読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
サルコイドーシスで2年前から薬を飲み、せき、たんは治りましたが、外出が難しいほど息苦しくなりました。原因や対策などを教えてください。(79歳男性)
この相談に対して、JR東京総合病院副院長の山口哲生先生は以下のようにお答えになっています。
サルコイドーシスは、全身に「肉芽腫」という小さな塊ができる病気で、何らかの物質がリンパ管の中を伝って広がり、病巣を作っていきます。症状が主に現れるのは、肺のほか心臓や目、皮膚、骨などです。

肺では、肺の入り口の「肺門」のリンパ節が腫れたり、肺に広がったりしやすい一方、自覚症状が少なく、自然改善することも多いのが特徴です。原因は、ニキビを引き起こす「アクネ菌」であるという説が最も有力です。しかし、ばい菌なのに、抗生剤はあまり効きません。

そこで、胸部のエックス線で病状の悪化が確認されれば、ステロイド治療が行われます。時間はかかりますが、ステロイドを減らしていくうちに症状が落ち着いていくのが一般的です。しかし、質問者のように薬が十分に効かず、呼吸機能が低下する例もあります。
サルコイドーシスとは、非乾酪性肉芽腫性病変を基調とする病態の疾患です。侵される臓器はリンパ節、眼、皮膚が主であり、内科的には肺、心臓、神経があります。

原因は不明ですが、未知の吸入抗原による免疫システムの活性化が病因と考えられており、上記のように抗原の候補としてPropionibacterium acnesが注目されています。

臨床症状は多彩であり、無症状のものから、急激な経過をたどり死に至るものもあります。診断時に多いのは眼症状(霧視、羞明など)、呼吸器症状(咳、息切れなど)、皮膚症状(皮疹、皮下結節など)、全身症状(発熱、全身倦怠感など)があります。

その他、心病変でめまい、失神、徐脈などのAdams-Stokes(アダムス・ストークス)症候を、神経病変で顔面神経麻痺、精神神経症状などを生じます。少数ですが、ぶどう膜炎、両側耳下腺腫脹、顔面神経麻痺を主徴とするHeerfordt(ヘールフォルト)症候群で発症することもあります。

上記のような肺サルコイドーシスは、50%前後は無症状で、健康診断時の胸部X線異常所見から発見されています。症状発見群の中で、呼吸器症状(咳・呼吸困難など)で発見されることは少なく、最も多いのは、眼症状で本症が疑われ,胸部X線撮影で発見される例であるといわれています。

症例の50〜70%は発症・発見後5年以内に病変は消褪するといわれていますが、残りの症例では病変は不変あるいは残存しますが、上記のように肺病変が線維化病変に進展し、呼吸不全を呈する症例は5%以下であるといわれています。

治療としては、以下のようなものがあります。
上記のような場合、ステロイドを再度増量したり、免疫抑制剤を併用したりします。それでも改善しなければ、酸素ボンベを携帯し、鼻に着けたチューブから酸素を補充する「在宅酸素療法」が必要になるかもしれません。

ただ、サルコイドーシスの治療は、自然改善がありえますし、ステロイドの使いすぎにも注意が必要なので、治療法の見極めは、専門医でないと難しいところがあります。そうした医師・医療機関や治療に関する情報は「日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会」のホームページか、患者団体「サルコイドーシス友の会」が参考になります。
肺サルコイドーシスの治療方針は、非乾酪性肉芽腫性病変部位が肺組織との位置関係において,肺組織とは直接の浸潤を認めず、結節性病変としてあるのか、それとも肺組織の実質内に存在し実質性肺疾患となっているのかによって治療方針が異なります。

結節性病変は、原則的に治療の適応とはなりません。実質性肺疾患は、気管内にも肉芽腫性病変を有し、閉塞性肺障害も合併しているため、進行性難治症例として治療の適応となります。

治療としては、プレドニン(5 mg)を12錠/3×で4週間、以後2週間ごとに10%ずつ減量していきます。または、ステロイドパルス療法を行います。ステロイド抵抗性の症例に対しての免疫抑制薬としては、シクロホスファミド、アザチオプリン、が併用されますが、標準化されてはいません(保険適用外)。

ただ、ステロイドには副作用もあり、自己判断で急に減量すると病気が再燃したり、離脱症状(発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、筋・関節痛など)が発現することもあります。

治療の判断は難しいかと思われますが、主治医と相談の上、ご自身の症状や検査結果などと照らし合わせながら、どのような治療を行うべきなのか決められることが望ましいと考えられます。

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