“So sick.”、“Because of You.”など数多くの曲を大ヒットさせ、その甘いメロディーと柔らかい歌声がとても故マイケル・ジャクソンに似ていると言われる、グラミー賞シンガーのNe-Yo。

16日、イギリス・マンチェスターでのコンサート中、彼が体調不調を訴え、歯を食いしばり涙をこぼすも、結局コンサート延期を誓ってステージを去るというアクシデントがあった。MENアリーナにて行われたNe-Yoのコンサートは、そもそも30分ほど遅れて始まり、2曲目が終わるころには彼の顔は脂汗でビッショリになっていた。

マイケルのために捧げる曲もあったというが、彼は4曲目で突然後ろを向いてしまい、その後は振り返るも顔の汗や涙を拭い始め、自分の不調に忌々しいとばかりに歯をくいしばって立っているだけ。

大勢の観客の“ニーヨ!ニーヨ!” という声援と手拍子にも関わらず、彼はマイクを持ち「これまでコンサートを中断するなんて、したこともないんだ。それなのに…」と自らへの憤りを隠せないといった表情。続いて、「このコンサートは必ずやり直すからね」と観客に約束し、舞台右に歩いて去った。

そしてその翌日である17日、彼は自身のブログで彼を応援してくれるファン、家族、そしてコンサートに来てくれたお客さんに、その夜のステージについて釈明をした。

“オレは基本的に、どこまでが自分の限界なのかが分からない人間なんだ。だけど、昨晩のマンチェスターでのオレの体はまさに悲鳴を上げていたんだ。もちろんステージには、フル・エナジーの状態で臨んだよ。でもここ5日間ほど、副鼻腔炎に悩まされていたんだ。”

“最初の曲あたりで、何かおかしいなって感じたんだ。そこでやめておくべきだった。でも4曲目で本当に声が出せない自分に気がついた。これまでショーの中断なんて経験一度もないし、そういうのは潔くないと思っていたんだ。でも実際全く歌えなくなって、12000人ものお客さんに、これ以上歌えませんと言うことになるとは夢にも思わなかった。苦しい決断だったよ。”

“もうとにかく泣けてきたんだ。これまでの人生であんなに泣いた日はない。あのステージを見たお客さんの目には、オレはガキかなんかのように見えただろうな。でもどうか、ここだけは分かって欲しいんだ。”

“この世界中の中の何よりも大切にし続けているあるものが、突然危険にさらされるとか、むしり取られるといった恐怖を想像してみて欲しいんだ。あの時がまさにそういう感覚だったんだ。でもそれによってオレはファンの皆さんをガッカリさせてしまい、その責任はすべて自分にあるんだ。”
(Ne-Yo、体調不良で歌えない!涙が止まらずコンサートを中断。)


副鼻腔とは、鼻腔をとり囲む骨の内部に発達した空洞で、鼻腔に通ずる開口部をもちます。副鼻腔には、上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞があります。

副鼻腔は、鼻腔の粘膜のつづきによって内面をおおわれていますが、粘膜は鼻腔よりも薄く、線毛も丈が低いという特徴があります。鼻腔と交通するため、内部に空気を含んでおり、鼻粘膜の炎症が起こると、そこから炎症が波及して副鼻腔炎をきたしやすいです。

急性副鼻腔炎は感冒、ウイルスによる急性鼻炎に続発することが多く、他に外傷、う歯などが原因となり得ます。慢性副鼻腔炎は、素因・体質(アレルギーなど)、局所的要因(アデノイド、鼻中隔彎曲、鼻甲介肥大など)が関与するとされています。

急性副鼻腔炎の起炎菌は、肺炎球菌やインフルエンザ菌であることが多いです。慢性副鼻腔炎の病態形成の背景には、微生物感染、解剖学的要因、アレルギーなどが関与し、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌のほかに、緑膿菌や変形菌なども検出されることがあります。

急性副鼻腔炎の症状としては、膿性鼻漏、鼻閉、嗅覚障害が主たる症状ですが、自然孔の閉塞が生ずると頬部痛、頭重感も強く訴えることがあります。Ne-Yoさんの場合、流涙がみられていたそうですが、これも副鼻腔炎による涙道閉塞が原因である可能性も考えられます。

また、副鼻腔炎の合併症としては、以下のようなものがあります。
そもそも、副鼻腔は解剖学的に眼窩、頭蓋底、歯牙、口蓋に隣接しており、急性・慢性炎症の急性増悪により、眼窩内合併症や頭蓋内合併症が起こることがあります。

眼窩蜂巣炎は幼少児の上顎洞炎・篩骨洞炎から起こりやすく、眼球突出、眼瞼や結膜浮腫などを伴います。鼻性視神経症には篩骨洞、蝶形骨洞、前頭洞炎が関与し、視力障害が主で眼球の突出や運動障害は少ないです。

頭蓋内合併症(髄膜炎、硬膜下膿瘍、脳膿瘍など)も上顎洞以外の洞炎より起こりえます。強度の頭痛、高熱、項部強直、痙攣、意識障害などの重篤な症状を伴います。

副鼻腔炎の治療は、まず抗生物質投与などで保存的治療を行います。それでも改善が見られなかった場合(2ヶ月など)、手術を行うことを考えます。ただし、マクロライド療法の有効性は、本来の抗菌作用ではなく、抗炎症作用、免疫調節作用、粘液分泌調節作用などによるものが大きいです。

手術の適応となるのは
・鼻中隔彎曲など鼻腔形態異常を合併するとき
・眼・脳合併症のあるとき
・腫瘍の合併が否定され得ないとき

最近では、鼻内より内視鏡を用いた、粘膜保存型の手術が行われます。骨肥厚が顕著な場合や、病変が著しく高度な場合には、Caldwell Luc法(上記に書かれている、口内の歯茎の上を切り開き、ほお内側の炎症を起こした部分を取り除く手術)による根本手術が行われることもあります。

まずはしっかりと静養なさって、再び美しい歌声を聴かせていただければ、と思われます。

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