読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、山王病院リプロダクションセンター長である藤原敏博先生は以下のようにお答えになっております。
不正出血とは、女性性器からの出血のうち、生理的な出血(月経、分娩、産褥)以外の病的な出血の総称と定義されます。月経は、子宮内膜の自然な剥脱による周期的な腟からの出血です。従って、正常な妊娠に関連しない月経の定義に合致しない出血が不正出血です。
不正出血がある場合、年齢層によって可能性の高い疾患を考慮して問診と初期検査を行っていきます。妊娠可能な年齢の場合は、まず妊娠に関連した出血かどうか、妊娠していなければ器質性か機能性か、器質性ならば悪性か良性かを鑑別していきます。
初経から5〜6年の間あるいは閉経前期には無排卵性周期のことが多く、不正出血の原因となりやすいです。妊娠初期の月経様出血や不正出血そのものを月経と思っていることも多いので、普段の月経と少しでも違うようならば、妊娠に関連した出血を念頭に置きます。排卵前2〜3日に起こる中間期出血も問診により推定しえます。
随伴症状としては、帯下,外陰部そう痒感・疼痛を伴う場合は炎症性疾患、性交時の接触出血を伴う場合は腟、子宮腟部の疾患、下腹痛を伴う場合は子宮・付属器の炎症性疾患、腫瘍性疾患、妊娠関連疾患など、過多月経、月経困難症を伴う場合は子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症などがまず疑われます。
さらに、以下のような疾患が考えられます。
妊娠に関連した出血である場合、妊娠初期であれば流産・切迫流産、子宮外妊娠、絨毛性疾患(胞状奇胎、絨毛癌など)が考えられます。これらの場合、経腟超音波断層法による胎嚢や付属器所見の確認とともに、尿中hCG定量を行います。
妊娠中期以降であれば、早産・切迫早産、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、辺縁静脈洞破裂を考えます。
分娩時・産褥期であれば、子宮破裂、産道損傷、弛緩出血、胎盤遺残、胎盤ポリープなどを考えます。
妊娠以外では、外傷、異物などが考えられます。問診、視診を行い、IUD(子宮内避妊具)使用の有無を確認します。
炎症では、閉経前には高度の炎症以外出血を伴うことは少ないですが、老年期は萎縮性腟炎による出血が多いです。
腫瘍では、子宮筋腫、子宮腺筋症の場合は過多月経などの月経異常を伴うことが多いです。閉経後の出血の場合は、たとえ腟炎があったとしても、子宮体癌を念頭に置いて考えます。
内分泌異常、機能性出血の場合もあり、基礎体温測定、血中ホルモン値測定、負荷試験などを行います。薬剤の服用も確認する必要があります。
その他、子宮腟部びらんや子宮頸管ポリープは視診により診断しますが、細胞診、組織診による悪性腫瘍との鑑別は必須となります。
現段階では、さまざまな疾患が考えられます。ぜひとも産婦人科を受診され、精査を行って頂ければ、と考えられます。
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ここ1か月くらい、不正出血が時々あり、シャワーなど外からの刺激で膣内部に痛みがあります。出産経験はありません。何か怖い病気なのでしょうか。(44歳女性)
この相談に対して、山王病院リプロダクションセンター長である藤原敏博先生は以下のようにお答えになっております。
症状が二つありますので、まずはおのおのについて可能性のある婦人科疾患を挙げてみます。
不正出血に関しては、膣炎や子宮内膜炎といった炎症と、腫瘍性病変によるものが考えられ、後者では子宮筋腫や子宮頸管ポリープなどの良性腫瘍と、子宮頸がん、子宮体がん、外陰がんといった悪性腫瘍が挙げられます。
膣内部の痛みについては、膣炎の可能性が最も高いと考えられます。ただ、質問者はシャワーの刺激で痛みを感じていますので、実際には外陰部に炎症があるのかもしれません。その場合は、ウイルス感染による外陰ヘルペス症や、粘膜などに障害が起こる免疫の病気・ベーチェット病なども考えられます。
不正出血とは、女性性器からの出血のうち、生理的な出血(月経、分娩、産褥)以外の病的な出血の総称と定義されます。月経は、子宮内膜の自然な剥脱による周期的な腟からの出血です。従って、正常な妊娠に関連しない月経の定義に合致しない出血が不正出血です。
不正出血がある場合、年齢層によって可能性の高い疾患を考慮して問診と初期検査を行っていきます。妊娠可能な年齢の場合は、まず妊娠に関連した出血かどうか、妊娠していなければ器質性か機能性か、器質性ならば悪性か良性かを鑑別していきます。
初経から5〜6年の間あるいは閉経前期には無排卵性周期のことが多く、不正出血の原因となりやすいです。妊娠初期の月経様出血や不正出血そのものを月経と思っていることも多いので、普段の月経と少しでも違うようならば、妊娠に関連した出血を念頭に置きます。排卵前2〜3日に起こる中間期出血も問診により推定しえます。
随伴症状としては、帯下,外陰部そう痒感・疼痛を伴う場合は炎症性疾患、性交時の接触出血を伴う場合は腟、子宮腟部の疾患、下腹痛を伴う場合は子宮・付属器の炎症性疾患、腫瘍性疾患、妊娠関連疾患など、過多月経、月経困難症を伴う場合は子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症などがまず疑われます。
さらに、以下のような疾患が考えられます。
不正出血と痛みの症状は、同じ病気に起因しているか、異なる病気から別々に起こっているか、二つの可能性があります。
大まかにいって、膣炎では、おりものが増加したり性状がいつもと違ったりします。子宮内膜炎では下腹部の痛みや発熱などの症状が表れ、外陰ヘルペス症やベーチェット病では外陰部がただれて潰瘍ができます。ただし、外陰ヘルペス症で1か月も症状が続くことはまれです。
腫瘍性病変は、医療機関で超音波や磁気共鳴画像(MRI)などの画像診断、細胞診検査などを受けないと、正確な情報を得ることは困難で、治療も原因となる病気によって薬物療法や手術療法が行われます。いずれにしても、ご自身では判断ができないことが多いので、早めに婦人科を受診してください。
妊娠に関連した出血である場合、妊娠初期であれば流産・切迫流産、子宮外妊娠、絨毛性疾患(胞状奇胎、絨毛癌など)が考えられます。これらの場合、経腟超音波断層法による胎嚢や付属器所見の確認とともに、尿中hCG定量を行います。
妊娠中期以降であれば、早産・切迫早産、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、辺縁静脈洞破裂を考えます。
分娩時・産褥期であれば、子宮破裂、産道損傷、弛緩出血、胎盤遺残、胎盤ポリープなどを考えます。
妊娠以外では、外傷、異物などが考えられます。問診、視診を行い、IUD(子宮内避妊具)使用の有無を確認します。
炎症では、閉経前には高度の炎症以外出血を伴うことは少ないですが、老年期は萎縮性腟炎による出血が多いです。
腫瘍では、子宮筋腫、子宮腺筋症の場合は過多月経などの月経異常を伴うことが多いです。閉経後の出血の場合は、たとえ腟炎があったとしても、子宮体癌を念頭に置いて考えます。
内分泌異常、機能性出血の場合もあり、基礎体温測定、血中ホルモン値測定、負荷試験などを行います。薬剤の服用も確認する必要があります。
その他、子宮腟部びらんや子宮頸管ポリープは視診により診断しますが、細胞診、組織診による悪性腫瘍との鑑別は必須となります。
現段階では、さまざまな疾患が考えられます。ぜひとも産婦人科を受診され、精査を行って頂ければ、と考えられます。
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