以下は、ザ!世界仰天ニュースで取り上げられていた内容です。

1993年2月。イギリス・スコットランドのエディンバラで当時22歳のゲイル・ポーターはテレビ制作会社に勤務していた。彼女はいつかテレビ司会者になりたいという夢を抱き、取材したテープをテレビ局に送り、自分も売り込んでいった。1997年にゲイルは子供番組のアシスタントとしてキャリアをスタート。名前はそこそこ知られ始めるもアシスタント的な出演ばかりでメジャーになれないまま2年が過ぎた。

そんなある日、CM出演のオファーが舞い込んできた。企画書を読んだゲイルは驚いた。それはひとつ間違えば世の中からヒンシュクをかい、タレント生命さえ失いかねない過激なもの。しかしゲイルはこれに勝負をかけた。それはイギリスの国会議事堂の壁面を利用した男性向け雑誌のキャンペーン広告だった。そこでゲイルは大胆な裸体を披露したのだった。マスコミにも大きく取り上げられ、多数の番組からの出演オファーが殺到。彼女はついにメイン司会の番組を持つことに。

ゲイル・ポーターさんは、夢に向かってひたむきに努力を重ねる一方で、自分に自信が無く、ナイーブな内面をもつ女性だったようです。その努力は、執念ともいえる確固たる意思に支えられ、一種、病的ともいえるものだったようです。
一方でゲイルがセクシーさを売りに物にしていると中傷する声も多かった。せっかくつかんだ成功を失ってしまうという強迫観念にとり付かれ、美しさを求め、激しいダイエットを始めたゲイル。やがて彼女は拒食症に陥ってしまう。そんな時、ゲストで来たミュージシャンのダン・ヒップグレイヴと恋に落ち、2001年結婚。その後妊娠し、身ごもったことで彼女は深刻だった拒食が嘘のようになくなった。しかし妊娠したゲイルを心配してくれないダン。無事娘ハニーを出産しするも、子育てがプレッシャーとなり、産後うつ病に。その後結婚生活も破綻。それでも再びテレビ界で活躍を始めた。

妊娠期は精神障害の新たな発症や、増悪が少ないといわれています。妊娠や出産に関して病的とはいえない程度に不安になることと、つわりの時期に情緒不安定になることを除けば、妊娠期は精神状態が比較的安定している時期であるといわれています。

ただ、少ないとされる妊娠期の精神障害のなかでは、うつ病が最も多く起こりやすいです。妊娠うつ病(妊娠期に発症したうつ病)の好発時期は、つわりの時期にあたる妊娠初期4ヶ月間となっています。

また、出産後は精神障害が起こりやすいといわれてます。特に、出産直後の産褥期(産後約6〜8週まで)に多いです。産褥期の精神障害の発症には、産後の女性ホルモンの変化に加え、脳内モノアミン、甲状腺ホルモンなども関与しています。その他、性格や環境面の要因として、初産婦、神経質・未熟な性格傾向、夫のサポートの乏しさなどがあげられます

産後うつ病は、出産後2週間から5週間以内の発症が多いといわれています。症状は、抑うつ気分、集中力・意欲の低下(「家事や育児ができない」などといった意欲低下がみられる)、不眠、食欲の低下、頭痛などの身体症状、希死念慮などがあります。

重症では、うつ病独特の妄想をもつこともあります。たとえば「母親として失格の駄目な人間だ」、「(子供のささいな症状を)大変な病気になった」などと思い込むといった症状がみられます。

こうした症状が見られ、以下のような状態にゲイルさんは陥っていったようです。
この頃から気分が沈む日があり、病院で診察を受けると、躁鬱病と告げられる。ソウ状態の時は早朝から家中を掃除したり、うつ状態になると自傷を繰り返した。

そんなある日の朝、取材先のホテルで異変が起こる。目覚めたゲイルは、鏡の中の自分と対面し、愕然とした。頭髪が全て抜け落ち、眉毛やその他の体毛も全て抜けてしまっていた。

すぐさま帰国し、病院で診察を受けた。ところが、詳しい原因や、根本的な治療法はなかった。そこで、しばらくはウィッグやメイクでテレビ出演を続けた。

「こんな状態が、一体いつまで続くのだろう…」そう思い、絶望的な気持ちに陥ったゲイルは、死を選ぼうとした。バスルームで、剃刀をもった手に力を込めた。ところが、そのときに娘が入ってきた。

