家屋の密閉化によるほこりアレルギーなどで、風邪や花粉の季節以外でも鼻がつまり、口で息をする人を見かける。呼吸は鼻で行うのが正常で、口呼吸は咽頭炎や口臭の原因にもなる。いびきとも密接なだけに、健康な睡眠を続けるためにも「鼻呼吸」をしっかり確保したい。

「鼻腔には吸った空気に加温・加湿するエアコン機能や、粉塵を吸着するフィルター機能がある。乾燥は大敵で、健康なときも実は左右交互に粘膜が数時間ずつ充血して鼻閉、つまり鼻づまりを起こし気流を止めている」と話すのは、東京・神田の山根耳鼻咽喉科院長、山根雅昭さん(61)。

「両側同時または片方だけの鼻閉が続くのが病的な鼻づまり。鼻中隔湾曲症など構造的なもの、慢性副鼻腔炎など粘膜が腫れるもの、腫瘍など器質的なものがある。風邪や花粉アレルギーは粘膜が腫れる鼻づまりでも季節性だが、ハウスダストによるアレルギー性鼻炎は通年で発症する」

鼻づまりで口呼吸になると、口の中が乾燥する。すると、「粘膜保護作用が低下して、ちょっと硬い食べ物でも傷付き、病原菌も増殖して、咽頭炎になりやすい。古い粘膜層が唾液で洗い流されず、カビが生じたり舌苔が増えたりして口臭の原因にもなる」。

睡眠時の口呼吸は、鼻づまりや鼻咽頭閉鎖、舌根の落ち込みによるいびきが原因だ。「鼻とのどを仕切る鼻咽頭が加齢や飲酒でたるむと、あおむけに寝たときに鼻側をふさいでしまう。二重あごの人は舌根が落ち込んで気道をふさぎがち」

◆テープやスプレーも
粘膜の腫れに多いのが、鼻腔内の気流を調節する下鼻甲介という軟骨を覆う粘膜が、腫れたままになる肥厚性鼻炎。治療はこの粘膜を焼いたり切除したりする。「私はラジオ波で焼く方法で、効果は1年半ほど続く」と山根さん。費用は片方で3割負担なら2700円。抗アレルギー薬を処方する場合もある。

市販の点鼻スプレーも粘膜の充血を鎮める即効性があるが、「長期間使うと粘膜が肥厚化することもあるので、注意が必要」。同じく鼻孔拡張テープは「呼吸が楽になったと自覚できる効果はある」。

不織布のテープにはさんだプラスチック板の反発力で外側から小鼻を広げるもので、「ブリーズライト」などがある。「とくに寝入りばなに、いびきをかく人には効果的。粘膜の腫れがひどい人は、薬を服用したうえでテープを張るといい」

◆筋トレで抑止
鼻咽頭閉鎖や舌根落ち込みを抑止する簡単な筋肉トレーニングもある。「鼻咽頭は、軟口蓋つまり口の天井の奥を上と横に思い切り広げることで周囲の筋肉を鍛えられる。舌根はのど仏の上の舌骨についた筋肉を鍛える。舌を突き出して上下左右に動かしたり、左右にねじったりする。気が付いたとき1、2分行えばいい」という。

口呼吸は咽頭炎、口臭、いびきのほか、口の半開きによる表情のたるみ、集中力が続かない、などの弊害も指摘されるだけに、山根さんは「しっかりした対策や治療を」と呼びかける。
(弊害多い「口呼吸」 咽頭炎や口臭の原因)


鼻腔には、甲介とよばれるヒダがあり、3段の棚のようになっています。この構造の存在により、表面積が広くなり、吸気が通過する際に
・加温(鼻粘膜の海綿静脈叢の効果による)
・加湿(気道から蒸泄する水分の約1/2)
・除塵(塵埃の45%を除くといわれる)
の効果があります。

そのため、鼻呼吸ならこうした調節作用が働きますが、口呼吸の場合はこれらの作用は、ほとんどなくなってしまうわけです。逆に言えば、口呼吸だと乾いた冷たい空気がそのまま入ってきてしまい、塵埃などもそのまま吸い込んでしまうことになります。

結果、上記のように口の中が乾燥しやすく、細菌が繁殖しやすくなってしまい、口臭や虫歯、歯周病などの原因になってしまったり、(かぜなど)上気道炎の原因にもなると考えられます。

また、小児の口呼吸癖は顎成長に悪影響を与え、上顎前突、開咬の原因となり、さらに嚥下や発音時には舌突出させるため、歯列不正がより悪化するとも考えられます。将来的には、睡眠時無呼吸症候群の素因や口腔乾燥による歯周疾患の増悪因子となりうるわけです。

花粉症の季節では、どうしても鼻閉(鼻づまり)が起こってしまいがちです。この鼻閉の治療法としては、以下のようなものがあります。
薬物療法としては、抗ヒスタミン薬化学伝達物質の一つであるヒスタミンの作用を遮断します。鼻炎を初め、多くの症状を軽減できるといわれています。

また、抗アレルギー薬(メディエータ遊離抑制薬)は、I型アレルギー反応における肥満細胞よりのケミカルメディエータ遊離を抑制し、症状の出現を予防します。DSCG(局所投与)、トラニラスト、ケトチフェン、アゼラスチン(経口投与)などがあります。DSCGは鼻炎には鼻粘膜に粉末散布、液噴霧などを行い、眼症状には点眼します。経口剤は両症状に用います。

さらに、症状に応じて、くしゃみ・鼻漏型では、生活にあまり支障がない程度の軽症例では、第2世代抗ヒスタミン薬でよく、生活の支障が中程度の例では鼻噴霧用ステロイド剤と第2世代抗ヒスタミン薬を併用します。

鼻閉の強い症例には、点鼻用血管収縮薬を使用後に鼻噴霧用ステロイド剤を用いるとよいといわれています。ただ、点鼻用血管収縮薬は1週間程度にとどめ、薬剤性鼻炎に考慮します。

さらに、不可逆的粘膜肥厚に対しは、粘膜切除術が行われたりします。また、レーザー手術などは外来での施行も可能です。下鼻甲介粘膜切除術、粘膜下下鼻甲介切除術、レーザー焼灼術などが行われています。

「たかが花粉症」といわず、しっかりと耳鼻咽喉科などで診察や検査を受けられることが望まれます。

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