読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、昭和大横浜市北部病院泌尿器科教授の島田誠先生は、以下のようにお答えになっています。
子宮下垂(子宮ヘルニア)は、性器脱における骨盤底変形の一型を指します。子宮支持装置や骨盤底の筋肉、靭帯などによる子宮の支持が力学的に不安定になって子宮が腟内を下降する状態を指します。
特に、女性の骨盤内臓器(子宮、腟、膀胱、尿道、直腸、会陰)がその支持を失い、腟腔をおして下垂・脱出する現象を「性器脱」と呼び、そのうち子宮の脱出が著明なものを「子宮脱」と呼ぶこともあります。
通常は子宮のみが下垂することはまれで、前腟壁下垂(膀胱瘤)、ダグラス窩瘤、後腟壁下垂(直腸瘤)を伴うことが多いです。原因としては、分娩やエストロゲン欠乏による骨盤底筋群、筋膜、結合織の脆弱化が主立ったものであると考えられています。
膀胱や尿道は腟によってハンモック状に支えられており、子宮脱では腟の弛緩のため膀胱頸部の下垂や尿道の過可動をきたし尿失禁を招く恐れもあります。また、代表的な随伴症状は腹圧時の底の抜けたような骨盤底の不安定感、頸部の摩擦による出血などで、高度な子宮下垂ではしばしば尿管の屈曲による上部尿路閉塞が認められることもあります。
進行度は国際的にpelvic organ prolapse quantification(POP-Q)分類を使用することが多いようです。
このような分類を行い、Stage 1〜2程度で子宮下垂感、排尿・排便障害などの症状が軽度の場合は保存的療法が、Stage 2以上でQOL低下が認められる場合は手術療法が選択されます。
保存的治療に関しては、行動療法(時間排尿訓練、膀胱訓練、バイオフィードバック療法)、理学的療法(骨盤底筋群強化体操 Kegel訓練、薬物療法:ホルモン補充療法、アドレナリン作動薬)、ペッサリーによる矯正が行われます。
手術療法に関しては、以下のようなものがあります。
上部腟管に対する手術療法(子宮脱、小腸瘤、高位膀胱瘤・直腸瘤)として、腟式子宮全摘術に上部腟管支持の補強術式(McCall改良法、仙棘靱帯固定術、腸骨尾骨筋膜固定術、腟仙骨固定術など)を行ったりします。
子宮を温存する場合は、子宮頸部のみを切断し挙上するマンチェスター手術が施行されます。また、上記のように近年はポリプロピレンメッシュによる筋膜補強も有効であるといわれています。
どのような治療が良いのかは、状態や症状、ご自身の治療選択によります。まずはしっかりと婦人科専門医などに診ていただくことが重要ではないか、と考えられます。
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2ヶ月ほど前に子宮から丸いものが出て、婦人科で「子宮下垂」と診断されました。治療薬はないと言われました。毎日、暗い気持ちです。(60歳女性)
この相談に対して、昭和大横浜市北部病院泌尿器科教授の島田誠先生は、以下のようにお答えになっています。
膣を支えている筋肉や、じん帯が弱くなって膣が下がってきた状態を「性器脱」や「骨盤臓器脱」と呼びます。この中には、子宮の一部か全部が膣から飛び出す「子宮脱」や、飛び出さずに膣内にとどまる「子宮下垂」のほか、膀胱、直腸、小腸などが膣を押し出しているケースがあります。
治療には、膣の中にドーナツ状のリングを入れて膣を下支えする「リングペッサリー」と、手術の二つの方法があります。
リングペッサリーは、入れたままにしておくと、出血、びらん(ただれ)などが心配で、定期的に通院しながら、通常は2〜3か月ごとに洗浄し、交換する必要があります。可能なら、リングを昼間に入れておき、夜の就寝時には自分で外す「自己脱着」が理想です。
子宮下垂(子宮ヘルニア)は、性器脱における骨盤底変形の一型を指します。子宮支持装置や骨盤底の筋肉、靭帯などによる子宮の支持が力学的に不安定になって子宮が腟内を下降する状態を指します。
特に、女性の骨盤内臓器(子宮、腟、膀胱、尿道、直腸、会陰)がその支持を失い、腟腔をおして下垂・脱出する現象を「性器脱」と呼び、そのうち子宮の脱出が著明なものを「子宮脱」と呼ぶこともあります。
通常は子宮のみが下垂することはまれで、前腟壁下垂(膀胱瘤)、ダグラス窩瘤、後腟壁下垂(直腸瘤)を伴うことが多いです。原因としては、分娩やエストロゲン欠乏による骨盤底筋群、筋膜、結合織の脆弱化が主立ったものであると考えられています。
膀胱や尿道は腟によってハンモック状に支えられており、子宮脱では腟の弛緩のため膀胱頸部の下垂や尿道の過可動をきたし尿失禁を招く恐れもあります。また、代表的な随伴症状は腹圧時の底の抜けたような骨盤底の不安定感、頸部の摩擦による出血などで、高度な子宮下垂ではしばしば尿管の屈曲による上部尿路閉塞が認められることもあります。
進行度は国際的にpelvic organ prolapse quantification(POP-Q)分類を使用することが多いようです。
stage1:膣壁のもっとも下降している部分が処女膜輪より1cm以上上方にある。
stage2:膣壁のもっとも下降している部分が処女膜輪より1cm以上上方と1cm下方の間にある。
stage3:膣壁のもっとも下降している部分が処女膜輪より1cm以上下方にある。
stage4:後膣円蓋部が完全に脱出し、膣壁のもっとも下降している部分が(膣長-2)cm以上
このような分類を行い、Stage 1〜2程度で子宮下垂感、排尿・排便障害などの症状が軽度の場合は保存的療法が、Stage 2以上でQOL低下が認められる場合は手術療法が選択されます。
保存的治療に関しては、行動療法(時間排尿訓練、膀胱訓練、バイオフィードバック療法)、理学的療法(骨盤底筋群強化体操 Kegel訓練、薬物療法:ホルモン補充療法、アドレナリン作動薬)、ペッサリーによる矯正が行われます。
手術療法に関しては、以下のようなものがあります。
根本的な治療は手術しかありません。手術は子宮頸部を切って短くし、骨盤内の組織を縫って補強する「従来法」が一般的で、近年はポリプロピレン製のメッシュを使って膣壁と臓器の間を補強する「メッシュ法」も欧米で急速に広まっています。
従来法は異物を使わないため体に優しいのですが、再発が多いという難点があります。メッシュ法は多くの方で子宮を摘出しなくても済む上、ほとんど再発がありませんが、対応できる施設がまだ限られているほか、長期的な安全性など不明な点も残っています。
「骨盤臓器脱」を多く取り扱っている婦人科、または女性泌尿器科へご相談ください。
上部腟管に対する手術療法(子宮脱、小腸瘤、高位膀胱瘤・直腸瘤)として、腟式子宮全摘術に上部腟管支持の補強術式(McCall改良法、仙棘靱帯固定術、腸骨尾骨筋膜固定術、腟仙骨固定術など)を行ったりします。
子宮を温存する場合は、子宮頸部のみを切断し挙上するマンチェスター手術が施行されます。また、上記のように近年はポリプロピレンメッシュによる筋膜補強も有効であるといわれています。
どのような治療が良いのかは、状態や症状、ご自身の治療選択によります。まずはしっかりと婦人科専門医などに診ていただくことが重要ではないか、と考えられます。
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本当は怖い尿意の我慢−膀胱瘤