以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

整体治療院を営むY・K(58)さんは、食べること、飲むことが大好き。若い頃から毎晩のように飲み歩き、ラーメンでしめるという生活を続けた結果、30代半ばでポッコリお腹に。

50代に差しかかると、さすがに暴飲暴食をやめて、魚中心の食生活になります。しかし、55歳になったある日、左足に電気が走るような違和感を覚えます。見てみると親指の付け根が少し赤くなっていました。さらに翌朝、今まで経験したことのないような異変に襲われます。

具体的には、以下のような症状が見られていました。
1)親指の付け根がピリピリする
足の親指の付け根である部分が、ピリピリと痺れるような痛みがみられていました。
2)親指の付け根が赤くなる
親指の付け根がピリピリとしだして、その後しばらくしてその部分が赤くなって少し腫れていることに気がつきました。ですが、症状もピリピリとした痺れを感じるだけで、特になかったあまり気にすることなく、受診することもありませんでした。
3)キリで傷口をかき回されるような激しい痛み
親指の付け根が赤くなったその晩のことでした。Y・Kさんが寝ていると、痛みで目が覚めました。気づくと、足の親指にキリで傷口をかき回されるような激しい痛みを感じました。

こうした症状がみられたため、ようやく近医の外来を受診したY・Kさん。そこで痛みの症状、そして赤く腫れた親指、そして血液検査の結果をみた医師は、「痛風(発作)」ではないかと診断しました。

痛風は、持続する高尿酸血症(血清尿酸値 7.0mg/dl 以上)に起因した尿酸塩結晶の体組織への沈着症と定義されます。要は、血液中の「尿酸」が増えすぎてしまう「高尿酸血症」が原因で起きる疾患です。

体内に尿酸が蓄積すると、いろいろの場所に結晶として析出します。結晶は、皮下結節を生じたり、腎障害の原因となるほかに、上記のように関節炎の誘因となります。このように、体内の尿酸蓄積を基礎に生じた尿酸結晶が、急性の関節炎を引き起こす状態を痛風と呼び、その関節炎発作を痛風発作といいます。

特有な急性関節炎(痛風関節炎と呼ばれ、下肢の関節、特に親指の付け根である第一中足趾節関節に好発する単関節炎)の反復が特徴的であり、このような痛風関節炎、痛風結節(進行例では関節部をはじめとして、耳介などの軟骨、骨端部、皮下組織などに痛風結節が形成され、白色の腫脹をきたす)、尿路結石、腎機能障害などの尿酸沈着が関係する症状のほかに、痛風では高血圧や高脂血症、耐糖能異常などの合併が高率であるといわれています。

病態としては、尿酸の過剰産生と腎からの排泄低下の2タイプに大別されます。過剰産生型としては、遺伝性(プリン代謝酵素異常症、糖原病)、核酸代謝回転の亢進(血液疾患、乾癬)、ATP分解の亢進(飲酒、低酸素血症)、プリン体過剰摂取などがあります。排泄低下型には、遺伝性のほか、低酸素血症、ケトアシドーシス、尿崩症、薬物(フロセミド,サイアザイド,シクロスポリンA)などがあります。

ちなみに、高プリン食と飲酒を禁じて行った時間クリアランス法で、尿酸クリアランス<6.2mL/分は排泄低下型、時間排泄量>0.51mg/kg/時は産生過剰型と診断され、治療法も変わってきます。

症状としては、初発は約90%の患者が単関節炎の形をとり、片側の第1趾中足趾骨関節(足の親指の付け根)の突然の激しい疼痛と腫脹で発症します(痛風発作)。症状は24時間以内にピークとなり、通常 1〜2週間で完全に消退します。

痛風関節炎は、過剰な尿酸が関節内に尿酸ナトリウム結晶として沈着することで引き起こされます。血清中で尿酸は7mg/dl程度で飽和状態に達し、それ以上では過飽和の状態で結晶化の可能性があるといわれています。

関節腔内の尿酸ナトリウム結晶は、補体や凝固因子を活性化し、滑膜細胞やマクロファージから炎症性サイトカイン(起炎物質による刺激で産生され、炎症反応を増幅、持続させ炎症反応の経過に影響を与える物質)が産生されます。

さらに、好中球が活性酸素や蛋白分解酵素などの炎症性メディエーター(発熱、発赤、腫脹、疼痛といった炎症症状の発現に関わる液性因子やサイトカイン)を産生し、尿酸結晶を貪食します。こうした炎症反応が起こり、関節炎、そしてその痛みが生じてくると考えられます。

