読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
4歳の娘が手足口病にかかりました。保育園の登園や入浴は控えたほうがいいですか。また妊娠中の私に感染しても、胎児に影響はありませんか。(東京都30歳女性)

この質問に対して、以下のような回答が掲載されていました。
熱がなく、食欲もあるなら登園や入浴をしても構いません。発熱や食欲不振がある場合は、自宅で療養し、水分補給に努めてください。妊婦への悪影響はないと思われますが、主治医に相談しておくと安心できます。

手足口病とは、乳幼児や小児に多いウイルス感染症で、その名のとおり手のひら、足の裏、口の中を中心に水疱ができる病気です。発症しても症状が軽いのが特徴で、症状が現れない人もいます。一般的に発熱と水疱で始まり、のどの痛みのため食欲が低下することがありますが、ほとんどの場合1週間程度で自然に治ります。

原因となるウイルスは数種類あるため、一度治っても別のウイルスに感染して発症を繰り返すこともしばしばあります。どのウイルスにかかっても症状は同じです。ごくまれに髄膜炎、脳炎、心筋炎などを合併することがあるので、嘔吐(おうと)を繰り返す、意識の状態に異常が見られるなどの場合には注意が必要です。

感染経路は、経口、接触、飛沫などで、感染者の鼻・のどから出た分泌物や便を介して人から人へうつります。潜伏期間は2日から7日といわれていますが、3日が最も多いです。夏を中心(5月〜8月)に流行しますが、最近では冬に見られることも珍しくありません。この病気は予防するワクチンがないため、こまめなうがいと手洗いが何よりの予防策となります。ですから、外から帰ってきたときなどは、うがいと手洗いを必ず行うことが大切です。

手足口病は、エンテロウイルス属であるコクサッキーウイルスA10、A16やエンテロウイルス71型などに感染し、口腔内、手掌足底に水疱性発疹をつくる疾患です。ほかにもコクサッキーA5、コクサッキーA9、コクサッキーB1、コクサッキーB3などが原因として報告されていますが、コクサッキーA16、エンテロウィルス71がほとんどです。

主に夏季に流行し、好発年齢は4歳以下です。不顕性感染(特に症状が現れない)に終わることも多く、ほとんどの成人は感染していると考えられます。飛沫または経口感染します。

症状としては、4〜6日の潜伏期の後、発熱や口内痛、食欲低下をきたします。手足では手背、指間、足背、趾間、手掌や足底にも皮疹が出現することが特徴的です。顔面では両頬部、肘・膝・臀部にも同様の皮疹がみられます。数日〜1週間で痂皮化(かさぶたになる)します。

口腔粘膜には、紅暈を伴った浅い潰瘍がみられます。口内では口蓋、口腔粘膜、舌には小水疱、びらんを生じ、数日で治ります。口内疹は疼みが強いため、お子さんでは食欲不振になることもあります。

通常は全身症状はなく、あっても元気がなかったり、微熱があったりする程度ですが、まれに急に頭痛、嘔吐、高熱、痙攣、意識消失などの髄膜炎症状を呈したりすることもあります。また、不整脈・呼吸困難などの心臓循環器症状を呈する場合もあります。

合併症として、無菌性髄膜炎を伴うことがありますが、後遺症もなく予後は良好です。しかし、まれに脳炎を合併することがあり、特に最近ではマレーシア、台湾でエンテロウイルス71による手足口病が流行した際、脳炎を合併し死亡した症例が多く報告されています。

一般にエンテロウイルス71による手足口病は、コクサッキーA16をはじめとしたその他のエンテロウイルス属による場合に比べ、より高率に重篤な中枢神経系合併症を起こすといわれています。

診断は、手足に生じる特徴的な皮疹と、口腔内潰瘍よりできます。便、咽頭ぬぐい液、水疱内容よりウイルスの分離またはウイルス抗原をFA法(蛍光抗体法)にて検出できます。ペア血清による血中抗体価の上昇もみられます。

罹患時のケアとしては、以下のようなものがあります。
手足に水疱を見つけたときは、ほかの病気である場合もあるため、元気であってもかかりつけ医を受診してください。手足口病と診断されたら、まずは水分補給に努めます。刺激が少なく口当たりのいい乳幼児用イオン飲料水、果汁などを十分に与えましょう。

効果的な薬はないので、発熱や食欲不振がある場合は自宅での安静加療が必要です。熱がなく、食欲もある場合は日常生活を制限する必要はなく、登園や入浴、水泳などをしても構いません。手足口病が発生したからといって、必要以上に心配しないことが大切です。

まれに大人がかかることがありますが、特に合併症が起こるという報告はありません。また、ご質問の妊婦への感染ですが、過度な配慮は必要ないと思われます。でも、念のため主治医に相談しておくと安心できます。

ウイルスは症状が回復したあとも数週間は排泄されるので、感染している人の汚れた衣服の洗濯や、おしめを交換した場合は、その後のうがいと手洗いは必ず行いましょう。

治療としては、抗ウイルス薬など特異的なものはないため、発熱に対する解熱薬の投与や、口腔内の疼痛のため経口摂取が妨げられるような場合には、輸液をするなど対症的な治療のみとなります(口腔内の痛みに対し、刺激の少ないものを摂取させることが大切)。

お子さんの場合、出席停止期間に関しては、発疹が消失し全身状態が改善すれば登校可能となります。

成人以降でも、手足口病になることはあります。一般的には1〜2週で治癒し予後はよい疾患(ただ発症後、数週間は感染力をもつ)です。しっかりと休んでいただければ、と思われます。

【関連記事】
東原亜希さん 手足口病を発症していた

帯状疱疹 4回繰り返した38歳男性