読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
以前から年に2、3回、膀胱炎にかかり、6年前に交通事故で脊髄を傷めてからは尿が出にくくなりました。最近、排尿中に尿が急に止まることがあり、膀胱結石と言われました。(36歳男性)

この相談に対して、独協医大越谷病院泌尿器科教授の岡田弘先生は以下のようにお答えになっています。
膀胱結石は、その名の通り膀胱にできた石です。日本を含む先進国では、結石ができる場所は尿路全体の中で膀胱が5%です。残る95%が腎臓や尿管で占められるのと比べれば、ずっと少ないといわれています。

そもそも尿は膀胱で一時的にためられ、150〜300mLほどたまると尿意を感じて体外に排出されます。もし、排尿がすんなりといかず、尿が膀胱にたまっている状態が長時間続くと、結石の引き金になると考えられています。

例えば、質問者のように、脊髄損傷で排尿が困難になり、膀胱炎を繰り返していると、結石の成分となる尿中のカルシウムなどが固まり、結石ができるのです。同じように、排尿が困難になる糖尿病や、前立腺肥大症の患者さんにも多くみられます。

尿路結石とは、その名の通り、「尿路(腎,尿管,膀胱,尿道)に結石のある状態」を指します。ちなみに、腎・尿管結石を上部尿路結石、膀胱・尿道結石を下部尿路結石と呼びます。

生涯罹患率は10人に1人程度といわれ、増加しつつあるようです。5年再発率は約40%であり、繰り返しやすいのも特徴です。20〜50歳代が大半を占め、男女比は 2〜3:1です(下部尿路結石では、6:1と圧倒的に男性に多い)。

結石の種類としては、シュウ酸カルシウム結石のほか、シスチン結石や尿酸結石(両者ともX線透過性)、尿路感染で形成されやすいリン酸マグネシウムアンモニウム結石、リン酸カルシウム結石(遠位型尿細管性アシドーシスの存在を疑う)などがあります。

原因としては、上記のような生活習慣や基礎疾患の存在(原発性上皮小体機能亢進症、ビタミンD中毒、長期臥床、クッシング症候群など)があります。また、尿酸結石などの場合、高尿酸尿症、痛風、白血病などが原因となります。

特に、膀胱結石の場合、前立腺肥大症、前立腺癌、膀胱頸部硬化症、尿道狭窄などの排尿障害を来す男子高齢患者に多く認められ、残尿と感染が結石形成の大きな要因となります。膀胱憩室、神経因性膀胱、カテーテル長期留置などで引き起こされた尿路感染症では、リン酸マグネシウムアンモニウム結石を形成します。上記のケースでは、脊髄損傷による排尿障害が原委任となっていたようです。

症状は排尿時痛、血尿、排尿障害などがあります。膀胱結石の内尿道口閉塞や尿道結石では、尿閉となります。診断は超音波検査、KUB(腹部単純撮影)、尿道膀胱鏡で行います。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療は、結石が大きい場合には開腹手術が行われます。しかし、小さければ、尿道から膀胱に向けて細い内視鏡を挿入して、正常組織への影響が少ない特殊な波長を持つ「ホルミウム・レーザー」を先端から照射して結石を砕きます。破片は尿とともに排出されます。この場合の入院は、2、3日と短期間ですみます。

ただ、せっかく治療しても、また結石ができることがあります。その予防のためには、日常生活で排尿を我慢せず、膀胱に長時間尿をためすぎないようにしてください。そして何より、排尿が困難になる最初の原因を作った病気を、専門の医師に診療してもらうことが肝心です。

結石が尿道内に嵌頓し尿閉状態になれば、緊急に解除する必要があります。尿道カテーテルや尿道鏡で膀胱内に押し戻し、後日に砕石します。それまでは再度の嵌頓を予防するため、バルーンカテーテルを留置したりします。

上記のように、小結石は内視鏡で確認しながら、結石把持鉗子で摘出します。多くの結石は、レーザーやリトクラストなどで破砕した後に摘出します。

また、結石の除去のみではなく、原因となった疾患の治療が必要となります。排尿困難となった原因を、まずはしっかりと診療していただければ、と思われます。

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