以下は、ザ!世界仰天ニュースで取り上げられていた内容です。
2007年2月。イギリス東部のリンカーンに住むクリストファー・サンズ23歳。
彼は仲間とバンド活動をしていた。人気も上々で最近では大好きな音楽で生計が成り立つ目処も立ち始めた。だが、そんな彼を思いもよらぬ悪夢が襲う。あるとき、練習中にクリスが歌い始めようとすると、突然しゃっくりが。いつもなら水を飲めば止まるが、この日は一向に止まらない。そして夜になってもしゃっくりが止まる気配はない。

「一晩寝れば止まるだろう」と思ったのが、翌朝になっても止まらない。いろんな方法で止めようとするが、結局しゃっくりは止まらないまま数日が経過。さすがにこれほど続くと体に堪え、クリスは遂に病院を訪れた。しかし、クリスのような症例は初めてだと医者も首を捻るばかり。そして連続しゃっくりの影響は様々なところに出始めていた。久々にバンドの練習に行くと、見知らぬ男がクリスの代役となっていたのだ。落ち込むクリス。症状は悪化するばかり。

以前も、この話題に触れました。当時は15ヶ月ですが、それ以降も出続けているようです。

繰り返しになりますが、「ヒック、ヒック」という特徴的な音を生じる不快な減少であるしゃっくり。このしゃっくり(吃逆)とは、横隔膜、肋間筋など呼吸筋の攣縮により急速な吸気が起こり、一瞬遅れて声門が閉鎖される現象を指します(吸気が閉鎖している声門を急激に通過するために特有の音を発生するわけです)。発症は、呼気の終わりや、呼気の始まる横隔膜の被刺激閾の最も高い時に生じます。

しゃっくり(吃逆)は、一過性のものと、長時間持続するものとに大別されます。一過性のものは機能的なものが多いですが、クリスさんのように長時間持続するものには器質的なもの、つまり何らかの疾患による場合が多いと考えられます。

持続性しゃっくりには、中枢性吃逆、末梢性吃逆、反射性しゃっくり(主に腹部疾患に伴い、横隔膜が刺激され反射性に生じる)、神経性しゃっくり(ヒステリー、神経衰弱などが原因となる)などがあります。

中枢性吃逆では、第3〜第5頸髄以上の中枢性病変によって呼吸中枢や横隔神経の脊髄中枢が刺激されて生じます。具体的には、脳血管障害や脳腫瘍、頭部外傷などで脳圧亢進が起こって生じている場合や、髄膜炎、脳炎、脳梅毒などが原因で炎症が起こっているケース、アルコール中毒、尿毒症、糖尿病性昏睡、敗血症、低血糖、アルカローシス、ショックなどで起こるケースがあります。

末梢性しゃっくりでは、横隔神経が直接刺激を受けて生じます。頸部では、頸部リンパ腫、甲状腺腫、縦隔では、肺門リンパ腫、縦隔腫瘍、縦隔炎、食道癌、縦隔術後、胸膜では胸膜炎、肺では肺炎、肺膿瘍、横隔膜では、食道裂孔ヘルニア、心血管では、心筋梗塞、動脈瘤、心膜炎などが原因となります。

クリスさんの場合、脳、胸、腹部をCTスキャンにかけるなど精査を行っていますが、原因が分かりませんでした。結果、ずっとしゃっくりは続いていました。
食事もうまく取れず、苦労して胃に押し込んでも突き上げるしゃっくりですぐに戻してしまうことが多く、ひどい胸やけに苦しんだ。呼吸困難に陥ることもあり、常に死と隣り合わせ。それなのに病院での検査結果は「はっきりとした原因が分からない」と言うもの。

どうにかしゃっくりを止めたいクリスは、ブログを開設し、有益なアドバイスを求めるという行動に出たが、それでも効果は得られなかった。このままでは本当に死んでしまう…。そんな時、医者からある提案をされた。
その提案とは、以下のようなものでした。
その提案というのは、胃−食道での逆流を防ぐため、胃−食道接合部を形成し、逆流防止手術を行うというもの。ですが、しゃっくりを止める根本的な治療ではありません。

「少しでも症状が軽減されれば…」と思い、手術を受けたクリスさん。食事は出来るようになりました。ところが、しゃっくりは現在も出続けています。

持続するしゃっくりの場合、薬剤の投与を行い、ジアゼパム、メトクロプラミド、フェノバルビタールなどの注射を行います。他にも、硫酸アトロピンを皮下注したり、二硝酸イソソルビドを舌下投与したりします。

これらの方法でも効果がなく、長期に持続する時は、場合によっては外科的手術により、横隔膜神経の切断が行われることもあります。

横隔膜は、腹式呼吸時に用いられ、収縮すると空気を吸い込む作用があります。横隔膜の運動神経は一対の横隔膜神経で、肺門の前方を下降して、左右の横隔膜に分布します。

横隔膜神経の麻痺や損傷において、片側性では無症状のことが多く、胸部X線写真で麻痺側の横隔膜挙上をみることがあります。呼吸による横隔膜運動は消失しています。両側性では、呼吸困難、特に仰臥位で増強する呼吸困難が特徴的で、横隔膜の奇異性運動などがみられます(両側の横隔麻痺では、肺胞換気量が維持できず人工呼吸が必要となる)。

原因が分からないという以上、根本治療の方策もとりづらいと考えられます。一刻も早く、治療法がみつかることが望まれます。

【関連記事】
呼吸困難に陥った男性、自ら気管切開を行う

脊柱側湾症の少女−夢をかけて手術へ