読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、新潟大病院小児科教授である内山聖先生は以下のようにお答えになっております。
紫斑病性腎炎とは、紫斑、腹痛・下血などの腹部症状、関節痛を3主徴とするアレルギー性紫斑病に合併する糸球体腎炎です。小児に多い疾患ですが(7〜8歳に発症のピークがある)、時に中年・高齢者でもみられます。
上気道感染後に発症するものや、薬剤やアレルギーを契機として発症することが多いですが、上記の通り病因の詳細は不明です(上気道炎に続発し冬期に高頻度となるとは言われています)。
腎炎の合併頻度は20〜60%であり、腎炎の発症はアレルギー性紫斑病発症後1ヶ月以内のことが多いといわれています。
紫斑は、ほとんどの症例に出現します。紫斑は両側対称的に点状出血を伴う丘疹状紅斑が下腿伸側・足関節外側主体に出現し、顔面・粘膜には稀です。
また、約2/3の頻度で消化器症状がみられます。臍周囲の腹痛とともに嘔吐、下痢、血便がみられ、腸重積・腸閉塞・穿孔をきたすこともあります。関節症状は、約2/3の頻度で足関節、肘・膝関節の疼痛と腫脹があり、時に小関節にもみられます。関節液は通常認めません。
腎症状は、無症候性血尿、時に肉眼的血尿を呈することがあります。また、蛋白尿を認めることも多く、高度の尿蛋白を伴う症例ではネフローゼ症候群をきたすこともあります。そのほか急性腎炎症候群を呈するものや、急速進行性糸球体腎炎症候群を呈し急性腎不全に至るものまで、多彩な臨床経過をとります。
検査としては、尿検査を行うと、血尿、蛋白尿、変形赤血球、赤血球円柱などがみられます。血液検査では、白血球は軽度上昇しますが、血小板は正常です。補体は正常、血清IgAは症例の半数で上昇します。ASO、IgA型リウマチ因子、IgA型抗カルジオリピン抗体やIgA抗好中球細胞質抗体(IgA-ANCA)が陽性化することもあります。
消化管検査では、消化管症状を伴う症例で、腹部超音波検査法にて腸管壁の浮腫、腸管拡張、腹水、腸重積所見がみられることがあります。また、上部消化管内視鏡にて十二指腸炎がみられることがあります。
皮膚生検は、紫斑部の細小血管に、多核白血球の核崩壊を伴う浸潤(leukocytoclastic vasculitis)を認めます。蛍光抗体法で血管壁にIgAを主体にIgG、C3、フィブリンの沈着がみられます。
確定診断のためには腎生検が不可欠となります。蛍光抗体法ではメサンギウム領域を中心に(係蹄壁にみられるものもある)IgA、C3の沈着を認め、電顕所見でメサンギウム領域にdepositを認めます。
紫斑病性腎炎の治療としては、以下のようなものがあります。
紫斑病性腎炎の治療としては、ステロイド薬、シクロフォスホミド、アザチオプリン などが行われています。これらに抗血小板薬、抗凝固薬を併用する多剤併用療法(カクテル療法)の有効性も報告されています。
また、激しい腹痛を訴える場合は、外科的合併症を防ぐためにもステロイド薬が必要となります。
臨床的にネフローゼ症候群を呈するか、中等度以上のタンパク尿が持続する症例は、腎生検を行い(1日0.5〜1g以上の蛋白尿が1ヶ月以上持続する例には腎生検を施行)、組織所見がび漫性であればカクテル療法を行います。軽症例にはアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)などを用います。
多くの症状は自然軽快しますが、再燃を繰り返すことがあります。特異的な治療法はなく、治療の基本は自然軽快する症状に対する対症療法と急性期の安静となっています。腹部・関節症状が強い場合や腎炎を合併したときは入院の適応となります。
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7歳の子どもの両足に赤い斑点が出て「紫斑病」と診断されました。その後、尿からたんぱくが出て「紫斑病性腎炎」と言われました。どのような病気か教えてください。(40歳女性)
この相談に対して、新潟大病院小児科教授である内山聖先生は以下のようにお答えになっております。
紫斑病は、皮膚の下で内出血を起こし、赤紫色の斑点ができる病気です。
様々な種類がありますが、お子さんは「アレルギー性紫斑病」と思われます。これは、3〜10歳の子どもに多く、20~60%に腎炎を合併します。予防の手だてがなく、通常、斑点が出てから1か月以内に発症します。
「溶連菌感染症」などの感染症や、食物アレルギーなどが一因と考えられていますが、はっきりした原因はわかっていません。腹痛や関節痛といった症状が出ることもあります。
