英国に住むコリンズ(61)さんは2007年、病院で検査上、肝転移がみられた胆嚢癌が発見されたとし、長く持って6ヶ月しか生きられないという余命宣告を病院側から受けた。

トラック運転手で素朴に生きてきた彼はこの短い時間を大切に送ろうと妻と旅行したり、離別パーティーを開くなどして過ごした。また高価のバイクを購入したり、妻に自動車をプレゼントするなど家族と友人らに贈り物をしながら約260万円を越える金を使った。

しかしながら、6ヶ月が過ぎ2年が立っても彼に特別異常がなかった。そのためコリンズは先月再検査を受けたのだが、問題の部位は膿瘍であることが判明した。この検査結果にコリンズは「死なないという事実にうれしかったが、病院が下した誤診のためにあまりにも多くの損害を被った。目の前がまっ暗だ」と話したという。
(6か月の余命宣告も2年過ぎても何もなし!61歳男性が病院側を提訴へ!
Man told he had cancer sues NHS)


胆道の腫瘍は、肝外胆管に発生する腫瘍で、胆嚢、胆管および乳頭部腫瘍に分類されます。上記のケースでは、胆嚢癌と診断されたそうです。

胆嚢癌とは、胆嚢および胆嚢管に原発する癌を指します。胆嚢癌は高率に胆石を合併します。その頻度は欧米では80〜90%、日本では50〜70%と報告されています。胆石合併例では、高齢者ほど癌の発生が高頻度にみられ、化生上皮が母地となる可能性が示唆されています。

胆嚢癌に合併する胆石の多くはコレステロール胆石であり、胆石と胆嚢癌の因果関係については機械的刺激、胆汁の変化による胆嚢の炎症性変化などの説があります。

また、胆石のほかに胆嚢癌の発生頻度が高い病態として、膵胆管合流異常があります。胆管拡張がない合流異常では高率に胆嚢癌が発生するといわれています。膵胆管合流異常症の場合は比較的若年に発生し、膵液逆流による慢性的な化学刺激により、固有上皮が発生母地になると考えられています。

胆嚢癌の深達度は粘膜、固有筋層、漿膜下層、漿膜に分けられ、粘膜内または固有筋層内にとどまるものを早期癌と定義しています。

胆嚢癌の進展様式として、粘膜内進展(胆嚢管・胆管浸潤)、漿膜浸潤(胆嚢壁は粘膜筋板を欠くので容易に浸潤する)、胆嚢床部肝内直接浸潤,肝門浸潤・肝十二指腸間膜浸潤(間質浸潤、神経周囲浸潤)、リンパ節転移(肝十二指腸間膜内、膵頭後部、総肝動脈幹、大動脈周囲)、血行性転移(肝)、腹膜播種などが挙げられます。

胆嚢癌は、進行した状態で発見されることが多く、全身倦怠感、食欲不振、体重減少などの非特異的な症状がみられます。胆嚢癌では、上腹部痛、黄疸、腹部腫瘤を触知することがあります。胆石の症状で発症することもあります。

胆嚢癌、胆管癌ともに黄疸を認めることが多いです。胆嚢癌で腹部に腫瘤を触知することがあります。胆管癌では、胆嚢管起始部より下部の閉塞の場合、無痛性に胆嚢を触知することがあります。〔Courvoisier(クールボアジェ)徴候〕。

胆道癌の存在診断には、超音波検査、CT、MRI(MRCP)などの非侵襲的画像診断が用いられます。また、比較的早期の胆嚢癌では超音波内視鏡検査(EUS)による深達度診断が有用となっています。

胆嚢の層構造は、内側低エコー層では粘膜層(m)、固有筋層(mp)、漿膜下層浅層(ss-A;線維層)、外側高エコー層では漿膜下層深層(ss-B;脂肪層)、漿膜層(s)の2層構造となっています。

胆管癌では内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP:endoscopic retrograde cholangiography)や経皮経肝胆道造影(PTC:percutaneous transhepatic cholangiography)による直接胆道造影により進展範囲を正確に把握します。

特に、マルチスライスCT(MDCT)は胆嚢・胆管像のみならず血管像まで得られ、胆道癌の進展度診断に有用であるといわれています。

固有筋層(mp)、漿膜下層(SS)の確定診断は手術時または病理検索以外、ほぼ困難であるといわれています。

胆嚢癌の鑑別診断としては、腫瘤形成型では、胆嚢ポリープ、黄色肉芽腫性胆嚢炎、胆嚢腺腫、コレステロールポリープなどがあります。壁肥厚型では、慢性胆嚢炎、胆嚢腺筋症などがあり、胆嚢層構造変化をEUSで描出することにより鑑別可能となっています。

治療としては、以下のようなものがあります。
胆道癌では、外科的切除のみが根治的かつ有効な治療法となっています。胆嚢癌は、進展度により手術術式が異なり、また施設間でも治療方針の一致がみられていないような状態にあります。

早期胆嚢癌では、リンパ節転移や脈管侵襲がみられないので、単純胆嚢摘出術のみで根治し得ます。ですが、術前・術中の正確な深達度診断はしばしば困難となっています。

したがって、術前から胆嚢癌と診断された症例に対しては、一般に胆嚢摘出+胆嚢床切除+リンパ節郭清が行われます。さらに、肝十二指腸間膜浸潤、間膜内リンパ節転移、胆管浸潤に対して肝外胆管切除や膵頭十二指腸切除が、肝浸潤に対して広範肝切除(S4下+S5切除−拡大右葉切除)が付加されます。

肝転移、腹膜播種、遠隔転移、大動脈周囲リンパ節転移、肝十二指腸間膜高度浸潤、門脈・肝動脈高度浸潤を認める場合は、切除手術の適応となりません。上記のケースでも、肝転移が起こっていたようです。

切除不能例に対して放射線療法(体外照射,胆管腔内照射)や化学療法が行われていますが、長期生存は得られていないのが現状です。

閉塞性黄疸に対して胆道ステント留置を行う対処療法が行われても居ます。経皮経肝的(PTBDルート)または内視鏡的経乳頭的(ERCP)にプラスチックステントまたはメタリックステントを留置を行います。

上記のケースでは、どうして2年間も正しい診断が行われなかったのか不明ですが(もしかしたら通院しなくなってしまったのでしょうか)、誤診が与える影響というのはその患者さんにとって非常に大きなものである、というのはしっかりと認識する必要があると考えられます。

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