世界的に見ても日本の若い女性は「痩せすぎ」――こんな研究結果が出された。「痩せ願望」があまりに強い結果らしいが、ことはそれだけでは収まらない。最近では痩せた妊婦が増え、そのせいで未熟児の出産率が高まっている。日本の未来を左右する大問題になりかねないのだ。

日本人女性の痩せすぎについて調査したのは、筑波大学大学院の曽根博仁教授が担当する研究チーム。BMI(ボディマス指数)と呼ばれる、世界共通の「肥満度」を示す指数に着目した。BMIは体重を身長(メートル)の2乗で割った数で、日本肥満学会は標準値を22としている。調査では、アメリカ、韓国の数値と比較した。

それによると、アメリカの男女性、日本男性、韓国男性は、10歳以降は成長と共にBMIも増えた。BMIの数値は6歳以降、年齢とともに増加するのが一般的だ。しかし、韓国女性は、18歳頃にBMIの増加が止まり、20代は横ばいだった。そんな中、日本女に限っては15歳ごろにBMIの増加が止まり、20代は年齢とともに減少に転じたという。つまり、日本の若い女性は世界的に見ても「痩せすぎ」ということだ。

痩せている方がよいという意識から、医学的に見て全然太っていない標準体型の女性がダイエットしてしまう……こうした女性が少なくないのでは、と見る曽根教授は「この結果は心配だ」と話す。

曽根教授によると、若い日本女性が「痩せすぎ」は以前から指摘されていた。しかし、世界的な傾向なのか、時代的な傾向なのか、詳細なデータはこれまでなかった。なお、この研究結果はアメリカの疫学誌「エピデミオロジー」の5月号に掲載予定だ。

しかも、こうした「痩せ願望」の影響が、若い妊婦にも及んでいるという。日本助産師会の市川香織さんは、「たしかにここ数年、痩せた妊婦さんは増えており、問題となっています」と明かす。妊婦が痩せている場合、2500グラム未満の「低出生体重児」を出産するリスクが高くなるからだ。

実際、「低出生体重児」は増加傾向にある。厚生労働省発表の人口動態統計によると、1990年の全出生数に対する低出生体重児は6.3%だったが、2004年には9.4%に上昇しているのだ。

市川さんによると、もともとBMIが低い女性が多いからだという。そのため、妊婦となった後も体重が思うように増えず、早産して低体重の新生児を出産する可能性が高くなる。低体重の新生児は将来太りやすく、生活習慣病にもかかりやすいとも指摘されている。もはや、母親だけでなく次世代的な問題となっている。

BMIが低い「痩せ型」の女性が多いことについて、市川さんはこう話す。

「原因はメディアが発するイメージが大いに関係しているでしょう。痩せたモデルさん、女優さんが賞賛されていますし、ファッションにしても細身がかっこいい――そんな風潮に、思春期の女の子たちはずっと晒されています」

さらに、食生活や生活習慣がよくないことも問題だ、と指摘、生活習慣の改善を強く訴えている。「食事を3食きちんととること、早寝早起きを心がけることが大事でしょう。朝食の欠食はいけません。妊婦になったからといって、急に変えられるものではありません。小さい頃からの習慣はそれほど大事です」

なお、こうした妊婦の「痩せ問題」に対して、厚生労働省では2006年2月1日、「妊産婦のための食生活指針」を発表。母子の健康を確保するための、正しい食習慣を確立するよう呼びかけている。
(未熟児の出産率上昇 女性の「痩せ願望」が原因)


一般的には、小さいままで生まれてきた赤ちゃんを未熟児と呼ばれますが、医学的には体重が少ない新生児を低出生体重児といい、出生時に体重が2,500g未満の新生児のことを言います。

低出生体重児は、その出生体重によりさらに以下のように分類されます。
・狭義の低出生体重児(Low birth weight infant:LBWI):出生体重2500g未満。
・極低出生体重児(Very low birth weight infant:VLBWI):出生体重1500g未満。
・超低出生体重児(Extremely low birth weight infant:ELBWI):出生体重1000g未満。

