読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、日本医大呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞先生は以下のようにお答えになっています。
気管支拡張症とは、多様な原因によって引き起こされる気管支の不可逆的拡張をきたす状態です。気管支が恒常的に拡張するため、慢性の気道病態をきたすことになります。
原因により大きく分けて、稀ですが先天的に線毛系の異常に起因し副鼻腔炎を伴うものと、幼少時の肺炎など後天的要因に関連し限局病変であるものに分類することができます。多くは乳幼児期から小児期にかけての気管支・肺の感染の既往があったり、あるいは成人になってから罹患した慢性肺疾患に続発して発症します。
医療環境の充実により、発生率・死亡率ともに減ってきてはいますが(とくに後天性気管支拡張症の中で、乳児期の気管支炎・肺炎によるものは、医療状況の改善と抗生物質の普及により減少している)、現在でも喀血を生じる原因疾患の1つとして重要となっています。
臨床的には持続感染により大量の痰喀出を特徴とするウェット型(wet type)と、時おり血痰を認めるのみのドライ型(dry type)に分けられます。日本でウェット型と考えられるものは、ほとんどが副鼻腔気管支症候群(SBS)に含まれます。
症状としては、咳嗽、喀痰が最も多いです。いわゆるウェット型(wet type)では、常に膿性痰がみられ、慢性副鼻腔炎を合併することが多いです。感染の増悪時にはこれらの症状はさらに増強し、呼吸困難を呈することもあります。
乾性型(dry type)では、通常は膿性痰はなく、慢性副鼻腔炎の合併も少ないです。感染増悪時に血痰、喀血を主訴とすることが多いです。
治療としては、以下のようなものがあります。
気道分泌物の貯留は気道感染を助長するため、気道クリーニングをはかります。痰はなるべく喀出するようにします。また、喫煙は気道クリアランスを妨げるので、できれば禁煙してもらいます。また、喀痰の喀出困難を訴える場合には去痰薬・粘液修復薬を投与します。
感染増悪時には、適切な抗生物質の投与が必要になります。まず、喀痰検査により起炎菌を検索し、抗生物質を選択します(安易な投与、無計画な投与は耐性菌を出現させてしまう)。症例によっては、びまん性汎細気管支炎(DPB)に準じて、マクロライド長期投与が試みられています(14員環マクロライドを少量長期投与することにより、気道炎症の改善と喀痰の減少が期待できる)。
喀血へが起こった場合、気道確保のため、出血気管支の左右がわかればそちらを下にした安静体位をとらせます。気管支鏡で出血部位を確認し、止血薬を投与することになります。
大量喀血がみられる場合、気管支動脈系からの出血であることが多いため、気管支動脈造影により気管支動脈塞栓術(BAE)が考慮されます。限局性気管支拡張症で、喀血を繰り返す例や進行する例や、BAEによっても止血が得られない例では、肺切除術も考慮されます。
一般に長期予後は悪くないとはいわれていますが、喀血を繰り返す例や、マクロライド長期投与無効例では必ずしも良好ではないといわれています。気道感染の予防対策として、うがいや手洗いの励行、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が勧められます。
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40代の娘が「気管支拡張症」と診断されました。軽い咳(せき)や血痰(たん)などが出ます。「一生付き合っていかなければいけない病気」と言われ、悩んでいます。(70代母)
この相談に対して、日本医大呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞先生は以下のようにお答えになっています。
気管支は、肺に空気を送り込む管です。二またに枝分かれを繰り返し、次第に細くなっていきます。
気管支拡張症は、その一部が拡張する病気です。幼児期にかかった百日咳などが原因であることが多く、男性より女性によく見られます。慢性的に咳が続いたり粘りのある痰が多かったりするのが特徴です。
