以下は、「ザ!世界仰天ニュース」で扱われていた内容です。

トップ営業マンとして活躍していた中川家・礼司。彼を誘って、兄・剛は漫才師になる。天才兄弟漫才師として華々しくデビューした「中川家」。数々の新人賞を総なめにし、飛ぶ鳥を落とす勢いだった2人。

しかし彼らにはもうひとつ、誰にも言えない闘いがあった。それはデビューから6年たったある日のこと。多忙を極める兄・剛の体に異変が起きた。突然、舞台の上で得体の知れない不安感を味わう。それは命を脅かすほどだった。動悸や冷汗、呼吸困難感を感じた。

中川家・剛さんは、パニック障害と診断されていました。パニック障害とは、パニック発作が特別の原因なしに、突然出現する(予知できずに起こり、反復性)障害と言うことができると思われます。

一般人口における生涯有病率は、0.9%程度であるといわれ、患者さんの約7割は発作で救急外来を受診しているようです。男女ともに起きますが、女性の罹患率が2倍程度高いといわれます。好発年齢は、20〜40歳であるとのことです。

パニック発作は、動悸・頻脈、息苦しさ・過呼吸、死の恐怖が最も多く、そのほか悪心、めまい感、手足のしびれ、冷汗、気が狂う恐怖なども起こりえます。大きく分けて、突然の強い不安感(死ぬのではないか、気が狂ってしまうのではないかという恐怖)と自律神経症状(動悸、頻脈、呼吸困難、発汗、息切れ、胸腹部不快など)が起こる、と考えられます。

剛さんにも、突然の強い不安感や自律神経症状(動悸、頻脈、呼吸困難、発汗、息切れ、胸腹部不快など)が生じていました。
次第にその症状は強くなり、ついには舞台から漫才中にもかかわらず降りてしまうほどだった。やがてその恐怖は舞台と同じような環境の中でも起こり始めた。

たとえば、一度乗ってしまったら密室の空間になる電車やエレベーターがそうだった。電車に乗っていても、あまりの息苦しさで座り込んでしまったり、過換気になり、閉まっているドアの隙間から空気を吸おうとさえした。

やがて仕事に遅刻しがちになり、日常生活にも支障をきたし始めた。兄・剛を襲ったもの・・・それはパニック障害という心の病だった。

発作は反復性に生じ、慢性に経過していきます。症状の再発を恐れる「予期不安」を伴うことが多く、さらに発展して「広場恐怖」に至ることも多いです。

剛さんの場合も、まず「予期不安」がみられていました。電車などに乗っても、「また発作が起こるのではないか」と不安に駆られてしまっていました。

「広場恐怖」とは、助けが容易に得られない場所にいることへの恐怖です。1人で戸外や混雑の中にいたり、バスや電車で移動しているときに起こることが多いようです。このような状況を回避するため、1人では外出をしなくなったり、重度になると家にこもりっきりになってしまうこともあります。

こうした状況にあり、病院を受診したことで以下のように診断されていました。
動悸や呼吸困難感があり、まずは循環器科や呼吸器科を受診した。ところが、精査をしたが何も問題はなかった。そこで、最終的には精神科を受診した。このときの心境としては、「薄々きづいていたが…」といったことだったそうだ。

症状や経過から、医師は「パニック障害」と診断した。当初、剛は礼二にさえ疾患のことを言えなかった。仕事に支障が出始め、ようやく礼二にのみ伝えたが、そのときには礼二も理解することはできなかった。

だが、「エレベーターを一緒に乗って欲しい」などと言いだした兄・礼二の様子を見て、ようやく「病気である」と気づいたそうだ。剛はそのときのことを「血が出ているわけでも、顔が青くなるでもない。だから、分かってもらえない」と病気について語っていた。

パニック発作を始め、精神疾患は一見は健常人と変わらないため、理解していただくことが困難なことがあります。そのため、偏見や無理解に苦しむ患者さんやそのご家族も少なくないと聞きます。

ですが、26年間一緒にいた兄の尋常ならざる様子に、礼二さんは「病気である」と認識を改めたそうです。
そこから、仕事場へ礼二は剛に付き添って行くようになった。電車には長く乗ることが出来なかった。そのため、30分で着く仕事場へ4時間かけることもあった。そのため、仕事は次々に降板させられていった。

そして、その後は礼二のみの仕事が増えていった。その間、剛は治療を続けていった。その甲斐や周囲の先輩芸人の理解もあり、次第に剛は仕事へ復帰することができるようになった。

パニック障害の治療としては、まず疾患教育を十分に行い、発作そのものに生命の危険はないことを保証する(しっかりと納得してもらう)ことが重要です。

それでも不安状態がなかなか治まらない場合は抗不安薬(ジアゼパム)を静注することもあります。こうした発作が出現する時のために、抗不安薬(ワイパックスなど)を持参してもらうことも、安心につながるようです。

他には、薬物療法と精神療法があり、様々な治療が有効性を認められています。薬物療法では、発作の抑制を目的に抗うつ薬(SSRIや三環系抗うつ薬・スルピリド)が用いられ、不安感の軽減を目的にベンゾジアゼピン系抗不安薬が用いられます。精神療法としては、認知行動療法などがあります。

SSRIであるパキシルや、不安の発作時に抗不安薬であるソラナックスを服薬することが多いようです。こうした薬物には明確な有効性があり、特に適切な患者教育と指導と併用した場合の有効性は極めて高いといわれています。

また最近は、新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が語られることが多いです。基本的に、パニック発作が治療されれば、広場恐怖も時間とともに改善されることが多いようです。

是非とも周囲にこうしたパニック障害などをもたれている患者さんがいらっしゃたら、ご理解を示していただければ、と思われます。

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