読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
外傷性肩関節前方不安定症は、強い外力により外傷性肩関節前方脱臼・亜脱臼が生じた際に、肩関節の前方構成体である肩甲骨関節窩の骨折や前方関節唇または関節上腕靭帯の損傷が起こり(Bankart損傷)、保存的治療によって修復されないため、その後軽微な外力でも脱臼・亜脱臼を繰り返すものを指します。初回脱臼から反復性への移行は、初回脱臼時の年齢に影響され、10〜20歳代前半が最も多いといわれています。
一方、非外傷性肩関節不安定症においては、多方向性肩関節不安定症、習慣性(位置性)肩関節後方脱臼、随意性脱臼などが含まれています。
多方向性肩関節不安定症は、上腕を下方に牽引すると肩関節の下方亜脱臼を生じる以外に、前後方向への不安定症を併せもつことが多いです。そのほかに肩関節を挙上していくと約90度付近で上腕骨頭が後方へ脱臼し、水平伸展すると自己整復される習慣性(位置性)肩関節後方脱臼や、筋力を使って随意的に脱臼できる随意性脱臼などが含まれています。
上記のケースでは、明らかな脱臼の既往もないようですので、非外傷性肩関節不安定症に含まれると思われます。
肩関節多方向性不安定症には、腱板機能強化訓練が有効で、手術療法が行われることは稀です。疼痛を生じさせない程度の等尺性・等張性抵抗運動を中心として腱板構成筋の筋活性化をはかります。肩甲骨の不安定な動きを示す症例には肩甲骨安定化のため装具使用も有効です。
随意性脱臼では脱臼させることを我慢させることが大事で、それができない場合には心理的要因が根底にある場合があり、精神科との協力を要します。習慣性(位置性)肩関節後方脱臼では、長期間脱臼肢位をとらないことと腱板機能強化訓練を継続することで症状は緩和します。
腱板機能強化訓練は、肩関節の動的支持機構である腱板筋のうち棘下筋、肩甲下筋を強化します。等尺性運動を疼痛のでない、あるいは亜脱臼を起こさない範囲で行います。ウエートトレーニングなど重りを持った筋力トレーニングでは関節包が引き延ばされるのでよくないといわれています。
しかし、こうしたことでも改善されない場合は、手術が必要となります。手術療法に関しては、以下のようなことがいえます。
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激しく肩を前後に動かすと肩が外れたような感覚になり、鋭い痛みがしばらく続きます。亜脱臼と診断されました。癖になったようですが、治療法などを教えてください。(16歳女性)この相談に対して、順天堂大病院整形外科教授の黒沢尚先生は以下のようにお答えになっています。
上腕骨の上端にある骨頭が、肩甲骨のくぼみから何度も外れかかる「反復性肩関節亜脱臼」のようです。何かのきっかけで脱臼か、関節が完全には外れない亜脱臼をして以来、ずっと肩が外れやすくなる状態です。上記のような肩関節不安定症は、外傷が原因となり発症する外傷性肩関節前方不安定症(反復性肩関節脱臼・亜脱臼)と、非外傷性肩関節不安定症(動揺性肩関節もしくは肩関節多方向性不安定症など)があります。
症状が現れるきっかけは二つあります。一つは、交通事故やラグビーのタックルなど、非常に大きな力が腕にかかった場合。もう一つは小中学生の頃などに、ボールを投げる、テニスのラケットを振るといった、通常なら外れるはずのないような軽い動作で起きた場合です。後者は肩甲骨のくぼみの形や関節を支える筋肉の強さなど、体質の影響が大きいと考えられます。
質問者は、事故などが原因ではなく、小学生のころから続いているので、体質の影響と思われます。治療法は、最初の脱臼の経緯にかかわらず、まず、肩が外れないような肩甲骨の動かし方や、肩の筋力トレーニングが必要です。しかし、これだけで治すのは難しく、手術が必要となることが多くなります。
外傷性肩関節前方不安定症は、強い外力により外傷性肩関節前方脱臼・亜脱臼が生じた際に、肩関節の前方構成体である肩甲骨関節窩の骨折や前方関節唇または関節上腕靭帯の損傷が起こり(Bankart損傷)、保存的治療によって修復されないため、その後軽微な外力でも脱臼・亜脱臼を繰り返すものを指します。初回脱臼から反復性への移行は、初回脱臼時の年齢に影響され、10〜20歳代前半が最も多いといわれています。
一方、非外傷性肩関節不安定症においては、多方向性肩関節不安定症、習慣性(位置性)肩関節後方脱臼、随意性脱臼などが含まれています。
多方向性肩関節不安定症は、上腕を下方に牽引すると肩関節の下方亜脱臼を生じる以外に、前後方向への不安定症を併せもつことが多いです。そのほかに肩関節を挙上していくと約90度付近で上腕骨頭が後方へ脱臼し、水平伸展すると自己整復される習慣性(位置性)肩関節後方脱臼や、筋力を使って随意的に脱臼できる随意性脱臼などが含まれています。
上記のケースでは、明らかな脱臼の既往もないようですので、非外傷性肩関節不安定症に含まれると思われます。
肩関節多方向性不安定症には、腱板機能強化訓練が有効で、手術療法が行われることは稀です。疼痛を生じさせない程度の等尺性・等張性抵抗運動を中心として腱板構成筋の筋活性化をはかります。肩甲骨の不安定な動きを示す症例には肩甲骨安定化のため装具使用も有効です。
随意性脱臼では脱臼させることを我慢させることが大事で、それができない場合には心理的要因が根底にある場合があり、精神科との協力を要します。習慣性(位置性)肩関節後方脱臼では、長期間脱臼肢位をとらないことと腱板機能強化訓練を継続することで症状は緩和します。
腱板機能強化訓練は、肩関節の動的支持機構である腱板筋のうち棘下筋、肩甲下筋を強化します。等尺性運動を疼痛のでない、あるいは亜脱臼を起こさない範囲で行います。ウエートトレーニングなど重りを持った筋力トレーニングでは関節包が引き延ばされるのでよくないといわれています。
しかし、こうしたことでも改善されない場合は、手術が必要となります。手術療法に関しては、以下のようなことがいえます。
手術では、関節を包み込んでいる袋状の膜をきつく縫って縮めたり、関節を筋肉で覆ったり、あるいは、肩甲骨のくぼみの縁に出っ張りを設けて上腕骨の骨頭が外れないようにします。十分な保存療法が行われたにもかかわらず、疼痛、不安感などで日常生活や仕事、スポーツに障害のある症例では、手術を行います。具体的な手術としては、上記のようなものになります。
手術後は、大きく振りかぶってボールを投げたり、ラケットを振ったりする動作が少し制限される場合があります。今後、どのような種類のスポーツをされるのかも含めて、肩の専門医に十分相談されることをお勧めします。
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