以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

今から7年前、新米保育士として、いつも汗だくになって働いていたI・Tさん。夏場でも園児たちのためにクーラーを入れない保育園は、まるでサウナのようでしたが、彼女は暇を見つけては水分補給をして頑張っていました。

そんな中、水分の摂り過ぎでバテてしまったのか、食欲がわかなくなってしまいます。膀胱炎にもなったこともあり、水分を極力控えることを決意し、その後、夏でも水を飲まない夏バテ対策を続けることに。すると2年前の夏、突然、目の前が回転するようなめまいに襲われ、次々と異変が現れます。

具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)めまい
朝、保育園に出勤すると、立ちくらみを覚えました。一瞬でしたが、クラっとめまいを起こしていました。
2)頭痛
めまいを起こした時期と同じくして、頭痛がみられていました。
3)吐き気
めまい、頭痛とともに、吐き気を催しました。これらの症状がみられ、その後もたびたび、めまい症状に悩まされていました。
4)めまいは続いていた
めまい症状が続き、家事も思うようにできず、食事も満足にとれないような状況でした。そのため、仕事も辞めざるを得ませんでした。

こうした症状がある、とメールを友人に相談していたところ、「友人が同様の症状きたしている」と電話で知らせてもらえました。そこで、その友人が受診しているという病院を紹介してもらい、受診することにしました。

そこで精査を行い、診断されたのは「脳脊髄液減少症」という疾患名でした。

脳脊髄液減少症」とは、髄液量が減少してさまざまな症状が出現すると考えられている疾患です。交通事故など、軽微な外傷によりくも膜の破綻が生じて、持続的に髄液が漏出することで起こりやすいといわれています。

簡単に言ってしまえば、脳と脊髄を外部の衝撃から守っている髄液が、何らかの原因により減少し、その結果、脳が下がり、髄液を包んでいる硬膜が引っ張られ、耐えがたい頭痛やめまいなどの症状を引き起こしてしまう疾患です。現在、この病の患者は約5万人であるといわれています。

症状の特徴としては、頭部外傷後多彩な症状が持続し、立位保持、低気圧の接近、脱水により症状が悪化する点などがあります。造影脳MRI(矢状断、前額断)で硬膜下髄液貯留、小脳扁桃下垂、静脈拡張、硬膜肥厚などの髄液減少所見がみられます。

検査としては、MRミエログラフィーや、RI脳槽シンチグラフィーを行って髄液漏出所見がみられれば、脳脊髄液減少症の可能性がきわめて高いと考えられます。頭部MRIでは、円蓋部での硬膜下腔拡大、小脳扁桃下垂、造影剤での硬膜増強などが特徴的です。

主な原因は、やはり事故などの激しい衝撃により硬膜が破れ、髄液が漏れ出してしまうことにあります。しかし近年、事故等とは別に、夏に誰にでも起こるある症状が病に深く関わっていることがわかってきました。

実はこの病の発症率は、夏に最も多く、たかが夏バテと思っている人の中に脳脊髄液減少症の患者が数多く存在すると言われています。その原因と考えられるのが、水分不足による脱水です。

ヒトは、1日に約3Lの水が必要だといわれています。そのうち食べ物から摂れる水分は、約1Lです。つまり、残りの約2Lは、飲み物として摂らなければ体内の水分が不足してしまうのです。

そうとも知らないI・Tさんは、毎年「水をあまり飲まない」夏バテ対策を続けていたため、慢性的な脱水状態に陥っていました。毎年、夏になると現れる倦怠感。これは脱水状態により髄液が減ったことで起きたと考えられます。
 
しかし、脱水状態にあれば、普通は喉が渇くはずです。では、なぜ彼女は喉が渇かなかったのでしょうか。それは、汗のかき方に違いがありました。

スポーツなどで大量に汗をかくなど、急激に脱水した場合、脳は脱水のサインである喉の渇きを感じる信号を出します。しかし、慢性的な脱水の場合、その状態に脳が慣れてしまい、喉が渇いたというサインを出さなくなってしまうことがあるのです。そして数年間、脱水症状が続いたことで、病が進み、めまいや頭痛など様々な症状を引き起こしたと考えられます。

治療としては、以下のようなものがあります。
上記のような脳脊髄液減少症の場合は、外傷により髄液が漏出しているわけではないので、髄液量減少を改善することで、治療が可能であると考えられます。つまり、点滴や飲水で補い症状が改善すると考えられます。発症初期であれば、自宅で可能な限り長時間の臥床安静とし、飲水指導で改善が見込めます。

病状が重く入院が必要な場合では、7〜14日間入院し、点滴(酢酸リンゲル液を1,500 ml/day程度)し臥床安静を保つことが重要です。患者さんは、通常の鎮痛薬が無効な頭痛や疼痛に苦しんでおり、症状悪化の際は点滴や鎮静薬投与でしか対処できないことが多いです。

一方、脱水ではなく、頭部外傷後遺症である場合は、まずそれぞれの症状に対して対症療法を行います。一般的に頭痛、頸部痛、めまい、不眠などに対しては、消炎鎮痛薬や精神安定薬、抗うつ薬による薬物治療を行います。

頸部痛、腰痛に対しては神経ブロックや理学療法なども有効である場合が多いようです。脳脊髄液減少症と診断されるか疑いが強い場合は、まず2週間程度の臥床安静・1日2Lの水分補給による保存的治療を行います。

臥床安静により、立位での髄液漏出を抑え、漏出部位が自然に塞がることが期待できます。髄液量減少は、点滴や飲水で補い症状が改善することがあります。これで症状の改善が得られないときは、ブラッドパッチ治療を行います。

ブラッドパッチ法は、具体的に患者本人の腕から20〜40ml(男性30〜40ml、女性20〜25ml)の血を取り、背中から脊椎の硬膜外腔に注入します。血液が、糊のように裂け目をふさぎます。結果として髄液の漏れがなくなると考えられています。

夏場は、しっかりと水分をとることを心がけ(2L程度)ていただければ、と思われます。

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