元々は社交的だった東京都の主婦Aさん(62)は7年前、C型肝炎ウイルスを駆除するインターフェロンという注射薬とリバビリンという飲み薬を併用する治療を始めると、気分が沈んだ。よく眠れず、食欲もうせ7キロもやせた。
主治医の勧めで精神科に行くと「うつ病」との診断。抗うつ薬で症状を抑えながら約1年半、肝炎の治療を続けた。肝炎治療を終えるとうつ症状は消えた。これ以外にも、薬がうつ病を引き起こす場合がある。
うつ病は、気分の落ち込みや無気力が続く状態。職場や対人関係のストレス、生まれつきの素質など、さまざまな要因が関係して発症する。その中で、薬の副作用で起こるケースについて注意を促すため、厚生労働省は昨年、副作用対応マニュアルを作成した。
作成委員の東京厚生年金病院神経科・心療内科部長、大坪天平さんによると、インターフェロンに伴ううつ病は、副作用としてよく知られており、軽いうつ状態などが15〜30%にみられる。重症の場合、治療が中止されることもある。そのほか副作用としてうつ病が出る薬には、ぜんそくや膠原病、アレルギーなどさまざまな病気に用いるステロイド(副腎皮質ホルモン)の飲み薬や注射、点滴、高血圧に用いる降圧薬などが挙げられる。
ステロイド薬に関しては、飲んでいた人のうつ病有病率が11・1%と、飲んでいない人の4・1%より高かった、とのカナダの調査がある。服用後、数日から1〜2週間で起こることが多いが、その日から起こるケースもある。女性がなりやすい。
では、なぜ、インターフェロン製剤やステロイド薬が、うつ病を招くのか。大坪さんは「薬の作用で、さまざまなホルモンの分泌量が変動し、その結果、感情をつかさどる脳内の神経伝達物質にも異常が起こると考えられる」と解説する。
血圧の上昇にかかわる交感神経に作用する降圧薬もホルモンの分泌に影響を及ぼす。鎮静剤としても使われるレセルピン、降圧薬として広く使われるカルシウム拮抗薬やβ遮断薬などで副作用が報告されている。
ただし、東京女子医大精神科教授の石郷岡純さんは「これらの薬で必ずうつ病が起こるわけではなく、気がかりな症状がなければ心配いりません」と話す。
東北地方の女性(30)は乳がん治療のホルモン剤服用中に気分が落ち込んだ。自ら精神科を受診し「うつ病」と診断され、抗うつ薬を飲み始めたが、ホルモン剤をやめると元気を取り戻した。
薬物治療を始めてからうつ症状が出た場合、薬の副作用が疑われる。可能なら薬を減量、中止し、難しい場合は、抗うつ薬を服用するなどの対処法がある。石郷岡さんは「気分の落ち込みなどがあったら、自己判断で薬をやめず、主治医や精神科医に相談した方がよい」とアドバイスする。
(薬の副作用でうつ病に)
インターフェロンは、もともとウィルス感染細胞が産生し、ウィルス感染細胞を抵抗性にする物質として発見されました。ここからも分かるとおり、インターフェロンとは、体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌するタンパク質のことです。ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きを示し、サイトカインの一種に含められます。
最近では、慢性C型肝炎に対する治療薬として有名になっているかと思われます。週1回投与による治療が可能なPEG-IFも使用可能となり、PEG-IFNとリバビリンの併用療法が最も強力な抗ウイルス効果を示し、難治例には国際的にも標準的治療法となっているようです。
インターフェロン(IFN)は、程度の差はありますが、種々のウィルスに抗する作用を示しますが、それが産生されたのと同種の細胞にのみ有効です(宿主特異性という特徴です)。
どうしてこのような特徴があるのかといえば、IFNレセプターにより、規定されているといわれています。というのも、インターフェロンが効果をもつには、細胞表面のインターフェロンの受容体(IFN レセプター)に結合し、それを介して情報を核に伝える必要があるからです。
現在医薬品として数種のインターフェロン(α、β、γ)が承認され、C型などのウイルス性肝炎、またいくつかの腫瘍の治療に抗がん剤や放射線と併用して用いられています。
インターフェロンαとβはリンパ球(T細胞、B細胞)、マクロファージ、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞など多くのタイプの細胞で産生され、特に抗ウイルス応答の重要な要素です。
