読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、帝京大溝口病院 産婦人科客員教授である川名 尚先生は、以下のようにお答えになっています。
陰部(性器)ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、2型(HSV-2)が陰部に感染して生じる感染症であり、多くは2型によります。
HSV-1は主として口腔粘膜に感染し、初感染の場合は歯肉口内炎や髄膜脳炎を、再活性化の場合は潜伏感染していた神経節の支配領域の皮膚にヘルペスを生じます(口唇ヘルペスなど)。HSV-2は主として性行為により感染し、再活性化により性器ヘルペスを起こします。
ただ、HSV-1、HSV-2の感染部位については、交差性があり絶対的なものではありません。すなわちHSV-1でも性器ヘルペスを起こしうるし、HSV-2でも口唇ヘルペスを起こしえます。HSV-1、HSV-2ともに不顕性感染が多いです。
感染機会後3〜7日くらいでHSV-1、HSV-2のどちらも原因となりますが、頻度としてはHSV-2のほうが多いです。性器や尿道に潰瘍を形成し、局所の疼痛、排尿痛、腟分泌液や尿道分泌液の増加が認められます。
初感染の場合には発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛などの全身症状を伴います。ウイルスは仙髄神経節に潜伏感染し、しばしば再発しますが、再発の頻度はHSV-1よりもHSV-2のほうが高いです。
初めての感染と再発とがあり、初感染のほうが症状は激しいです。感染を起こすと、外陰部は全体に発赤し、直径数ミリメートルの潰瘍が小陰唇から大陰唇、会陰部にかけて多発し、激しい疼痛を示します。
潰瘍は両側性が多いが片側性のこともあります。痛みのため排尿困難を呈することもあり、その場合は入院治療を要することもあります。また、鼠径部のリンパ節が腫脹し、痛みを訴える場合が多いです。
多くの場合は抗生物質を含む軟膏を塗っておくだけで水疱が2、3日で破れ、自然に乾いて痂皮となり、7〜10日で自然に治癒します。治癒後もウイルスは皮膚に潜在していることが多く、疲労、精神的ストレス、寒冷などのきっかけで再発を繰り返すことがあります。
治療としては、以下のようなものがあります。
特異的治療としては抗ウイルス薬のアシクロビル、ビダラビンが有効となります。通常、軽症例に対してはアシクロビル外用薬の局所投与もしくはアシクロビル経口薬の全身投与を、中等症以上の症例に対してはアシクロビル注射薬の全身投与を行います。髄膜炎、脳炎、全身感染症に対してはアシクロビルもしくはビダラビンを点滴静注します。
非特異的治療としては各種病態に応じた対症療法を行います。中等症以上で経口摂取が不能の症例に対して輸液療法を、歯肉口内炎に対しては消炎酵素薬の経口投与やうがいを行います。
カポジ水痘様発疹症に対しては非ステロイド系消炎外用薬の塗布および必要に応じて細菌二次感染に対する抗菌薬の投与行います。髄膜炎、脳炎に対しては抗けいれん薬の投与や脳浮腫の治療を、それぞれ実施します。
皮膚科や産婦人科などに受診し、しっかりと治療を行うことが重要であると考えられます。再発抑制のための治療も場合によっては行い、症状緩和に役立てることも可能と考えられます。
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2年ほど前に「性器ヘルペス」と診断され、時々、痛みやかゆみがあり、つらいです。原因や予防法を教えてください。(44歳女性)
この相談に対して、帝京大溝口病院 産婦人科客員教授である川名 尚先生は、以下のようにお答えになっています。
性器ヘルペスは、「単純ヘルペスウイルス」というウイルスに感染して発症する性感染症です。主に性交渉で感染し、性器や尻に小さい水ほうやおできができたり皮膚がただれたりするほか、痛みやかゆみも伴います。
感染したウイルスは、脊髄(せきずい)のそばにある「神経節」に潜伏します。残念ながらウイルスは体内に残り、消えません。発熱で体力が低下したり心身のストレスがあったりした時に、ウイルスが皮膚や粘膜に現れ、増殖し、再発します。