簡単に言ってしまえば、尿酸は、新陳代謝などの過程で必ず生まれるものですが、血液中に増えすぎると、主に足の関節などで結晶を作り始めます。そして、この結晶が剥がれた時に、白血球が敵とみなして攻撃するため、炎症を伴う激痛を引き起こしてしまう、というわけです。

男性の発症が女性の約20倍で、30歳代に多いといわれていました。ですが、上記のようにもしかしたら女性の罹患率も増えつつあるのではないか、と考えられます。男性は思春期以降上昇し、約20歳でピークとなり、女性では閉経以降に上昇します。

女性ホルモンに腎臓からの尿酸排泄を促進する作用があるため、女性では少ないといわれており、一般に、成人では男性が女性より尿酸値が1〜2mg/dl 高くなっています。こうした点から、女性は痛風になりにくいと考えられますが、現在の食生活の変化を考えると、そうも言ってはいられないと思われます。

Y・Kさんのケースでは、以下のようなことが原因となって痛風発作を引き起こされたと考えられます。
痛風は、「贅沢病」といわれる様に、その大きな原因は「食べ過ぎ」です。尿酸は、肝臓がプリン体という物質を分解して生成されます。プリン体は、主に体内で作られますが、多くの食品にも含まれています。そのため、食べ過ぎると、尿酸が過剰に生産され、尿による排泄が追いつかず、徐々に体内に蓄積されてしまうのです。
 
そして、Y・Kさんの場合、「飲み過ぎ」も病を助長していました。アルコールはその種類を問わず、尿酸が腎臓から尿へと排出されるのを妨げる物質を生み出すため、結果として体内の尿酸が増えてしまったのです。
 
また、50歳を越え、食事の量も酒の量も、以前に比べれば減っていたはずですが、内臓脂肪に痛風発作を起こした原因がありました。内臓脂肪は、悪玉アディポカインというホルモンを発生させます。このホルモンには、尿酸を作る肝臓の働きを活性化させる作用があるため、結果、血液中の尿酸が増加すると考えられています。

さらに、Y・Kさんは、もう一つの落とし穴にはまってしまいました。それは、魚のおかげで風邪もひかないし病気もしないと思い込んで、毎日のように魚料理を食べていたことです。実は魚介類は、「プリン体」を比較的多く含む食品。適量ならば健康に良い魚も、食べ過ぎれば逆効果となっていました。

治療としては、痛風関節炎を起こしていない無症候性高尿酸血症に対しては、「高尿酸血症・痛風治療のガイドライン」に従って、血清尿酸値が8mg/dLを超えるまでは生活指導に重点を置き、8mg/dL以上が持続する場合に腎障害や心血管障害などをきたしやすい合併症の有無を考慮して薬物療法の適用を考えます。

痛風関節炎を繰り返す症例には、発作を回避するために薬物療法が適用されます。痛風関節炎には速効性で、ボルタレンなどの鎮痛作用の強い非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を、できるかぎり速やかに投与します。投与量は常用量の2倍量とし短期間の使用に留め、痛みや炎症が引いた場合は中止します。コルヒチン(発作治療薬)は局所の違和感などをきたす痛風関節炎の前兆期に1〜2錠に限って使用されます。

高尿酸血症の治療としては、産生過剰型は尿酸生成抑制薬で、排泄低下型は尿酸排泄促進薬で治療するのが原則となります。薬物療法として尿酸排泄低下型と産生過剰型にそれぞれ尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン、プロベネシド)と尿酸合成阻害薬(アロプリノール)を投与します。

ただし、排泄低下型であっても尿路結石や中等度以上の腎機能障害を合併している場合は、尿酸生成抑制薬を使用します。血清尿酸値の推移を見ながら、1〜2ヶ月単位で増量し、血清尿酸値が6mg/dL以下にコントロールされる量を維持量として長期にわたって使用することになります。

もちろん、食事療法(プリン体制限食)を行うことはどちらにせよ重要になります。また、尿酸は酸性尿では溶解性が著しく低下して尿路結石を形成する可能性があるため、尿中尿酸排泄量を増加させる尿酸排泄促進薬を用いる場合は尿のpHを6〜7に維持するよう、尿アルカリ化薬を併用する必要があります。

食べ過ぎ飲み過ぎで「高尿酸血症」や「痛風」になっている人は、500万から600万人ともいわれています。かつては50代以降の男性に多い病でしたが、現在では若年化が進み、女性の患者も増加傾向にあります。

是非とも食生活を見直し、高尿酸血症などにはお気を付けください。

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