読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、信州大病院内科教授である池田修一先生は、以下のようにお答えになっています。
アミロイドーシスとは、難溶性の蛋白質、アミロイドが組織に沈着し、機能障害を起こす疾患群です。全身性と限局性に大別されます。さらに全身性アミロイドーシスは、免疫グロブリン性と反応性AAとに分けられます。
全身性の中の、免疫グロブリン性アミロイドーシスは従来の分類では、原発性と骨髄腫に合併するアミロイドーシスが含まれます。
この免疫グロブリン性アミロイドーシスでは、血清中に免疫グロブリンM成分を認めます。単クローン性γ-グロブリン血症κやλ鎖が原因となり、以前はlight chainのみアミロイドとなると考えられていましたが、heavy chainの報告もあります。血清だけでなく、尿中M成分(Bence Jones蛋白)の検索で診断されることもあります。
反応性AAは、従来は続発性といわれていたアミロイドーシスです。基礎疾患が先行する場合が一般的であり、現病歴に慢性炎症疾患を有するかがポイントになります。
ほとんど慢性関節リウマチ(若年性も含む)に合併しますが、結核、慢性感染症やHodgkin病の報告もあります。このような疾患を有する患者で、経過中異常な臨床症状や検査所見が出現した場合、アミロイドを疑うことが重要となります。
家族性アミロイドーシスというものもあり、その場合は、家族歴や出身地(熊本県荒尾市と長野県小川村が有名)の確認が重要となります。ニューロパシー症状がみられ、30歳頃より症状が認められるようになります。神経症状は左右対称で下肢末端より次第に上行性に侵襲する感覚障害です。
また、血液透析施行の患者に起こるアミロイドーシスもあります。手根管症候群で発症に気づくことが多いです。手関節近くの正中神経圧迫症状で、疼痛を伴い神経支配領域の感覚障害や筋萎縮が起こってきます。高年齢、透析年数とも関係しているといわれ、5〜10年以上で増加する傾向にあります。
破壊性(脊椎)関節症も出現する可能性が合います。長期にわたる血中β2ミクログロブリン(β2 MG)の高値と関係しているといわれていますが、透析膜もハイパーホーマンス膜の使用で血中β2ミクログロブリンも除去されやすくなってきています。
ほかにも、脳アミロイドーシスや内分泌アミロイドーシスがあります。脳アミロイドーシスは、高齢化社会で問題となってきているAlzheimer病による老人性痴呆が中心像です。脳のアミロイド沈着(老人斑)が原因といわれています。
内分泌性アミロイドーシスは、内分泌系の腫瘍(甲状腺随様癌など)の中には組織学的に高頻度にアミロイド沈着が証明されます。また、肺や膀胱、皮膚では、限局されたアミロイド塊が見つかることがあります。
アミロイドーシスの治療には、以下のようなものがあります。
根本的な治療法ではなく、対処療法的な治療が行われます。ステロイド薬が中心となることが多いです。
中でも、ALアミロイドーシスは、多発性骨髄腫の治療に準じMP療法(メルファラン、プレドニゾロンの併用)を行うこともあります。最近は、発症初期の患者には、メルファランの大量投与後、自己末梢血幹細胞を輸注して骨髄の再構築をはかる治療を行い、効果を挙げています。
AAアミロイドーシスでは、SAAの増加をもたらす原疾患の治療を行います。また、コルヒチンがアミロイドーシスに有効であるともいわれています。
さらに、古くから作用機序は不明ですが、ジメチルスルホキシド(DMSO)の長期投与(外用塗布も含め)で消化器症状などの改善やアミロイド沈着の減少をみることがあります。また、血中のアミロイド前駆体蛋白の除去を目的に血漿交換療法を行うこともあります。
しっかりと検査を行い、主治医とよく相談の上、治療を決定されてはいかがでしょうか。
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「気管支アミロイドーシス」と診断されました。今のところ、治療方法がないと言われて途方に暮れています。(60歳男性)
この相談に対して、信州大病院内科教授である池田修一先生は、以下のようにお答えになっています。
アミロイドーシスは、たんぱく質の本来の形が崩れて微細な絹糸のようになった「アミロイド」が、身体の様々な臓器や組織の細胞と細胞の間にたまる病気です。心臓、腎臓、消化管、末梢神経にたまりやすく、侵された臓器は機能不全に陥ります。
全身性と局所性の2種類に分けられます。全身性では、アミロイドの元となる異常なたんぱく質が血液に乗って広範囲にたまることで心不全、腎不全などの多臓器障害が起きます。局所性では障害される臓器は原則一つで、命にかかわることはほとんどありません。