気管支の内側は粘膜に覆われており、空気と一緒に取り込まれた細菌や微粒子を絶えず口の方向に送り出す大切な働きがあります。
しかし、病的に拡張した部分では、細菌などを追い出す働きが失われ、細菌の感染を受けやすくなります。細菌に感染すると、膿や血の混じった痰が出たり、発熱したりします。
気管支拡張症とは、多様な原因によって引き起こされる気管支の不可逆的拡張をきたす状態です。気管支が恒常的に拡張するため、慢性の気道病態をきたすことになります。
原因により大きく分けて、稀ですが先天的に線毛系の異常に起因し副鼻腔炎を伴うものと、幼少時の肺炎など後天的要因に関連し限局病変であるものに分類することができます。多くは乳幼児期から小児期にかけての気管支・肺の感染の既往があったり、あるいは成人になってから罹患した慢性肺疾患に続発して発症します。
医療環境の充実により、発生率・死亡率ともに減ってきてはいますが(とくに後天性気管支拡張症の中で、乳児期の気管支炎・肺炎によるものは、医療状況の改善と抗生物質の普及により減少している)、現在でも喀血を生じる原因疾患の1つとして重要となっています。
臨床的には持続感染により大量の痰喀出を特徴とするウェット型(wet type)と、時おり血痰を認めるのみのドライ型(dry type)に分けられます。日本でウェット型と考えられるものは、ほとんどが副鼻腔気管支症候群(SBS)に含まれます。
症状としては、咳嗽、喀痰が最も多いです。いわゆるウェット型(wet type)では、常に膿性痰がみられ、慢性副鼻腔炎を合併することが多いです。感染の増悪時にはこれらの症状はさらに増強し、呼吸困難を呈することもあります。
乾性型(dry type)では、通常は膿性痰はなく、慢性副鼻腔炎の合併も少ないです。感染増悪時に血痰、喀血を主訴とすることが多いです。
治療としては、以下のようなものがあります。
治療は通常、痰を取り除く薬で症状を抑えるようにします。また、「マクロライド系」と呼ばれる抗生物質を長期にわたり服用すると、徐々に症状が治まることがあります。そのほか、気管支拡張薬やステロイド薬を吸入する治療も選択肢の一つです。気管支拡張症に対する根本的治療はなく、慢性持続性気道感染の長期管理と急性増悪時の対症療法が基本となります。
さらに、たまった痰をなるべく外に出すよう促すリハビリや、適度な湿度を与える「ネブライザー治療」により、痰が出にくくなっている状態が改善できます。
ただ、「緑膿菌」や「アスペルギルス」と呼ばれる真菌(カビ)、「非結核性抗酸菌」などに感染していると、なかなか治らない状態が続きます。
その可能性が考えられる場合は一度、呼吸器内科の専門医に相談してみてはいかがでしょうか。
気道分泌物の貯留は気道感染を助長するため、気道クリーニングをはかります。痰はなるべく喀出するようにします。また、喫煙は気道クリアランスを妨げるので、できれば禁煙してもらいます。また、喀痰の喀出困難を訴える場合には去痰薬・粘液修復薬を投与します。
感染増悪時には、適切な抗生物質の投与が必要になります。まず、喀痰検査により起炎菌を検索し、抗生物質を選択します(安易な投与、無計画な投与は耐性菌を出現させてしまう)。症例によっては、びまん性汎細気管支炎(DPB)に準じて、マクロライド長期投与が試みられています(14員環マクロライドを少量長期投与することにより、気道炎症の改善と喀痰の減少が期待できる)。
喀血へが起こった場合、気道確保のため、出血気管支の左右がわかればそちらを下にした安静体位をとらせます。気管支鏡で出血部位を確認し、止血薬を投与することになります。
大量喀血がみられる場合、気管支動脈系からの出血であることが多いため、気管支動脈造影により気管支動脈塞栓術(BAE)が考慮されます。限局性気管支拡張症で、喀血を繰り返す例や進行する例や、BAEによっても止血が得られない例では、肺切除術も考慮されます。
一般に長期予後は悪くないとはいわれていますが、喀血を繰り返す例や、マクロライド長期投与無効例では必ずしも良好ではないといわれています。気道感染の予防対策として、うがいや手洗いの励行、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が勧められます。
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