腰部交感神経ブロックが有効であるといわれています。さらに、経皮的電気神経刺激法(TENS)といって、疼痛が最も軽減する条件を設定し、30〜60分間の通電を行う治療法もあります。
治療に対しても抵抗性の場合があり、ご自身にあった治療法を選択されることが重要となると考えられます。
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