アミロイドーシスとは
アミロイドーシスとは、難溶性の蛋白質、アミロイドが組織に沈着し、機能障害を起こす疾患群です。全身性と限局性に大別されます。さらに全身性アミロイドーシスは、免疫グロブリン性と反応性AAとに分けられます。
全身性の中の、免疫グロブリン性アミロイドーシスは従来の分類では、原発性と骨髄腫に合併するアミロイドーシスが含まれます。
この免疫グロブリン性アミロイドーシスでは、血清中に免疫グロブリンM成分を認めます。単クローン性γ-グロブリン血症κやλ鎖が原因となり、以前はlight chainのみアミロイドとなると考えられていましたが、heavy chainの報告もあります。血清だけでなく、尿中M成分(Bence Jones蛋白)の検索で診断されることもあります。
反応性AAは、従来は続発性といわれていたアミロイドーシスです。基礎疾患が先行する場合が一般的であり、現病歴に慢性炎症疾患を有するかがポイントになります。
ほとんど慢性関節リウマチ(若年性も含む)に合併しますが、結核、慢性感染症やHodgkin病の報告もあります。このような疾患を有する患者で、経過中異常な臨床症状や検査所見が出現した場合、アミロイドを疑うことが重要となります。
家族性アミロイドーシスというものもあり、その場合は、家族歴や出身地(熊本県荒尾市と長野県小川村が有名)の確認が重要となります。ニューロパシー症状がみられ、30歳頃より症状が認められるようになります。神経症状は左右対称で下肢末端より次第に上行性に侵襲する感覚障害です。
また、血液透析施行の患者に起こるアミロイドーシスもあります。手根管症候群で発症に気づくことが多いです。手関節近くの正中神経圧迫症状で、疼痛を伴い神経支配領域の感覚障害や筋萎縮が起こってきます。高年齢、透析年数とも関係しているといわれ、5〜10年以上で増加する傾向にあります。
破壊性(脊椎)関節症も出現する可能性が合います。長期にわたる血中β2ミクログロブリン(β2 MG)の高値と関係しているといわれていますが、透析膜もハイパーホーマンス膜の使用で血中β2ミクログロブリンも除去されやすくなってきています。
ほかにも、脳アミロイドーシスや内分泌アミロイドーシスがあります。脳アミロイドーシスは、高齢化社会で問題となってきているAlzheimer病による老人性痴呆が中心像です。脳のアミロイド沈着(老人斑)が原因といわれています。
内分泌性アミロイドーシスは、内分泌系の腫瘍(甲状腺随様癌など)の中には組織学的に高頻度にアミロイド沈着が証明されます。また、肺や膀胱、皮膚では、限局されたアミロイド塊が見つかることがあります。
アミロイドーシスの治療
アミロイドーシスの治療には、以下のようなものがあります。
身体にたまってしまったアミロイドを薬で溶かすのが難しいため、長い間、治療不可能な病気とみなされてきました。しかし、この十数年間で、抗がん剤の大量投与などでアミロイドがたまらないようにする治療法が開発され、全身性の一部は治癒できるようになりました。
質問者が患う気管支アミロイドーシスは、気道にのみアミロイドがたまる局所性です。気管支の内側が狭くなり、ぜんそくのような症状を伴って呼吸困難になります。
狭くなった部分をレーザーで焼いて広げる治療を受けると症状が軽くなりますが、病変が広範囲でこの治療が受けられない患者さんも多くおります。その場合には、明確なデータはまだないものの、ステロイド(副腎皮質ホルモン)が投与されることになります。主治医とよく相談の上、治療に取り組んでみてください。
根本的な治療法ではなく、対処療法的な治療が行われます。ステロイド薬が中心となることが多いです。
中でも、ALアミロイドーシスは、多発性骨髄腫の治療に準じMP療法(メルファラン、プレドニゾロンの併用)を行うこともあります。最近は、発症初期の患者には、メルファランの大量投与後、自己末梢血幹細胞を輸注して骨髄の再構築をはかる治療を行い、効果を挙げています。
AAアミロイドーシスでは、SAAの増加をもたらす原疾患の治療を行います。また、コルヒチンがアミロイドーシスに有効であるともいわれています。
さらに、古くから作用機序は不明ですが、ジメチルスルホキシド(DMSO)の長期投与(外用塗布も含め)で消化器症状などの改善やアミロイド沈着の減少をみることがあります。また、血中のアミロイド前駆体蛋白の除去を目的に血漿交換療法を行うこともあります。
しっかりと検査を行い、主治医とよく相談の上、治療を決定されてはいかがでしょうか。
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