読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
骨の中心部にある骨髄では、赤血球や白血球、血小板の基になる「造血幹細胞」が作られています。

骨髄異形成症候群は、造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり、血球がうまく作られなくなる病気です。60〜70歳によく見られ、高齢者が貧血を起こす場合に疑われる病気の一つです。

動悸や息切れ、倦怠感といった症状のほか、発熱したり、出血が止まらなくなったりといった症状が出ます。また、白血球が減るため、細菌やウイルスにも感染しやすくなります。

血液や骨髄の検査をし、血球の数や骨髄細胞の様子を調べ、病気の進行度を判断します。

骨髄異形成症候群とは


骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome;MDS)とは、通常の貧血治療に反応しない不応性貧血で、多彩な血球形態異常を示す慢性進行性の造血障害であり、急性白血病に移行する頻度が高いことから前白血病状態に位置づけられています。

MDSの本態は、多能性造血幹細胞の異常に基づくクローン疾患(異常な造血幹細胞から単クローン性に血球が産生される)であると考えられています。

骨髄の造血幹細胞が未解明の原因により異常をきたし、この異常クローンが増殖してしまいます。この幹細胞はある程度の分化成熟能をもちますが、その質的異常のため、多くの血球は成熟途中で死滅してしまいます(無効造血)。

このため、骨髄は正ないし過形成でありながら、血液では3血球(赤血球、白血球、血小板)が減少し、産生された血球にも形態異常(異形成)や機能障害がみられます。その結果、貧血、易感染性、出血傾向が生じます。

発病年齢のピークは60〜70歳代にあり、人口の高齢化とともに増えつつあります。10万人に対する患者数は2.7人であり、高齢の男性に多いです。

骨髄異形成症候群の診断

症状としては、蒼白、動悸、息切れなどの貧血一般の症状に加えて、発熱やせき、痰など白血球減少による感染症、紫斑、歯肉出血、鼻出血など血小板減少による出血症状をきたします。

ただ、これらの症状は初期にはきわめて軽微か無症状で、健康診断の機会に貧血や白血球減少として偶然に発見されることがあります。

末梢血の汎血球減少と骨髄の過形成像に加えて、血球形態異常の存在によって診断すします。これに染色体異常の所見が加われば診断の確実性が高まります。これら血球減少とそれに関連した病歴、末梢血および骨髄の血液形態学的所見、骨髄染色体分析などをもとに診断します。

鑑別を要するのは汎血球減少をきたす疾患で、再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症、巨赤芽球性貧血、急性白血病、骨髄線維症、癌の骨髄転移、膠原病などが重要です。診断には骨髄穿刺あるいは生検が必須となります。

従来FAB分類に基づく病型診断がなされてきましたが、予後予測のためにはInternational Prognostic Scoring System:IPSS)が国際的に広く活用されています。

骨髄異形成症候群の治療

骨髄異形成症候群の治療には、以下のようなものがあります。
血球の減り具合が何年も大きく変わらない場合は、治療する必要はありません。ただ、減少の程度が強くなって、貧血を起こしたり出血が止まらなくなったりしてきた場合は、赤血球や血小板の輸血が必要になってきます。

また、病気の程度によっては、症状の改善が期待できる免疫抑制剤やビタミンD、ビタミンKなどを投与します。ただ、これらの治療は一部、保険が適用されません。

重症になると白血病になることもあり、その場合、少量の抗がん剤を使うこともあります。年齢によっては「造血幹細胞移植」を行いますが、高齢者に対する治療法はまだ、確立していません。

血液内科医などの専門医を受診し、定期的に様子を見ながら、治療方針を決めていって下さい。

骨髄異形性症候群は、再生不良性貧血に類似した骨髄不全症としての特徴と、難治性白血病に近い側面をもち、しかもそれらの病像が患者ごとに多彩であるため、治療の標準化が困難といえます。

病型や年齢にかかわらず、血球減少に伴う障害を回避するため、しばしば赤血球・血小板輸血や抗菌薬投与の適応となりますが、必要最小限にとどめます。

慢性の血球減少の場合、ヘモグロビン値6〜7 g/dL以下、血小板数5000/μL以下で出血症状を伴う場合が一般に輸血適応となります。なお、頻回輸血に伴う鉄過剰症は深刻な医原性合併症であり、除鉄療法が勧められます。

概ね、65歳以下が積極的治療の対象となり、55歳以下で生命予後にかかわる骨髄不全や病型移行が危惧される症例は同種造血幹細胞移植の適応となります。また、65歳以下で芽球増加を伴う患者では、急性骨髄性白血病に準じた化学療法によって5〜6割の症例に完全寛解が得られるといわれています。

上記のケースでは高齢であり、貧血に対する輸血治療などが考慮され、そのような対処療法にて様子をみていくことが考えられるのではないでしょうか。

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