以下は、ザ!世界仰天ニュースで扱われていた内容です。
東京都に生まれ育った菜穂子さん。自分の血液型は「A型」。その事を菜穂子さんも周りの人達も全く疑っていなかった。1996年、菜穂子さんは 20歳で結婚、間もなく妊娠。しかし、妊娠4か月目の定期検診の時、思いもしない事が。採血検査の結果、菜穂子さんの血液型は「判定出来ない」という。唾液による血液型判定を受けた結果、なんと「あなたの血液型は"ABモザイク"です」と告げられた。

ABモザイクとは、体の中に血液型の異なる2種類の赤血球が混在する突然変異で、その割合は数十万人に1人ともいう。菜穂子さんの場合、A型の血小板や血漿を輸血すれば、体内のAB型が反応。血が固まる「凝集」や、赤血球が破壊される「溶血」が起きる危険性が考えられた。医師には、念のため今後はAB型だけを輸血するよう言われた。

血液型とは、一般的には赤血球膜上の抗原特異性によってヒトの赤血球を分類するものです。広義にはABO型、Rh型など赤血球型のほかに、組織適合性抗原(HLA)として白血球抗原系や血小板抗原系、血漿蛋白質などの抗原系も含むことがあります。

ちなみに、赤血球の血液型は400種類以上発見されており、輸血副作用や血液型不適合妊娠による新生児溶血性疾患などに関連する赤血球型として考慮することもあります。

「モザイク」とは、1つの個体が、遺伝子型または染色体構成の異なる2種類以上の細胞群により形成されており、それらの細胞群が1個の接合体、つまり一対の親に由来する場合を指します。つまり、突然変異などで

一方、下記のように「それらの細胞群が、複数の異なった接合体に由来する場合」をキメラといいます。
しかし、菜穂子さんの血液型はこれで確定したわけではなかった。「ABモザイク」と診断されて9年後のある日、働いている会社に献血バスが来た。そこで菜穂子さんは、もう一度ちゃんと確かめようと献血をする事に。すると、結果は「A型」という診断。モザイクでなかったのか?しかしその1か月後、菜穂子さんに献血センターから再診の知らせが届いた。2006年12月、菜穂子さんは血液センターで再び血液を採取。その結果、菜穂子さんの血液型はモザイクではなく、「A/AB型キメラ」と判明した!!菜穂子さんが伝えられた「キメラ」とは?

実は、DNAを2種類持つ生命体を、生物学上「キメラ」と呼ぶ。「血液型キメラ」は、2つの血液型をもつ、という点で「モザイク」と一緒なものの、「モザイク」のように突然変異で発生するものではない。

どうしてこのような状態になるのか、その原因については、以下のように説明されていました。
母親のお腹にいる間に、別のDNAを持つ細胞が体の中に入り込み、そのまま胎内で成長。二つの血液型をもって生まれてきたのが「血液型キメラ」である。血液型キメラの原因には、二つのケースがある。

一つは、二卵性の双子の、片方の胎児の造血幹細胞が、もう片方の胎児に移動して混ざり生まれてくるケ-ス。もう一つは、本来二卵性の双子になるべき2つの受精卵が、胎内で融合して1つになり生まれてきたケース。

前者の方が起こりやすく、後者はより稀とされるが、双子でない菜穂子さんは後者と考えられた。こうした血液型キメラは、子供たちに遺伝するのか?赤十字医療センターで菜穂子さんと二人の子供の血液検査をしてもらった結果、二人の子供たちは通常のA型と判定。血液型キメラは遺伝していなかった。

血液型キメラは、実は骨髄移植後でも起こりえます。骨髄移植後の生体において、血液型が異なる宿主と移植片由来の血球が混ざり合っている状態も、血液型キメラ、と呼びます。

骨髄移植に際しては、血液型は必ずしも一致する必要がないために、こうしたことが起こりえるわけです。

血液型は、「単にA/B/O/ABの4種類」だけではなく、様々な種類があり、なおかつこのように混合の状態になる可能性があるわけです。上記のケースでは、妊娠を契機として知り得たようですが、あらかじめ知っておくことは、いざというときに治療を行う上で非常に重要なことであると考えられます。

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