患者は、女性の方が多く男性の2倍です。月経や妊娠をきっかけに再発することも多いようです。再発予防は難しいですが、まずは、疲労を避け心身の健康を保つことが大切です。
陰部(性器)ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、2型(HSV-2)が陰部に感染して生じる感染症であり、多くは2型によります。
HSV-1は主として口腔粘膜に感染し、初感染の場合は歯肉口内炎や髄膜脳炎を、再活性化の場合は潜伏感染していた神経節の支配領域の皮膚にヘルペスを生じます(口唇ヘルペスなど)。HSV-2は主として性行為により感染し、再活性化により性器ヘルペスを起こします。
ただ、HSV-1、HSV-2の感染部位については、交差性があり絶対的なものではありません。すなわちHSV-1でも性器ヘルペスを起こしうるし、HSV-2でも口唇ヘルペスを起こしえます。HSV-1、HSV-2ともに不顕性感染が多いです。
感染機会後3〜7日くらいでHSV-1、HSV-2のどちらも原因となりますが、頻度としてはHSV-2のほうが多いです。性器や尿道に潰瘍を形成し、局所の疼痛、排尿痛、腟分泌液や尿道分泌液の増加が認められます。
初感染の場合には発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛などの全身症状を伴います。ウイルスは仙髄神経節に潜伏感染し、しばしば再発しますが、再発の頻度はHSV-1よりもHSV-2のほうが高いです。
初めての感染と再発とがあり、初感染のほうが症状は激しいです。感染を起こすと、外陰部は全体に発赤し、直径数ミリメートルの潰瘍が小陰唇から大陰唇、会陰部にかけて多発し、激しい疼痛を示します。
潰瘍は両側性が多いが片側性のこともあります。痛みのため排尿困難を呈することもあり、その場合は入院治療を要することもあります。また、鼠径部のリンパ節が腫脹し、痛みを訴える場合が多いです。
多くの場合は抗生物質を含む軟膏を塗っておくだけで水疱が2、3日で破れ、自然に乾いて痂皮となり、7〜10日で自然に治癒します。治癒後もウイルスは皮膚に潜在していることが多く、疲労、精神的ストレス、寒冷などのきっかけで再発を繰り返すことがあります。
治療としては、以下のようなものがあります。
症状を抑えるには、抗ウイルス薬の「アシクロビル」や「バラシクロビル」という飲み薬を服用します。症状が出る前には、神経の痛みや局所の違和感などの前兆が出ることがあり、そうした時に服用すると症状が軽くなります。
また、2ヶ月に1回以上と頻繁に再発を繰り返す場合は、バラシクロビルを毎日1錠、継続的に服用する「再発抑制療法」を行います。再発の7〜8割を抑えられ、再発した場合でも症状がそれほどひどくなりません。
また、皮膚や粘膜に現れるウイルス量も減少するので、パートナーへの感染を減らすことができます。保険が適用され、頻繁な再発に悩んでいる方にお薦めします。
特異的治療としては抗ウイルス薬のアシクロビル、ビダラビンが有効となります。通常、軽症例に対してはアシクロビル外用薬の局所投与もしくはアシクロビル経口薬の全身投与を、中等症以上の症例に対してはアシクロビル注射薬の全身投与を行います。髄膜炎、脳炎、全身感染症に対してはアシクロビルもしくはビダラビンを点滴静注します。
非特異的治療としては各種病態に応じた対症療法を行います。中等症以上で経口摂取が不能の症例に対して輸液療法を、歯肉口内炎に対しては消炎酵素薬の経口投与やうがいを行います。
カポジ水痘様発疹症に対しては非ステロイド系消炎外用薬の塗布および必要に応じて細菌二次感染に対する抗菌薬の投与行います。髄膜炎、脳炎に対しては抗けいれん薬の投与や脳浮腫の治療を、それぞれ実施します。
皮膚科や産婦人科などに受診し、しっかりと治療を行うことが重要であると考えられます。再発抑制のための治療も場合によっては行い、症状緩和に役立てることも可能と考えられます。
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