落語家立川談志(73)が声門がんを克服していたことが6日、分かった。声門がんは喉頭がんの一種で、声帯にがんが発生する。喉頭がん全体の6割を占めるが、治癒率は高いという。

談志は昨年春から声が出にくく、かすれて聞き取りづらい状態が続いていた。9月にのどの組織の検査手術を受けたところ、このままだとがんになる可能性がある初期的な症状が見られ、投薬治療などを行った。

その後、精密検査の結果、声門がんと診断されたという。1ヶ月半にわたり、毎週月曜から金曜まで都内の病院に通院しながら28回もの放射線治療を受けた。治療後の経過は順調で、声も以前のような張りを取り戻した。

談志は97年に食道がんの摘出手術を受け、98年と03年にも食道がんの手術を受けている。今回、声門がんにも打ち勝った談志の復活ぶりが注目される。
(談志声門がん克服1カ月半放射線治療28回)


喉頭は気道の一部であり、食物の通路と呼吸のための空気の通路との交差点である咽頭の奥で、空気専用通路の始まりの部分を指します。咽頭に開いた空気の取り入れ口で、吸気では下の気管へ空気を送り、呼気では気管からの空気を咽頭に送ります。

この喉頭に発生するのが喉頭癌です。大部分が扁平上皮癌(まれに腺癌)であり、原発部位により、声門上癌、声門癌、声門下癌に分類されます。

男女比は10〜15:1と圧倒的に男性に多いです。40歳代からみられ、60歳代、70歳代が多いです。喫煙との関連が強く示唆されており、喉頭癌患者のブリンクマン指数(1日喫煙本数×年数)は、平均1,000という大きな数値であることも統計としてでています。

喉頭癌の中でも、声門(声帯)に発生する「声門癌」が60〜65%を占め、声門上は30〜35%で 、声門下は極めて少なく1〜2%であるといわれています(声門上癌は次第に減少し、声門癌が増加しています)。こうした部位により症状、癌の進展形式、リンパ節転移の頻度などに大きな違いがあり、治療方法や予後も異なります。

症状としては、声門上癌では初期には咽喉頭異常感などの不定愁訴しかないことが多く、声帯に進展すると嗄声をきたします。さらに癌が増大すると潰瘍を生じて咽喉頭痛、嚥下痛、出血を自覚するようになります。

こうした咽喉頭違和感や嚥下痛(飲み込むときの痛み)、耳に放散する痛みなどが出現してきます。また、高率(約40%)に頸部リンパ節転移が認められることで、時にリンパ節腫脹が初発症状となることもあります。

声門癌では嗄声(声が、しゃがれて出しにくい)がみられます。立川談志さんも声が出にくく、かすれて聞き取りづらい状態が続いていたとのことですが、これは小さな癌病変でも嗄声を起こすためです。比較的、早期発見されることが多いといわれています。

声門下癌は声帯に癌が波及して初めて症状が出現してきます。初期には無症状で経過することが多く、進行して初めて嗄声や呼吸困難などの症状が出現してきます。そのため、進行例が多いといわれています。

治療としては、以下のようなものがあります。
早期癌であれば喉頭部分切除術、進行癌であれば喉頭全摘出術などが施行されます。放射線療法や外科療法でも治癒する可能性がある場合は、年齢(手術に耐えられるかどうかなど)、全身状態、職業(声を使う職業で、できるだけ手術を避けたい、など)などを考慮した上で、それぞれの治療の長所、短所を十分説明して決定します。

喉頭癌の5年生存率は80−90%と良好であるといわれています。その上で、嚥下・呼吸・発声という喉頭機能を保存して治癒率を上げることが重要となります。放射線療法を基本にし、化学療法と手術を組み合わせて加療を行います。

声門癌では、T1、T2N0症例は放射線根治線量(60〜70グレイ)を照射します。40グレイ照射時に効果を判定し、照射のみで根治を望めないと判断されたときは手術を行います(多くの場合、喉頭垂直部分切除術によって制御可能)。

T2N+およびT3症例はTPF(Docetaxel + Cisplatin + 5-FU)同時併用放射線療法を行います。40グレイ照射時に効果を判定し照射のみで根治を望めないと判断されたときは手術〔垂直部分切除術、喉頭亜全摘術(cricohyoidoepiglottopexy:CHEP)、喉頭全摘出術〕を行います。

外科療法は、がんの原発部位の周辺だけを切除する喉頭部分切除術(早期癌などに)と、喉頭をすべて摘出する喉頭全摘出術(進行癌などに)に分けられます。ただ、こうした手術を行うと発声することが難しくなってしまいます。

長い闘病が、一段落ついたようです。再び精力的に活動を開始されるよういですが、くれぐれも健康にはお気を付けください。

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