インターフェロンαは、感染などにより、線維芽細胞、血管内皮細胞、B細胞、マクロファージなどから一過性に産生されます。インターフェロンβは、線維芽細胞にウィルス感染させたり、二本鎖RNAの添加で特異的に誘導されるインターフェロンです。
インターフェロンγは活性化されたT細胞で産生され、免疫系と炎症反応に対して調節作用を有し、リンホカインの一種ともされます。抗ウイルス作用と抗腫瘍作用があるが弱く、その代わりIFN-αとβの効果を増強する作用があるとされています。
インターフェロンの副作用としては、以下のようなものがあります。
主治医の勧めで精神科に行くと「うつ病」との診断。抗うつ薬で症状を抑えながら約1年半、肝炎の治療を続けた。肝炎治療を終えるとうつ症状は消えた。これ以外にも、薬がうつ病を引き起こす場合がある。
うつ病は、気分の落ち込みや無気力が続く状態。職場や対人関係のストレス、生まれつきの素質など、さまざまな要因が関係して発症する。その中で、薬の副作用で起こるケースについて注意を促すため、厚生労働省は昨年、副作用対応マニュアルを作成した。
作成委員の東京厚生年金病院神経科・心療内科部長、大坪天平さんによると、インターフェロンに伴ううつ病は、副作用としてよく知られており、軽いうつ状態などが15〜30%にみられる。重症の場合、治療が中止されることもある。そのほか副作用としてうつ病が出る薬には、ぜんそくや膠原病、アレルギーなどさまざまな病気に用いるステロイド(副腎皮質ホルモン)の飲み薬や注射、点滴、高血圧に用いる降圧薬などが挙げられる。
ステロイド薬に関しては、飲んでいた人のうつ病有病率が11・1%と、飲んでいない人の4・1%より高かった、とのカナダの調査がある。服用後、数日から1〜2週間で起こることが多いが、その日から起こるケースもある。女性がなりやすい。
では、なぜ、インターフェロン製剤やステロイド薬が、うつ病を招くのか。大坪さんは「薬の作用で、さまざまなホルモンの分泌量が変動し、その結果、感情をつかさどる脳内の神経伝達物質にも異常が起こると考えられる」と解説する。
血圧の上昇にかかわる交感神経に作用する降圧薬もホルモンの分泌に影響を及ぼす。鎮静剤としても使われるレセルピン、降圧薬として広く使われるカルシウム拮抗薬やβ遮断薬などで副作用が報告されている。
ただし、東京女子医大精神科教授の石郷岡純さんは「これらの薬で必ずうつ病が起こるわけではなく、気がかりな症状がなければ心配いりません」と話す。
東北地方の女性(30)は乳がん治療のホルモン剤服用中に気分が落ち込んだ。自ら精神科を受診し「うつ病」と診断され、抗うつ薬を飲み始めたが、ホルモン剤をやめると元気を取り戻した。
薬物治療を始めてからうつ症状が出た場合、薬の副作用が疑われる。可能なら薬を減量、中止し、難しい場合は、抗うつ薬を服用するなどの対処法がある。石郷岡さんは「気分の落ち込みなどがあったら、自己判断で薬をやめず、主治医や精神科医に相談した方がよい」とアドバイスする。
(薬の副作用でうつ病に)
インターフェロンは、もともとウィルス感染細胞が産生し、ウィルス感染細胞を抵抗性にする物質として発見されました。ここからも分かるとおり、インターフェロンとは、体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌するタンパク質のことです。ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きを示し、サイトカインの一種に含められます。
最近では、慢性C型肝炎に対する治療薬として有名になっているかと思われます。週1回投与による治療が可能なPEG-IFも使用可能となり、PEG-IFNとリバビリンの併用療法が最も強力な抗ウイルス効果を示し、難治例には国際的にも標準的治療法となっているようです。
インターフェロン(IFN)は、程度の差はありますが、種々のウィルスに抗する作用を示しますが、それが産生されたのと同種の細胞にのみ有効です(宿主特異性という特徴です)。
どうしてこのような特徴があるのかといえば、IFNレセプターにより、規定されているといわれています。というのも、インターフェロンが効果をもつには、細胞表面のインターフェロンの受容体(IFN レセプター)に結合し、それを介して情報を核に伝える必要があるからです。
