読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
約2ヶ月前に右の鼻の下から唇にかけて赤く腫れ、病院で「肉芽腫性口唇炎」と診断されました。どのような病気で、がん化の心配はないか、療養での留意点などについてご助言ください。(51歳女性)
この相談に対して、順天堂大病院皮膚科助教の鷲見浩史先生は、以下のようにお答えになっています。
肉芽腫性口唇炎は、唇が厚ぼったくなり、赤みを帯びて、むくんでくる病気です。このむくみは軟らかいのですが、指で押しても痛くなく、かゆみもありません。症状が数日から1週間続いたり、再発を繰り返すうちに消えてなくなったりします。

ひどいときには、唇がゴムのように硬くなることもあります。しかし、がん化するとは考えられていません。唇のほかに、顔のあちこちの部分や、口腔内、あるいは顔面全体に現れることもあります。

原因は、リンパの流れの異常、慢性の炎症や小さな外傷から侵入した雑菌に対する異常な免疫反応などが考えられるものの、はっきりとは分かっていません。歯根膜や歯槽骨の炎症、歯槽のう漏、虫歯、慢性副鼻腔炎、慢性扁桃炎などといった歯科・耳鼻咽喉科の感染症のほか、金属アレルギーなどが関係しているとも言われています。
肉芽腫性口唇炎とは、主に口唇に生ずる腫脹性病変を指します。病因は不明ですが、病巣感染、歯科金属アレルギーなどの説があり、Crohn病の皮膚病変としても注目されています。

Quincke浮腫様の口唇浮腫を繰り返し、次第にゴム様硬の口唇の腫脹となります。ときに頬、額、眼瞼、舌などにも腫脹を認めることもあります。ちなみに、顔面神経麻痺と皺状舌を伴うのをメルカーソン・ローゼンタール症候群といいます。顔面神経麻痺は約30%にみられ、皺襞舌の頻度はそれほど高くはありません。

診断としては、腫脹した口唇からの生検が必須となります。病理組織所見は、初期には真皮の浮腫性変化と血管周囲性細胞浸潤を、完成すると類上皮細胞肉芽腫を形成します。その他、病巣感染の精査や歯科金属貼布試験などを行います。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療は、こうした感染症があれば、まず、それを治すことで症状がなくなることもあります。それで治らない場合は、炎症を抑えるステロイド薬を塗るか、注射をして、症状を改善するのが一般的です。

普段の生活では特に何をしても構いませんが、触りすぎないようにした方がよいと思います。

ただ、この病気はなかなか治らず、また一度消えたとしても再発しやすく、治療に難渋します。皮膚科の専門医とよくご相談いただきながら、根気よく治療を続けることが重要です。
原因が不明であるため、確立された治療法はありません。慢性根尖性歯周炎、う歯(むし歯)、慢性扁桃炎などの病巣感染が疑われる場合には原疾患の治療を行います。歯科金属のアレルギーが考えられれば、歯科治療により、貼布試験で陽性を呈した金属の除去を行います。

病巣感染も金属アレルギーも不明な場合は、肉芽腫形成の抑制作用を有するとされるトラニラスト、ケトチフェン、オキサトミド、メトロニダゾールの内服を試みます。いずれも、3ヶ月間は内服を続けます。

上記のように、触りすぎるなど、局所に刺激となるようなことは避けるべきであると考えられます。また、慢性に経過しますが、必ず軽快することも念頭においておくべきであると思われます。

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