鬱病治療のため、「パキシル」といった抗鬱薬を服用した患者の中に、服用後に人を傷つける恐れのある他害行為の症状が表れたという報告が平成16〜20年にかけて計42件、厚生労働省に寄せられていたことが6日、分かった。
事件を起こしたケースもあり、投与にかかわった医師らからは薬の副作用の可能性を指摘する声が出ている。厚労省は近く、専門家から意見を求めるなど因果関係の調査に乗り出す。
厚労省によると、他害行為の報告が把握されている抗鬱薬は「パキシル」のほか、「ジェイゾロフト」「デプロメール」「ルボックス」の4種。
主な報告は「バイクをけったり、車をなぐる」「男子高校生が『このままでは人を傷つけてしまう。捕まえてくれ』と要望した」など。鬱病を併発した認知症の70代の男が、パキシル投与後に妻を死に至らしめたり、45歳の男が妻に重傷を負わせたりするなど、事件に発展したケースもあった。
42件のうち、もっとも広く流通している「パキシル」に関する報告は28件あり、製造販売元のグラクソ・スミスクラインによると、処方した医師は5件で薬剤との因果関係を「確実」とし、18件で「疑われる・否定できない・関連あり」と判断した。
そのため、厚労省では専門家から意見を求めるとともに、他の抗鬱薬でも同様の報告が寄せられていないか、薬の安全情報をとりまとめる医薬品医療機器総合機構を通じて把握を急いでいる。因果関係が強く疑われれば、添付文書の注意書きや副作用に「攻撃的反応」などと明記する。
ただ、鬱病以外の患者への誤投与や、別の薬との飲み合わせにより他害行動が誘引されたケースも考えられ、精査が必要となる。
厚労省医薬食品局安全対策課は「他害行為が薬の影響によるものか、慎重に調べている。ただ副作用を過剰に恐れて急に薬の服用をやめると、使用者の命にかかわる副作用が発生する場合もある。個人で判断せず、担当医と相談してほしい」としている。
(抗鬱薬服用で攻撃的反応 5年で42件 厚労省が副作用調査へ)
うつ病に対しては、抗うつ薬の服用が行われ、臨床的にその効果が実証されていると考えられています。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。
抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・眠気などの副作用が比較的多いです。これは、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っているため、こうした副作用が現れると考えられます。
さらに、三環系抗うつ薬の場合、大量服用時にQT延長や急激な徐脈などの致死的な不整脈をきたす可能性があります。四環系抗うつ薬では、抗コリン作用や心毒性が比較的弱いといわれています。
近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用は比較的少ないとされています。ですが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされています。また、不安・焦燥が強い場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多いです。
ただ、SSRIであるフルボキサミン、パロキセチンはセロトニン受容体を刺激するため、投与初期に不安、焦燥や不眠を引き起こしたり、性機能障害などを生じることがあります。
また、肝臓の薬物代謝酵素チトクロームP450の阻害による薬物相互作用をきたしやすく、セロトニン症候群や薬物中止による離脱症状の可能性もあります。さらに、パロキセチンが18歳未満の大うつ病性障害患者において自殺念慮・企図のリスクを増加させるとの報告があり、使用を控えるべきであるといわれています。
現在、うつ病治療の第1選択薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)かセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であると考えられます。ただ、抗うつ薬の効果が発現するのに時間がかかるので、不安・焦燥の強い場合には初期(2〜4週)に限りベンゾジアゼピン系抗不安薬を併用します。
代表的な塩酸パロキセチン水和物(パキシル)は、選択的なセロトニン(5-HT)取り込み阻害作用を示し、神経間隙内の5-HT濃度を上昇させ、反復経口投与によって5-HT2C受容体のdown-regulationを誘発することにより、抗うつ作用及び抗不安作用を示すと考えられています。
服用にあたっては、以下のような注意点があります。
事件を起こしたケースもあり、投与にかかわった医師らからは薬の副作用の可能性を指摘する声が出ている。厚労省は近く、専門家から意見を求めるなど因果関係の調査に乗り出す。
厚労省によると、他害行為の報告が把握されている抗鬱薬は「パキシル」のほか、「ジェイゾロフト」「デプロメール」「ルボックス」の4種。
主な報告は「バイクをけったり、車をなぐる」「男子高校生が『このままでは人を傷つけてしまう。捕まえてくれ』と要望した」など。鬱病を併発した認知症の70代の男が、パキシル投与後に妻を死に至らしめたり、45歳の男が妻に重傷を負わせたりするなど、事件に発展したケースもあった。
42件のうち、もっとも広く流通している「パキシル」に関する報告は28件あり、製造販売元のグラクソ・スミスクラインによると、処方した医師は5件で薬剤との因果関係を「確実」とし、18件で「疑われる・否定できない・関連あり」と判断した。
