読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、東京慈恵医大病院眼科教授の常岡 寛先生は以下のようにお答えになっています。
白内障とは、水晶体が混濁した状態の総称です。大きく分けて、生まれつき水晶体の混濁が認められる先天白内障と、生後何らかの原因で水晶体に混濁が生じた後天白内障があります。
また、混濁部位によって、核、皮質、前・後嚢下白内障に分類されます。核が褐色を帯びてくる核硬化白内障では近視化し、相談者のような後嚢下白内障では、近見視力の低下や羞明を初期には訴えることが多いです。
後嚢下白内障の混濁のみ生じる場合は、若年者に多いです。家族性に生じる傾向があります。他に、放射線白内障やステロイド白内障でもみられます。混濁が結点に近く位置するので視力に関係し、特に近見視力に影響しやすいです。また、明所視力を低下させます。
治療法としては、薬物療法や手術療法があります。薬物によって水晶体の混濁を軽減することは不可能であり、薬物療法は、混濁の進行を遅らせる目的で行われ、混濁の除去には、手術が選択されます。
薬物療法としては、白内障治療薬であるピレノキシン(カタリン、カリーユニ)、グルタチオン(タチオン点眼用)などがもちいられます。
手術に踏み切るかは、症例によって大きく異なりますが、目安として矯正視力がだいたい0.6くらいになると手術を考慮します(ただ、いくつ以下に視力が低下したらば手術というような視力による適応基準は決められていません)。
本例の場合は、以下のようなことが言えると思われます。
具体的な手術としては、まず麻酔(点眼・テノン嚢麻酔など、投与時の痛みの少ない麻酔で行うことも可能)を行います。水晶体の基底膜である水晶体嚢の角膜寄りのところを円形に切除し、ここから水晶体内容物(皮質・核)を超音波で破砕吸引しながら除去します。
中身のなくなった水晶体嚢に、プラスチック製の眼内レンズを挿入するということになります。術後の屈折度数は、挿入する眼内レンズの度数によって決まりますが、左右眼の度数を調整し、軽い近視となるように選択することが多いようです。
最近では、挿入する眼内レンズに付加価値をつけたものが多くなってきています。たとえば、多焦点眼内レンズでは、遠見と近見とも一定の視力が得られます。これにより、遠近が単一の眼鏡あるいは、眼鏡なしでみえる(遠近をかけかえる必要がない)ようになる場合があります。
他にも、非球面レンズでは、眼球全体の収差を減らし、夜間視力の向上につながります。着色レンズでは、色の見え方がより自然になり、網膜光障害を予防して眼鏡黄斑変性を予防する効果が期待されています。
どのような治療が良いのか、主治医による説明を聞いた上で、ご自身で選択されることが望まれます。
【関連記事】
白内障手術のリスクと限界とは
本当は怖い目のかすみ−白内障
左目が「後嚢白内障」と診断されました。遠近感がつかめず運転や仕事に支障が出て困っています。右目の視力は2・0ですが、左目はこの3か月で0・2低下し、0・5になりました。
この相談に対して、東京慈恵医大病院眼科教授の常岡 寛先生は以下のようにお答えになっています。
後嚢白内障とは、眼の中にあってレンズの役割をしている「水晶体」の後ろの部分が、白く濁って物が見えにくくなる病気です。
加齢による「老人性白内障」が最も多いですが、最近は、アトピー性皮膚炎の増加や様々な薬剤の服用、環境の変化などの影響により、20〜50歳代の若い人でも白内障にかかる人が増えてきました。
症状を改善させるには手術が必要です。通常、局所麻酔で、水晶体の薄い袋だけを残して中身を吸い取り、代わりに人工の「眼内レンズ」をその袋の中に入れ、視力を回復させます。
若い人は、原因によって白内障が急速に進行し、手術が難しくなることがあり、すぐに手術した方が良い場合があります。
白内障とは、水晶体が混濁した状態の総称です。大きく分けて、生まれつき水晶体の混濁が認められる先天白内障と、生後何らかの原因で水晶体に混濁が生じた後天白内障があります。
また、混濁部位によって、核、皮質、前・後嚢下白内障に分類されます。核が褐色を帯びてくる核硬化白内障では近視化し、相談者のような後嚢下白内障では、近見視力の低下や羞明を初期には訴えることが多いです。
後嚢下白内障の混濁のみ生じる場合は、若年者に多いです。家族性に生じる傾向があります。他に、放射線白内障やステロイド白内障でもみられます。混濁が結点に近く位置するので視力に関係し、特に近見視力に影響しやすいです。また、明所視力を低下させます。
治療法としては、薬物療法や手術療法があります。薬物によって水晶体の混濁を軽減することは不可能であり、薬物療法は、混濁の進行を遅らせる目的で行われ、混濁の除去には、手術が選択されます。
薬物療法としては、白内障治療薬であるピレノキシン(カタリン、カリーユニ)、グルタチオン(タチオン点眼用)などがもちいられます。
手術に踏み切るかは、症例によって大きく異なりますが、目安として矯正視力がだいたい0.6くらいになると手術を考慮します(ただ、いくつ以下に視力が低下したらば手術というような視力による適応基準は決められていません)。
本例の場合は、以下のようなことが言えると思われます。
しかし、眼内レンズは通常、焦点が一つしかないため、手術後は、遠くのものに焦点を合わせると近くのものには焦点が合わなくなる老眼になります。
従って、手術前にそれほど不便を感じていない若い人が手術を受けると、かえって不便になる場合があります。そのため、片方だけが白内障の場合、手術を行う時期の判断が難しいこともあります。
質問者の場合、視力障害が進行し、生活に不便を感じておられるようですので、手術をした方がいいと思います。
最近、遠近両方が見える「多焦点眼内レンズ」も使われることがあります。主治医と相談し、最善の治療法を検討してみると良いでしょう。
具体的な手術としては、まず麻酔(点眼・テノン嚢麻酔など、投与時の痛みの少ない麻酔で行うことも可能)を行います。水晶体の基底膜である水晶体嚢の角膜寄りのところを円形に切除し、ここから水晶体内容物(皮質・核)を超音波で破砕吸引しながら除去します。
中身のなくなった水晶体嚢に、プラスチック製の眼内レンズを挿入するということになります。術後の屈折度数は、挿入する眼内レンズの度数によって決まりますが、左右眼の度数を調整し、軽い近視となるように選択することが多いようです。
最近では、挿入する眼内レンズに付加価値をつけたものが多くなってきています。たとえば、多焦点眼内レンズでは、遠見と近見とも一定の視力が得られます。これにより、遠近が単一の眼鏡あるいは、眼鏡なしでみえる(遠近をかけかえる必要がない)ようになる場合があります。
他にも、非球面レンズでは、眼球全体の収差を減らし、夜間視力の向上につながります。着色レンズでは、色の見え方がより自然になり、網膜光障害を予防して眼鏡黄斑変性を予防する効果が期待されています。
どのような治療が良いのか、主治医による説明を聞いた上で、ご自身で選択されることが望まれます。
【関連記事】
白内障手術のリスクと限界とは
本当は怖い目のかすみ−白内障