「こんな姿のママを、好きなはずがないわよね…」そう呟いたゲイル。娘は、疑いの一切無い瞳で「そのままのママが好き」と答えた。それ以後、ゲイルはカツラを捨て、そのままの姿で街中はおろか、テレビ出演を行い続けている。

脱毛症とは、毛髪が異常に脱落する状態だけでなく、毛は抜けないが毛の質や太さ、色調などが変化し、毛がまばらに見える状態も含まれます。分類としては、先天性か後天性か、誰にでも起こるものか病的なものか、他病の一症状かどうかなどによって分けられます。代表的なものには、円形脱毛症や男性型(壮年性)脱毛症があります。

円形脱毛症は、前駆症状がなく突然に境界明瞭な脱毛斑を生じる疾患です。その数と病変の広がりによって、限局性の円形脱毛巣が生じる単発性ないし多発性通常型、頭髪の生え際が脱毛するophiasis型、頭髪全体が脱毛する全頭型、全身脱毛の汎発型に分類されます。小さな単発の円形脱毛斑のみの軽症例から、脱毛斑が全頭部に拡大し、さらに全身の体毛も脱毛する重症例まであります。

ゲイルさんのケースでは、全身脱毛の「汎発型」に分類されると考えられます。

どの年代でも発症しますが、その半数が30歳までに発症し、1/4が15歳以下で発症するとされます。就学前の幼児に発症することもあり、男女間に性差はありません。約20%の家族内発生があり、一卵性双生児では2人とも発症する確率が高いといわれています。本症になりやすく重症化と関連する、HLAタイピングの存在も知られます。

病巣部では、成長期毛球部にCD4陽性T細胞の浸潤や、免疫グロブリンの沈着がみられるため、自己免疫の関与が考えられます。また、甲状腺疾患、尋常性白斑、悪性貧血、糖尿病、Addison病、潰瘍性大腸炎など自己免疫性と考えられる疾患にかなり高率に合併するといわれています。

小児の半数では、アトピー性皮膚炎の合併がみられます。家族内発生は10〜20%にみられ、こうした場合アトピー素因と円形脱毛症の合併も注目されています。特に汎発型では、アトピー性皮膚炎の合併率が高いといわれています。

治療としては、単発性通常型や多発性でも数か所に止まるものは自然治癒することもありますが、全頭型、汎発型では難治であり、治療に抵抗することが多いといわれています。その場合、外用療法はほとんど無効であり、液体窒素療法や局所免疫療法である程度の有効性が得られるといわれています。

外用療法としては、塩化カルプロニウム(フロジン)や 副腎皮質ホルモン剤であるフルオシノニド(シマロン、トプシム)の軟膏やローションが処方されたりします。小範囲例は数ヶ月ほどで自然治癒するので、こうしたステロイド外用などで経過をみることが多いようです。ただし、効果のないまま外用を継続するべきではないと考えられます。

広範囲で半年〜1年以上の難治例には、局所免疫療法を開始します。これは、SADBE(squaric acid dibutyl ester)もしくはDPCP(diphenylcyclopropenone)を試薬として購入し、院内製剤として用います(保険適用外)。

方法としては、まず脱毛部において1%濃度で感作させます。1〜2週間後に濃度別に0.00001%、0.0001%、0.001%の3種類でパッチテストを行い、紅斑反応の起こった濃度の1つ薄いもの、または0.00001%の濃度のものから1〜2週間ごとに脱毛部に外用します。少しでも紅斑反応が生じている場合、あるいは紅斑がなくても発毛がある場合では、その濃度の外用を継続します。紅斑反応、発毛がなくなれば、少しずつ濃度を上げていきます。

内服療法としては、セファランチンや、グリチロンなどの内服を行います。また、全頭型など難治例では、ステロイドホルモン薬の内服である程度の効果が得られるといわれています。ただ、上記のようにステロイド内服には副作用(上記のようにムーンフェイスや、免疫抑制作用、小児であれば成長抑制など)があります。急速進行例やほかの治療法が無効な症例を対象とし、長期の内服による副作用に注意しなければなりません。

上記のケースでは、外見の変化によって、繕い続けて疲弊しきっていた彼女の精神を緩めることに結果としてなったようです。現在、躁うつ病の症状に悩まされることも改善されたようです。

疾患も、自分自身、そして周囲の受け止め方一つのようなところがある、といったところもあるようですね。

【関連記事】
円形脱毛症とステロイド内服治療

脱毛症の診断や治療について−女性にも起こりうる脱毛症