生まれつき腸が正常に機能しない「全結腸型ヒルシュスプルング病」のため2006年、米国で多臓器移植手術を受けた愛知県春日井市の山下みらいちゃん(2)が、入院先の米コロンビア大病院(ニューヨーク市)で亡くなっていたことが14日、分かった。

募金活動で手術費を集めた「すくう会」事務局によると、みらいちゃんは昨年12月に肝機能が悪化したため再渡米して治療を続けていた。緊急手術を繰り返したが容体は回復せず、日本時間の13日午前に両親の腕に抱かれて息を引き取ったという。

みらいちゃんの渡航や手術費のため、全国から約1億5000万円の募金が寄せられた。07年6月に移植手術を終えて帰国した際には両親とともに元気な姿を見せていた。
(多臓器移植の女児死亡 愛知の山下みらいちゃん)


ヒルシュスプルング(Hirschsprung)病とは、直腸および結腸の先天的な壁内神経叢(アウエルバッハ神経叢とマイスナー神経叢)神経節細胞の欠如により、腸管の蠕動運動が障害されている疾患です。

簡単に言ってしまえば、腸管の蠕動運動を起こす神経が欠如しているため、腸の働きが悪くなり、通過障害(食べたものが通過しにくい)をきたした状態です。そのため、腸管が拡張してきます。

発生学的には、神経堤由来の神経原細胞が胎児期に腸管壁内を肛門側へ遊走することが妨げられたため、無神経節腸管が形成された状態となります。部位による分類としては、下部直腸型、直腸S状結腸型、長節型、全結腸型、高範囲型があります。

発生頻度は5,000人に1といわれ、性別では男児が多く3〜5:1となっています(ただ、全結腸型、広範囲型は女児に多いです)。また、未熟児に発生することは少なく、成熟児に多いという特徴があります。レット遺伝子(c-ret)などの異常の関与が報告されています。

主立った症状としては慢性便秘で、生後早期から腹部膨満、嘔吐(嘔吐は腸管通過障害によるもので、胆汁性嘔吐)、胎便排泄の遅延などが起こります。便秘は頑固で、浣腸・直腸指診で直腸粘膜が指に密着する感じ(直腸膨大部の欠如のため)があり、指を抜くと爆発的な排便を認めます。

腸炎を生じやすく、広域の無神経節症では致命的な問題になってしまいます。中心静脈栄養を必要とする症例では、腸内容のうっ滞に起因する腸炎が肝障害を助長する可能性があり、注意が必要です。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療は保存的療法や人工肛門造設により腸閉塞状態を解除し、全身状態の改善後神経節細胞欠損部腸管切除術(スウェンソン法など)を施行します。

原則として、まずは生後3ヶ月以降に体重が6kg以上となった時点で人工肛門を造設し、乳児期後期に二期的に根治術を行ないます。無神経節腸管の長さがS状結腸の中央部以下の症例は、経肛門的Soave法で根治手術を行います。

これ以上の長さの症例では経肛門的留置カテーテルで洗腸管理し、体重6kgを目標として腹腔鏡補助による経肛門的Soave法で根治手術を行います。経肛門的Soave法では、歯状線の0.5cm口側から粘膜抜去を開始して筋筒を作成し、骨盤腔を通過したところで筋層を切開して腹腔内に達します。腸管壁にそって血管を処理し、肛門から無神経節腸管を引き出します。術後の便秘を予防するため、筋筒の後壁に長軸方向の切開を加え、組織学的に正常な口側腸管を肛門側に吻合します。

経肛門的留置カテーテル管理が困難な症例では、腸瘻を造設し、体重6kgを目標としてDuhamel-Z型吻合法を用いて根治手術を行います。これは、まず無神経節の直腸の背側にトンネルを作製します。歯状線から0.5cm口側の直腸後壁に半周の切開を置き、直腸背側のトンネルに貫通します。

そのトンネル内に、腸瘻口側の正常腸管を腸間膜の処理後に引き降ろし、直腸後壁の半周切開部に吻合します。無神経節直腸後壁と引き降ろした腸管前壁を自動吻合器を用いて側々で吻合します。

全小腸が無神経節の場合は、Treitz靱帯から20〜30cm肛門側の空腸に腸瘻を造設します。

上記のケースでは、多臓器不全の状態に陥っており、多種臓器の移植が必要になったようです。ご冥福をお祈りしたいと思います。

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