そのため、厚労省では専門家から意見を求めるとともに、他の抗鬱薬でも同様の報告が寄せられていないか、薬の安全情報をとりまとめる医薬品医療機器総合機構を通じて把握を急いでいる。因果関係が強く疑われれば、添付文書の注意書きや副作用に「攻撃的反応」などと明記する。
ただ、鬱病以外の患者への誤投与や、別の薬との飲み合わせにより他害行動が誘引されたケースも考えられ、精査が必要となる。
厚労省医薬食品局安全対策課は「他害行為が薬の影響によるものか、慎重に調べている。ただ副作用を過剰に恐れて急に薬の服用をやめると、使用者の命にかかわる副作用が発生する場合もある。個人で判断せず、担当医と相談してほしい」としている。
(抗鬱薬服用で攻撃的反応 5年で42件 厚労省が副作用調査へ)
うつ病に対しては、抗うつ薬の服用が行われ、臨床的にその効果が実証されていると考えられています。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。
抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・眠気などの副作用が比較的多いです。これは、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っているため、こうした副作用が現れると考えられます。
さらに、三環系抗うつ薬の場合、大量服用時にQT延長や急激な徐脈などの致死的な不整脈をきたす可能性があります。四環系抗うつ薬では、抗コリン作用や心毒性が比較的弱いといわれています。
近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用は比較的少ないとされています。ですが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされています。また、不安・焦燥が強い場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多いです。
ただ、SSRIであるフルボキサミン、パロキセチンはセロトニン受容体を刺激するため、投与初期に不安、焦燥や不眠を引き起こしたり、性機能障害などを生じることがあります。
また、肝臓の薬物代謝酵素チトクロームP450の阻害による薬物相互作用をきたしやすく、セロトニン症候群や薬物中止による離脱症状の可能性もあります。さらに、パロキセチンが18歳未満の大うつ病性障害患者において自殺念慮・企図のリスクを増加させるとの報告があり、使用を控えるべきであるといわれています。
現在、うつ病治療の第1選択薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)かセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であると考えられます。ただ、抗うつ薬の効果が発現するのに時間がかかるので、不安・焦燥の強い場合には初期(2〜4週)に限りベンゾジアゼピン系抗不安薬を併用します。
代表的な塩酸パロキセチン水和物(パキシル)は、選択的なセロトニン(5-HT)取り込み阻害作用を示し、神経間隙内の5-HT濃度を上昇させ、反復経口投与によって5-HT2C受容体のdown-regulationを誘発することにより、抗うつ作用及び抗不安作用を示すと考えられています。
服用にあたっては、以下のような注意点があります。
抗うつ薬による副作用が、顕著な場合には原因薬剤の漸減・中止を考慮します。その際、他の抗うつ薬への切り替えが原則となります。副作用に対する、安易な併用療法(副作用のために薬剤を使うといったこと)は避けるべきであると考えられます。
上記の内容にもありますが、抗うつ薬の減量・中止時には、抑うつ症状の増悪や、再燃の危険性・離脱症状出現の可能性があります。ですので、事前に減量時の危険性を十分説明し、患者や家族に対して理解を求めることが必要です。
薬を止める時には、慎重に漸減中止(段々と薬の量を減らしていく)を行います。くれぐれも、一気に止めてしまう、ということではなく、医師と相談して中止することが勧められます。
パキシル、デプロメール、トレドミンなどでは、初期に悪心・嘔吐など消化器系の副作用が出現することがあります。軽症であれば、そのまま継続すると自然に消失します。また、効果を確認するには最大投与量後、最低4週間は必要であるといった注意点があります。
どうして他害行為に及んでしまうのか、実際に薬剤によるものなのかは不明ですが、服用している患者さんは十分にご注意いただいた方が良さそうです。
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長引くうつ病…もしかしたら、気分変調症?
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薬を止める時には、慎重に漸減中止(段々と薬の量を減らしていく)を行います。くれぐれも、一気に止めてしまう、ということではなく、医師と相談して中止することが勧められます。
パキシル、デプロメール、トレドミンなどでは、初期に悪心・嘔吐など消化器系の副作用が出現することがあります。軽症であれば、そのまま継続すると自然に消失します。また、効果を確認するには最大投与量後、最低4週間は必要であるといった注意点があります。
どうして他害行為に及んでしまうのか、実際に薬剤によるものなのかは不明ですが、服用している患者さんは十分にご注意いただいた方が良さそうです。
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