読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、東京都立広尾病院小児科部長である原光彦先生は、以下のようにお答えになっています。
「肥満」とは、脂肪組織が過剰に蓄積した状態であるといえると思われます。一般的には、エネルギー出納のアンバランスによって、体に過剰な脂肪が蓄積した状態、ということができると思われます。
小児の肥満のほとんどは、エネルギーの過剰摂取などが原因の単純性肥満であるといわれています。一方、ホルモン異常や遺伝性、中枢神経疾患などが原因となる症候性肥満となることもあり、十分な鑑別が必要となります。また、単純性肥満の場合でも、小児期から高血圧、耐糖能異常、血清脂質異常、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などを合併する場合があります。
一般的に言って、ご両親が「自分は、太りやすい体質なんです」もしくは、「子どもは、特別に肥満しやすい体質」と仰る場合があります。たしかに、いわゆる「倹約遺伝子」をもつ人では、消費エネルギーが200〜300kcal少ないと言われていますが、食事内容などを聴くと,やはり摂取カロリーの過剰が判明することが多いようです。
こうした事柄を確認し、さっそく食事の改善や運動といった指導が始まるわけですが、肥満外来治療の現状として40%が脱落という現状があります。そこで、医療スタッフやご両親が協力し、たとえ悪化していても、リスタートするといったつもりで再び取り組むという姿勢が必要です。
ただ、こうした単純性肥満のほかに、ホルモン分泌などの異常により、肥満が起こっているケースがあります。こうした場合を症候性肥満と呼ぶわけです。症候性肥満はごく一部でありますが、ホルモン異常、遺伝性、中枢神経疾患に起因するものがあり、十分な鑑別が必要となります。
検査としては、血糖検査はインスリノーマ、糖尿病、Cushing症候群などの内分泌性肥満の診断に有用です。また、脂質検査は、甲状腺機能低下症などの内分泌性肥満の診断や、肥満に伴う合併症としての脂質代謝異常を診断する手がかりになります。
腎機能検査はBardet-Biedl(バーデット・ビードル)症候群やAlstroem(アルストレーム)症候群のような遺伝性肥満の診断に有用です。血中Ca測定により偽性副甲状腺機能低下症を鑑別できます。
内分泌機能検査としては、下垂体・甲状腺・副腎・性腺機能検査および基礎代謝などの検査があり、内分泌性・視床下部性肥満のスクリーニング検査として有用です。
画像検査としては、トルコ鞍X線検査は間脳腫瘍、空虚トルコ鞍(empty sella)症候群などの視床下部性肥満、骨X線検査はBardet-Biedl症候群などの遺伝性肥満の診断にそれぞれ有用です。さらに、CT・MRIも鑑別診断に頻用されています。
こうした検査を行った上で、それぞれの治療を開始していきます。上記のケースでは、以下のような治療方針が考えられます。
発育の様子をしっかりと確認し、小児科医と相談の上で経過をみていくことが現段階ではいいのではないか、とのことです。その上で、単純性肥満のことを考慮して、お子さんの食事に関して気を配ることが重要である、ということが言えると考えられます。
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肥満が思春期早発症に関連する?