血尿や、少量のたんぱく尿が出る程度なら、数か月で自然に治ることも多いですが、たんぱく尿が半年〜1年以上続くようであれば、詳しい検査をします。
特に、〈1〉むくみや高血圧などの症状が出る〈2〉血尿と多くのたんぱく尿が長期間出る〈3〉たんぱく尿が多く出て血液中のたんぱく質が減る「ネフローゼ症候群」や腎機能の低下などがある――場合は、早めに治療を始めた方が良いと思います。
紫斑病性腎炎とは
紫斑病性腎炎とは、紫斑、腹痛・下血などの腹部症状、関節痛を3主徴とするアレルギー性紫斑病に合併する糸球体腎炎です。小児に多い疾患ですが(7〜8歳に発症のピークがある)、時に中年・高齢者でもみられます。
上気道感染後に発症するものや、薬剤やアレルギーを契機として発症することが多いですが、上記の通り病因の詳細は不明です(上気道炎に続発し冬期に高頻度となるとは言われています)。
腎炎の合併頻度は20〜60%であり、腎炎の発症はアレルギー性紫斑病発症後1ヶ月以内のことが多いといわれています。
紫斑病性腎炎の診断
紫斑は、ほとんどの症例に出現します。紫斑は両側対称的に点状出血を伴う丘疹状紅斑が下腿伸側・足関節外側主体に出現し、顔面・粘膜には稀です。
また、約2/3の頻度で消化器症状がみられます。臍周囲の腹痛とともに嘔吐、下痢、血便がみられ、腸重積・腸閉塞・穿孔をきたすこともあります。関節症状は、約2/3の頻度で足関節、肘・膝関節の疼痛と腫脹があり、時に小関節にもみられます。関節液は通常認めません。
腎症状は、無症候性血尿、時に肉眼的血尿を呈することがあります。また、蛋白尿を認めることも多く、高度の尿蛋白を伴う症例ではネフローゼ症候群をきたすこともあります。そのほか急性腎炎症候群を呈するものや、急速進行性糸球体腎炎症候群を呈し急性腎不全に至るものまで、多彩な臨床経過をとります。
検査としては、尿検査を行うと、血尿、蛋白尿、変形赤血球、赤血球円柱などがみられます。血液検査では、白血球は軽度上昇しますが、血小板は正常です。補体は正常、血清IgAは症例の半数で上昇します。ASO、IgA型リウマチ因子、IgA型抗カルジオリピン抗体やIgA抗好中球細胞質抗体(IgA-ANCA)が陽性化することもあります。
消化管検査では、消化管症状を伴う症例で、腹部超音波検査法にて腸管壁の浮腫、腸管拡張、腹水、腸重積所見がみられることがあります。また、上部消化管内視鏡にて十二指腸炎がみられることがあります。
皮膚生検は、紫斑部の細小血管に、多核白血球の核崩壊を伴う浸潤(leukocytoclastic vasculitis)を認めます。蛍光抗体法で血管壁にIgAを主体にIgG、C3、フィブリンの沈着がみられます。
確定診断のためには腎生検が不可欠となります。蛍光抗体法ではメサンギウム領域を中心に(係蹄壁にみられるものもある)IgA、C3の沈着を認め、電顕所見でメサンギウム領域にdepositを認めます。
紫斑病性腎炎の治療
紫斑病性腎炎の治療としては、以下のようなものがあります。
ステロイド薬や免疫抑制薬、抗血小板薬を使ったり、血液を体外循環させて成分を浄化させる「血漿交換療法」を行ったりします。こうした治療で重症になる子どもの数は減ってきました。
へんとう炎などを起こし、血尿やたんぱく尿が出る場合は、感染症の治療が必要です。また、たんぱく尿が続く場合や運動をして血尿やたんぱく尿が出る場合は、激しい運動を制限しなければなりません。
この病気に詳しい小児科医を受診し、相談してみてください。
紫斑病性腎炎の治療としては、ステロイド薬、シクロフォスホミド、アザチオプリン などが行われています。これらに抗血小板薬、抗凝固薬を併用する多剤併用療法(カクテル療法)の有効性も報告されています。
また、激しい腹痛を訴える場合は、外科的合併症を防ぐためにもステロイド薬が必要となります。
臨床的にネフローゼ症候群を呈するか、中等度以上のタンパク尿が持続する症例は、腎生検を行い(1日0.5〜1g以上の蛋白尿が1ヶ月以上持続する例には腎生検を施行)、組織所見がび漫性であればカクテル療法を行います。軽症例にはアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)などを用います。
多くの症状は自然軽快しますが、再燃を繰り返すことがあります。特異的な治療法はなく、治療の基本は自然軽快する症状に対する対症療法と急性期の安静となっています。腹部・関節症状が強い場合や腎炎を合併したときは入院の適応となります。
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