現在医薬品として数種のインターフェロン(α、β、γ)が承認され、C型などのウイルス性肝炎、またいくつかの腫瘍の治療に抗がん剤や放射線と併用して用いられています。
インターフェロンαとβはリンパ球(T細胞、B細胞)、マクロファージ、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞など多くのタイプの細胞で産生され、特に抗ウイルス応答の重要な要素です。
インターフェロンαは、感染などにより、線維芽細胞、血管内皮細胞、B細胞、マクロファージなどから一過性に産生されます。インターフェロンβは、線維芽細胞にウィルス感染させたり、二本鎖RNAの添加で特異的に誘導されるインターフェロンです。
インターフェロンγは活性化されたT細胞で産生され、免疫系と炎症反応に対して調節作用を有し、リンホカインの一種ともされます。抗ウイルス作用と抗腫瘍作用があるが弱く、その代わりIFN-αとβの効果を増強する作用があるとされています。
インターフェロンの副作用としては、以下のようなものがあります。
インターフェロンの副作用として、重大なものに間質性肺炎や抑うつがあります。間質性肺炎は、0.1%〜5%未満の発生頻度ですが、発熱や咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常などの呼吸器症状がある場合、中止する必要があります。
また、抑うつは0.1%〜5%未満で起こります。患者さんの精神状態に十分注意し、不眠や不安、焦燥などが現れた場合、中止することが必要となることもあります。他にも、糖尿病や自己免疫現象(甲状腺機能異常や、関節リウマチの悪化など)、重篤な肝障害、急性腎不全、汎血球減少などが起こる可能性もあります。
ほかにも、上記のようにレセルピン(末梢性交感神経抑制薬)、ステロイド、経口避妊薬、H2拮抗薬などの薬剤で抑うつ状態の発症がみられることもあります。薬物に由来して出現するうつ状態の存在は、常に注意しておく必要があります。
とくに、老年者を診療する機会が多い内科、プライマリケアでは、患者さんが服用中の薬剤を常にチェックするよう心がけておく必要があると思われます(他院で処方された薬物を含めて)。
その種類としては、消炎鎮痛薬、抗菌薬、抗癌薬、抗精神病薬、強心薬、降圧薬、ステロイド薬、抗てんかん薬、抗Parkinson病薬、食欲抑制薬、鎮静催眠薬、抗ヒスタミン薬、高脂血症治療薬などに分類されます。服用中のこうした薬剤を中止したり変更することによって、抑うつ状態が改善することもあります。
上記のように異変を考えた場合、やはり主治医としっかりと相談することが必要であると思われます。また、薬剤の副作用については、十分に説明を受けるべきであるとも考えられます。
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また、抑うつは0.1%〜5%未満で起こります。患者さんの精神状態に十分注意し、不眠や不安、焦燥などが現れた場合、中止することが必要となることもあります。他にも、糖尿病や自己免疫現象(甲状腺機能異常や、関節リウマチの悪化など)、重篤な肝障害、急性腎不全、汎血球減少などが起こる可能性もあります。
ほかにも、上記のようにレセルピン(末梢性交感神経抑制薬)、ステロイド、経口避妊薬、H2拮抗薬などの薬剤で抑うつ状態の発症がみられることもあります。薬物に由来して出現するうつ状態の存在は、常に注意しておく必要があります。
とくに、老年者を診療する機会が多い内科、プライマリケアでは、患者さんが服用中の薬剤を常にチェックするよう心がけておく必要があると思われます(他院で処方された薬物を含めて)。
その種類としては、消炎鎮痛薬、抗菌薬、抗癌薬、抗精神病薬、強心薬、降圧薬、ステロイド薬、抗てんかん薬、抗Parkinson病薬、食欲抑制薬、鎮静催眠薬、抗ヒスタミン薬、高脂血症治療薬などに分類されます。服用中のこうした薬剤を中止したり変更することによって、抑うつ状態が改善することもあります。
上記のように異変を考えた場合、やはり主治医としっかりと相談することが必要であると思われます。また、薬剤の副作用については、十分に説明を受けるべきであるとも考えられます。
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