以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

外回りが多い営業という仕事柄、身だしなみには人一倍気を付けていたS・Kさん(52)。ところが17年前、胆石と急性膵炎を発症し、1ヶ月半入院。退院後、前髪をかきあげると、大量のフケがパラパラと落ちてくるのに気付きました。

洗い方が足りなかったと思った彼は、爪を立てて頭皮をゴシゴシ洗い、シャンプーの回数も増やします。しかし、フケは一向に改善しないばかりか、更なる症状にも悩まされるようになりました。
1)フケ
2)頭皮が赤くなる
3)頭皮に痒みが出る
4)フケが増える
具体的には、このような症状がみられていました。そのため、皮膚科を受診したS・Kさん。そこで、彼は「脂漏性皮膚炎」と診断されました。

脂漏性皮膚炎とは


「脂漏性皮膚炎」とは、主として成人によくみられるもので、頭部、顔面、腋窩、胸部や背部正中部などの、いわゆる脂漏部位(皮脂腺が多く存在する部位)にできやすい湿疹をいい、通常痒みを伴います。一般的にいう、「ふけ症」とは軽症の脂漏性皮膚炎を指しているものと考えられます。


簡単にいってしまえば、脂の分泌の盛んな顔や頭などに炎症が起きる疾患です。頭に起きた場合、それはフケの原因となります。

発症頻度は人口の3〜5%といわれており、人種差はありません。男女比は2:1で男性に多いですが、症状に季節的変動はありません。現在日本人の推定患者数は約300万人といわれ、40才以上の中高年、特に男性に多い疾患です。

現在、皮膚に常在する真菌の一種であるマラセチアが脂漏性皮膚炎の発病因子として注目されています。そもそもマラセチア真菌は、カビの一種。なぜこの菌が脂漏性皮膚炎を引き起こすのか、そのメカニズムは、おおよそ次のように考えられています。

皮膚に分泌された皮脂中のトリグリセリドが真菌(M.furfurなど)によって分解されて生じた遊離脂肪酸が、皮膚を刺激して皮膚炎が生ずる考えが論じられています。簡単にいってしまえば、マラセチア真菌は、毛穴の奥にある皮脂腺から出る皮脂を食べ、生息しています。しかし、皮脂が増えると、それとともにマラセチア真菌も増殖。すると皮膚に刺激を与えるようになり、大量のフケが出てしまうと考えられています。

このほかに皮脂中の過酸化脂質による刺激、先天的な皮脂分泌の異常、ビタミン欠乏(ビタミンB2、B6)、精神的ストレス、心疾患、アルコール多飲などが考えられている。糖尿病、肝障害に合併することもあります。

通常、フケは頭皮の新陳代謝によって誰でも出るものですが、目に見えるほどではありません。もし目に見えるほどフケが大量に出ている場合は、マラセチア真菌が異常に増え、この病になっている可能性があります。

では、何故そんなに菌が増殖してしまったのでしょうか。一般的にマラセチア真菌の増える原因としては、不規則な食生活や睡眠不足、ストレスなどが挙げられます。S・Kさんの場合は長期入院によるストレス。初めてづくしの入院によるストレスが免疫力を低下させ、マラセチア真菌が大増殖してしまったと考えられます。

では、彼のどんな行動が、病を悪化させてしまったのでしょうか?実はシャンプーを変えたことは、病の悪化と全く関係ありません。問題は洗い方でした。S・Kさんは、フケをなくそうと頭に爪を立ててゴシゴシ洗ってしまったため、頭皮を痛めてしまいました。その結果、病は悪化。17年も治療を続けることになってしまったのです。

脂漏性皮膚炎の治療


脂漏性皮膚炎の治療としては、以下のようなものがあります。
マラセチアは好脂性の真菌であるため、油性整髪料は使用しないようにします。洗髪は必ずしも毎日でなくともよいですが、皮脂を取り除いてマラセチアの増殖を防ぐようにします。

シャンプーでは抗真菌薬である硝酸ミコナゾールを含むコラージュフルフルが推奨されますが、ジンクピリチオン配合のメリット、オクトピロックス配合のオクトシャンプー、二硫化セレン配合のハツモール、強力スカーフのほか、ピロクトンオラミン配合のものも多種類市販されています。生活のリズムを整え、睡眠が不規則にならないように注意することも必要です。

また、薬物療法としては、強力な抗炎症作用を有するステロイド外用薬は脂漏性皮膚炎には有効ですが、治療中止後に再燃しやすく、また長期外用による皮膚萎縮、毛細血管拡張などの局所性副作用も懸念されます。

抗真菌薬であるケトコナゾール外用薬は長期の外用でもステロイド外用薬にみられるような副作用がなく、ステロイド副作用の生じやすい顔面には使いやすい薬剤です。また、ケトコナゾールは外用中止後も寛解期間がステロイド外用薬より長く持続します。

一方、抗炎症作用はステロイド外用薬より弱いために、炎症症状の強い皮疹に対してはステロイド外用薬を併用するのがよいです。内服薬としては痒みの強い場合は抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬を用います。フケが多く頭皮に固着している場合には、尿素含有ローションを使ってフケが取れやすいようにします。


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