俳優の山城新伍さんが都内の特別養護老人ホームで、嚥下障害による肺炎のため、12日午後3時16分に亡くなった。享年70歳だった。

所属事務所である株式会社オフィス・タッチの代表取締役長田栄二氏は「故人が各関係者の皆様、ご友人の皆様、そしてファンの皆様方に生前に賜りました御懇情に対しまして厚く御礼申し上げますと共に謹んでご報告申し上げます」とし、「山城との思い出を皆様方の胸にお残しいただければ本人も幸いと存じます」と締めくくった。
(俳優の山城新伍さん死去、生前からの希望により近親者のみで密葬に)

誤嚥性肺炎とは


誤嚥とは、水分・食物など外来性のものや口腔−咽頭分泌物、胃液など内因性のものが間違って喉頭下部気道に侵入することです。

誤嚥には、Mendelson(メンデルソン)症候群に代表される急速かつ多量の胃内容物の誤嚥と、気づかないうちに少量の口腔・咽頭分泌物や胃液を繰り返して気道内へ吸引する不顕性誤嚥があります。通常、高齢者肺炎にかかわる重要な因子は後者の不顕性誤嚥です(大量誤嚥よりは反復する微量誤嚥による誤嚥性肺炎が多い)。

誤嚥性肺炎ととは、雑菌を含んだ口腔内容物や、逆流した食道・胃内容物が気道内へ侵入することによって発生する肺炎です。

ほとんどの場合高齢者に発症し、脳血管性障害や神経筋疾患、胃切除後など基礎疾患をもつ場合が多いです。高齢者では咳反射の低下、気管粘膜線毛運動障害などの気道クリアランスの低下や、体液性、細胞性免疫の低下と複合し誤嚥性肺炎が発症しやすいです。

日本における肺炎による死亡は、死因別死亡率で第4位を占めます。肺炎による死亡者を年齢別にみると、65歳以上の高齢者が約92%であり、肺炎による死亡の大多数が高齢者であることが示されています。72〜73歳ぐらいから死亡率が急上昇します。

誤嚥性肺炎の診断

誤嚥が直接確認されたものや、気道内から誤嚥物を吸引する症例では診断は比較的容易ですが、不顕性誤嚥による症例では診断が困難である場合が多いです。

誤嚥性肺炎は通常の肺炎に比べて、発症の多くが高齢者であるため発熱、せき、痰、呼吸困難などの典型的症状を認めないことが少なくないです。基礎疾患の悪化に伴い心不全、腎不全などの症状が前面に出る場合や、全身倦怠感、食欲不振、意識障害、頻脈など非特異的症状のみが認められることもあります。

胸部X線写真、CTではさまざまな陰影をとり得ますが、背側優位の肺炎像を呈することが多いです。S2やS6などdependent zoneに陰影の分布をみることが多いです。誤嚥性肺炎は嚥下機能障害を基礎に発症する肺炎であり、嚥下機能障害の診断・判定が重要となります。

詳細な判定にはX線透視下に行う嚥下造影検査が用いられますが、一般的にはベッドサイドでの簡便な嚥下機能評価には水飲み試験がスクリーニングとして有用であるといわれています。

臨床的には飲水テストが補助診断として有用です。水10mlを座位で一気に飲ませる(方法I)、口腔内に含ませた状態から一気に飲ませる(方法II)の両者を行わせ、むせの有無、せき込み、飲水後の声の湿性化、努力呼吸の有無などにより嚥下機能を評価しています。この検査により嚥下機能障害が認められる場合、誤嚥性肺炎の可能性が高いです。

誤嚥性肺炎の治療

誤嚥性肺炎の治療には、以下のようなものがあります。
大量に誤嚥したばあいは、気管内吸引を行い誤嚥した胃内容物や同時に誤嚥された固形物を除去する必要があります。低酸素血症の是正が重要であり、人工呼吸器下に呼気終末陽圧呼吸を行う必要がある場合もあります。広域スペクトラムの抗菌薬を投与し、ARDSに対するメチルプレドニゾロン大量療法の効果は明らかでないですが、発症早期には短期間に限り大量のステロイドの使用などが考慮されます。

不顕性誤嚥に伴う誤嚥性肺炎に対しては、抗菌薬の投与を行います。口腔-咽頭分泌物や胃液には嫌気性菌に加えてグラム陰性桿菌やMRSAなどが存在し、これらの細菌種が不顕性誤嚥により肺内へ侵入し、肺炎起炎菌となる可能性が高いです。

したがって、広域スペクトラムをもつペニシリン系、セフェム系抗菌薬に加えクリンダマイシンの併用が効果的です。また、カルバペネム系抗菌薬の有効性も高く、MRSAに対してはアミノグリコシド系抗菌薬を考慮します。しかし、高齢者では腎機能など臓器機能が低下していることが多く、また副作用が出現しやすいので注意を払う必要があります。

誤嚥を繰り返す場合には、内視鏡的胃瘻造設術による栄養補給が必要になりますが、胃食道逆流現象が顕著な場合には誤嚥は防げません。最終的に喉頭摘出術が必要になりますが、患者のQOLを著しく損なうことがあります。

誤嚥性肺炎では予防が重要です。脳血管障害が最大要因であることから、高血圧、糖尿病など生活習慣病の是正が必要となります。また、食後の歯磨き、うがいなど口腔ケアは肺炎発症の危険性を低下させます。ジェルなどを用いると、口腔ケアには便利です。

食事に際しても、誤嚥しにくい食物を考慮し、食後2時間は座位を保ちます。高血圧で脳梗塞既往があり、降圧薬としてアンジオテンシン変換酵素阻害薬を用いると誤嚥を減らす効果が期待できます(副作用で空咳があるため)。

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