以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

とある地方都市に暮らすW・Sさん(21)は、大学受験を控え勉強に励んでいた時、突然鼻血が毎日のように続くようになりました。幼い頃から鼻血が出やすかった彼は、体質だから仕方ないと考えていましたが、やがて頭が重く、身体がだるいなどの症状にも襲われるように。その後、大学入学から半年後に、次々と異変が現れます。

具体的には、
1)鼻血
2)頭が重い
3)右目のかすみ
4)鼻づまり
5)右目が少し飛び出す
6)右目と右頬が大きく飛び出す
このような症状がみられるようになりました。そのため、病院を受診したW・Sさんは、「若年性鼻咽腔血管線維腫」と診断されました。

若年性鼻咽腔血管線維腫とは、思春期男子にみられる非上皮性良性腫瘍です。臨床的には、しばしば悪性として扱われます。上咽頭の側壁や、後鼻孔の後側壁から多く発生し、発症原因として性ホルモンとの関係が考えられていますが、詳細は不明です。

初発症状は、片側性の鼻閉、鼻出血として現れます。腫瘍が腫大すると、両側鼻閉、耳閉塞感、難聴、構音障害、嚥下障害などが出現してきます。

周囲組織に進展すると頬部腫脹、眼球突出などを生じます。増殖傾向が強く、頭蓋内へ進展することもあります。

ゆっくりと進行することが多い疾患ですが、時にW・Sさんのように3年で10 cmという驚異的なスピードで大きさを増すこともあります。そのまま放っておけば、腫瘍は頭蓋骨の底を突き破り、脳を圧迫し、意識障害などを引き起こし、生命に危険を及ぼすこともあります。

確定診断は生検によりますが、大出血の危険があるので、施行の際には万全の準備が必要となります。そのため、思春期男子の上咽頭に易出血性の腫瘍を発見したら、臨床的に本症と診断し、治療を開始する方法もあり、CT、MRIにより進展範囲や骨破壊の把握、血管造影により栄養血管の同定を行います。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療は、手術(経口蓋法、経上顎洞法など)による全摘出が第一選択で、腫瘍の状態に応じ放射線療法、ホルモン療法が試みられます。血管造影の時にあらかじめ塞栓術を行っておくと、手術時の出血量減少に有効となります。

番組では、「フェイシャルディスマスキング法」という方法がとられていました。これは、顔の3分の2もの皮膚を、顔面神経ごと剥がすという方法です。東京医科歯科大学頭頸部外科教授、岸本誠司先生は、元々形成外科で行われていたこの手術法を取り入れ、飛躍的に腫瘍摘出の可能性を向上させた、といわれています。

顔を大きく開くことで、顔の底にある大きな腫瘍を取り残すことなく、摘出することが可能な手術法。さらに顔面麻痺などの後遺症や、傷もほとんど残らないといいます。
 
2008年10月06日、ついに手術を受けることになったW・Sさん。まず形成外科チームがフェイシャルディスマスキング法で頭蓋骨を露出させることから始められました。

次に脳神経外科チームが、頭蓋骨の一部を取り外し、そこから脳に食い込んだ部分の腫瘍を摘出します。脳に食い込んでいた腫瘍は、およそ3 cm。血管や神経を傷つけないよう、電気メスで焼き切りながら、慎重に腫瘍をはがしていきます。そして、9時間もかけて、脳に食い込んだ部分の摘出が終了。

いよいよ岸本先生ら頭頸部外科チームによる、頭頸部の腫瘍摘出です。岸本先生が右頬骨と頭蓋底の一部を外すと、ソフトボールほどもある腫瘍の本体が現れました。腫瘍が骨にがっしりと食い込み、癒着部分にメスを入れることができないため、岸本先生は自らの指を使って腫瘍をはがしにかかりました。腫瘍が溶かしてしまった大きな隙間には、術後の感染に強いとされる腹部筋肉が移植されていました。

このような手術を行い、W・Sさんは治療を行っておりました。

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