2,500g未満を総括して低出生体重児(low birth weight infant)といい、さらに分類して上記のようになるわけです。

新生児が生まれるまでの妊娠期間は、通常では37〜41週間であるといわれています(ゴロ合わせで、「皆よい子(37〜41週)」と覚えます)。妊娠期間が23週以下もしくは体重が400グラム未満の新生児は生存が難しいといわれています。胎内発育不全のない場合、出生体重1,000gの児の在胎期間は、日本人では妊娠27週にほぼ相当します。

低出生体重児の出産は子宮機能の低下により胎内で胎児を育てられず、胎児が一定の体重になる前に出産する早産や、不妊治療による双子や三つ子など、母体から受け取る栄養分の量が少ない多胎児を妊娠した妊婦にみられます。いずれも一般的に高齢出産といわれる妊婦に多いのが特徴です。また、上記のように過度な母胎の痩せ傾向も低栄養をきたし、低体重の子供となる要因と考えられます。

低出生体重児では、無呼吸発作が起こりやすくなります。20秒以上の呼吸停止、20秒未満でも徐脈やチアノーゼを伴う場合に無呼吸発作と診断します。早産児では無呼吸発作が起こりやすく、これは呼吸中枢の未熟性、化学受容体機能の未熟性に加え、REM睡眠が多くみられることが関与していると考えられます。

また、早産児はその発達の段階によって、刺激にうまく対処できずにストレスのサインを出すことがあります。指を広げるような動き、身体各部位の伸展を惹起したり、徐脈、無呼吸、大理石様皮膚などを示したり、自己制御ができているサインである手を口元に持ってきたり、驚いてもすぐに泣きやんだりなどのサインを示すことがあります。こうしたサインを見逃さずに対処することも必要です。

さらに、新生児仮死、呼吸窮迫症候群、動脈管開存症、低血糖、電解質異常などが生後数日間の間に起こることがあります。また、生後数日から数週間にかけて、慢性肺疾患、無呼吸発作、貧血、黄疸などが起こることがあります。免疫力も弱いため、重症の感染症にかかりやすくなります。また、未熟児網膜症(重症例では網膜剥離となり重度の視力障害を生じます)がみられることもあります。

故に、呼吸や感染症などの管理が上手くいかなかったことなどで生じる、後遺症を残さないことが重要な治療方針となります。

治療としては、以下のようなものがあります。
本来であれば胎内で過ごす時期を、早産低出生体重児は、胎内環境とは全く異なるNICUの中で過ごすことになります。人工的環境であるNICU内の過剰な刺激を減らし、一方では、発達に必要と思われる適度な刺激を与え、非常に未熟な中枢神経系の発達への悪影響をできるだけ避けようとすることが必要となります。

薄暗い静かな胎内環境に近づけるべく、モニターの同期音を消し、話し声も小さくし、昼夜の区別をしながらも室内を薄暗くすることが望ましいと考えられます。また、直接光の照射を避け、間接照明を行います。光を避けることでREM睡眠が確保され、大きな音を避けることで聴覚の正常な発達が促されることも考えられています。

加療としては、一般管理として吸引による分泌物除去、頭部位置の確認(屈曲を避ける)、皮膚温を中枢温度環境下限に保つ、腹臥位にして胃食道逆流を防ぐ、腹部膨満の回避、低濃度酸素投与を行うことが重要です。

呼吸状態の管理としては、テオフィリン製剤(初回4〜6mg/kg 維持量1日3〜5mg/kg 静注)やドプラム(0.2mg/kg/時 持続静注)などの薬剤を用います。nasal CPAP管理を行い、無呼吸発作の管理ができない場合には挿管・人工換気の適応となります。

妊娠しているときは、お子さんのことを考え、しっかりと栄養や体調管理に努めていただきたいと思われます。

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