読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
昨年末より痛風で両足がはれて歩けません。医師からは飲酒が原因と言われました。どう対処すればいいでしょうか。(60歳男性)

この相談に対して、帝京大病院教授の藤森新先生は、以下のようにお答えになっています。
痛風はレバーや肉、魚介類などを好んで食べ、毎日、適量を超えてお酒を飲み続ける肥満傾向の成人男性に多い病気です。ビールが天敵とされていますが、それ以外のお酒でも飲み過ぎると危険度は同じです。

このような食生活を続けている人では、血液中の尿酸濃度が一定限度を超えた「高尿酸血症」がみられます。「風が吹いても痛い」と形容されるほどの激痛が関節に表れる痛風発作は、血液中に溶けきれずに関節内に漏れ出た尿酸の結晶が引き起こします。

発作は急性の関節炎で、足の関節、特に親指の付け根によく起こります。通常は1か所の関節に限られ、特別な治療をしなくても数日で治まってしまうなどの特徴があります。しかし、幾度となく発作を繰り返していると、複数の関節に同時に起こったり、治るのに長期間を要するようになったりします。

痛風は、持続する高尿酸血症(血清尿酸値 7.0mg/dl 以上)に起因した尿酸塩結晶の体組織への沈着症と定義されます。

体内に尿酸が蓄積すると、いろいろの場所に結晶として析出します。結晶は、皮下結節を生じたり、腎障害の原因となるほかに、上記のように関節炎の誘因となります。このように、体内の尿酸蓄積を基礎に生じた尿酸結晶が、急性の関節炎を引き起こす状態を痛風と呼び、その関節炎発作を痛風発作といいます。

特有な急性関節炎(痛風関節炎と呼ばれ、下肢の関節、特に親指の付け根である第一中足趾節関節に好発する単関節炎)の反復が特徴的であり、このような痛風関節炎、痛風結節(進行例では関節部をはじめとして、耳介などの軟骨、骨端部、皮下組織などに痛風結節が形成され、白色の腫脹をきたす)、尿路結石、腎機能障害などの尿酸沈着が関係する症状のほかに、痛風では高血圧や高脂血症、耐糖能異常などの合併が高率であるといわれています。

いわゆる「贅沢病」などといわれるように、背景にはメタボリックシンドロームの関与が推定されます。

病態としては、尿酸の過剰産生と腎からの排泄低下の2タイプに大別されます。過剰産生型としては、遺伝性(プリン代謝酵素異常症、糖原病)、核酸代謝回転の亢進(血液疾患、乾癬)、ATP分解の亢進(飲酒、低酸素血症)、プリン体過剰摂取などがあります。排泄低下型には、遺伝性のほか、低酸素血症、ケトアシドーシス、尿崩症、薬物(フロセミド,サイアザイド,シクロスポリンA)などがあります。

ちなみに、高プリン食と飲酒を禁じて行った時間クリアランス法で、尿酸クリアランス<6.2mL/分は排泄低下型、時間排泄量>0.51mg/kg/時は産生過剰型と診断され、治療法も変わってきます。

症状としては、初発は約90%の患者が単関節炎の形をとり、片側の第1趾中足趾骨関節(足の親指の付け根)の突然の激しい疼痛と腫脹で発症します(痛風発作)。症状は24時間以内にピークとなり、通常 1〜2週間で完全に消退します。

痛風関節炎は、過剰な尿酸が関節内に尿酸ナトリウム結晶として沈着することで引き起こされます。血清中で尿酸は7mg/dl程度で飽和状態に達し、それ以上では過飽和の状態で結晶化の可能性があるといわれています。

関節腔内の尿酸ナトリウム結晶は、補体や凝固因子を活性化し、滑膜細胞やマクロファージから炎症性サイトカイン(起炎物質による刺激で産生され、炎症反応を増幅、持続させ炎症反応の経過に影響を与える物質)が産生されます。

さらに、好中球が活性酸素や蛋白分解酵素などの炎症性メディエーター(発熱、発赤、腫脹、疼痛といった炎症症状の発現に関わる液性因子やサイトカイン)を産生し、尿酸結晶を貪食します。こうした炎症反応が起こり、関節炎、そしてその痛みが生じてくると考えられます。

男性の発症が女性の約20倍で、30歳代に多いといわれていました。ですが、上記のようにもしかしたら女性の罹患率も増えつつあるのではないか、と考えられます。男性は思春期以降上昇し、約20歳でピークとなり、女性では閉経以降に上昇します。

女性ホルモンに腎臓からの尿酸排泄を促進する作用があるため、女性では少ないといわれており、一般に、成人では男性が女性より尿酸値が1〜2mg/dl 高くなっています。こうした点から、女性は痛風になりにくいと考えられますが、現在の食生活の変化を考えると、そうも言ってはいられないと思われます。

治療としては、以下のようなものがあります。
尿酸は、細胞の核酸を構成する「プリン体」が体内で分解されて出来ます。そのため、プリン体を多く含む食品やビールを過剰に摂取すると高尿酸血症になり、それが長年続くと痛風が発症してくるのです。高脂血症、肥満、高血圧症、虚血性心疾患、脳血管障害などの生活習慣病の合併が多いことも問題になります。

尿酸値を下げる薬を常用して血液中の尿酸濃度を一定程度より低く保っていれば、痛風発作は起きません。しかし、薬に頼る前に、痛風になりやすい食生活の見直しや適度な運動を心がけることが大切です。
痛風関節炎を起こしていない無症候性高尿酸血症に対しては、「高尿酸血症・痛風治療のガイドライン」に従って、血清尿酸値が8mg/dLを超えるまでは生活指導に重点を置き、8mg/dL以上が持続する場合に腎障害や心血管障害などをきたしやすい合併症の有無を考慮して薬物療法の適用を考えます。

痛風関節炎を繰り返す症例には、発作を回避するために薬物療法が適用されます。痛風関節炎には速効性で、ボルタレンなどの鎮痛作用の強い非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を、できるかぎり速やかに投与します。投与量は常用量の2倍量とし短期間の使用に留め、痛みや炎症が引いた場合は中止します。コルヒチン(発作治療薬)は局所の違和感などをきたす痛風関節炎の前兆期に1〜2錠に限って使用されます。


高尿酸血症の治療としては、産生過剰型は尿酸生成抑制薬で、排泄低下型は尿酸排泄促進薬で治療するのが原則となります。薬物療法として尿酸排泄低下型と産生過剰型にそれぞれ尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン、プロベネシド)と尿酸合成阻害薬(アロプリノール)を投与します。

ただし、排泄低下型であっても尿路結石や中等度以上の腎機能障害を合併している場合は、尿酸生成抑制薬を使用します。血清尿酸値の推移を見ながら、1〜2ヶ月単位で増量し、血清尿酸値が6mg/dL以下にコントロールされる量を維持量として長期にわたって使用することになります。

もちろん、食事療法(プリン体制限食)を行うことはどちらにせよ重要になります。また、尿酸は酸性尿では溶解性が著しく低下して尿路結石を形成する可能性があるため、尿中尿酸排泄量を増加させる尿酸排泄促進薬を用いる場合は尿のpHを6〜7に維持するよう、尿アルカリ化薬を併用する必要があります。

まずは、ライフスタイルをしっかりと見直し、尿酸値降下を目的とした薬物療法のほかに、食事などを気をつけることが重要であると考えられます。

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