生後6か月の男児の体重が12キロもあります。身長は平均的です。母乳と少量のミルクを飲ませていますが、体重ばかり増えてしまい心配です。(30歳女性)
この相談に対して、東京都立広尾病院小児科部長である原光彦先生は、以下のようにお答えになっています。
日本人の生後6か月の男児の平均身長は約68センチ、平均体重は約8キロです。質問では身長は平均的とのことですから、確かに体重が重いようです。
肥満には、肥満を引き起こす病気がない「単純性肥満」と、何らかの病気によって太ってしまう「症候性肥満」があります。
症候性肥満の場合、〈1〉髪の色が極端に薄い〈2〉性器の発育が悪い〈3〉手足に生まれつきの異常がある〈4〉筋肉の力が弱い〈5〉非常に毛深い――などの症状があります。
「肥満」とは、脂肪組織が過剰に蓄積した状態であるといえると思われます。一般的には、エネルギー出納のアンバランスによって、体に過剰な脂肪が蓄積した状態、ということができると思われます。
小児の肥満のほとんどは、エネルギーの過剰摂取などが原因の単純性肥満であるといわれています。一方、ホルモン異常や遺伝性、中枢神経疾患などが原因となる症候性肥満となることもあり、十分な鑑別が必要となります。また、単純性肥満の場合でも、小児期から高血圧、耐糖能異常、血清脂質異常、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などを合併する場合があります。
一般的に言って、ご両親が「自分は、太りやすい体質なんです」もしくは、「子どもは、特別に肥満しやすい体質」と仰る場合があります。たしかに、いわゆる「倹約遺伝子」をもつ人では、消費エネルギーが200〜300kcal少ないと言われていますが、食事内容などを聴くと,やはり摂取カロリーの過剰が判明することが多いようです。
こうした事柄を確認し、さっそく食事の改善や運動といった指導が始まるわけですが、肥満外来治療の現状として40%が脱落という現状があります。そこで、医療スタッフやご両親が協力し、たとえ悪化していても、リスタートするといったつもりで再び取り組むという姿勢が必要です。
ただ、こうした単純性肥満のほかに、ホルモン分泌などの異常により、肥満が起こっているケースがあります。こうした場合を症候性肥満と呼ぶわけです。症候性肥満はごく一部でありますが、ホルモン異常、遺伝性、中枢神経疾患に起因するものがあり、十分な鑑別が必要となります。
検査としては、血糖検査はインスリノーマ、糖尿病、Cushing症候群などの内分泌性肥満の診断に有用です。また、脂質検査は、甲状腺機能低下症などの内分泌性肥満の診断や、肥満に伴う合併症としての脂質代謝異常を診断する手がかりになります。
腎機能検査はBardet-Biedl(バーデット・ビードル)症候群やAlstroem(アルストレーム)症候群のような遺伝性肥満の診断に有用です。血中Ca測定により偽性副甲状腺機能低下症を鑑別できます。
内分泌機能検査としては、下垂体・甲状腺・副腎・性腺機能検査および基礎代謝などの検査があり、内分泌性・視床下部性肥満のスクリーニング検査として有用です。
画像検査としては、トルコ鞍X線検査は間脳腫瘍、空虚トルコ鞍(empty sella)症候群などの視床下部性肥満、骨X線検査はBardet-Biedl症候群などの遺伝性肥満の診断にそれぞれ有用です。さらに、CT・MRIも鑑別診断に頻用されています。
こうした検査を行った上で、それぞれの治療を開始していきます。上記のケースでは、以下のような治療方針が考えられます。
一般的に太り過ぎの乳幼児の大半は、単純性肥満です。生後6か月の時点で太り過ぎていても、歩けるようになる1歳を過ぎた頃から肥満は改善していきます。より肥満が進むことはあまりありません。
単純性肥満では特別なダイエットは必要ありません。〈1〉可能な限り母乳で育てる〈2〉果汁などの甘みの強い飲み物を安易に与えない〈3〉離乳食は和風の味付けにする――ことなどを意識しましょう。それほど、心配する必要はありません。
ただ、早産などではなく、ほぼ予定通りに生まれてきたお子さんが、出生時には体重が軽かったのに、生後、急激に太った場合は将来、肥満になってメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)になる危険が高いので、注意が必要です。
赤ちゃんの体は日々変化していきます。乳幼児健診を必ず受け、身長や体重を母子手帳の成長曲線のグラフに書き込んで、発育が正常かどうか小児科医に判断してもらいましょう。
発育の様子をしっかりと確認し、小児科医と相談の上で経過をみていくことが現段階ではいいのではないか、とのことです。その上で、単純性肥満のことを考慮して、お子さんの食事に関して気を配ることが重要である、ということが言えると考えられます。
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