40代、いや、30代であっても何気なく鏡を見ていて、シミ、シワ、白髪などを発見するのは気分が良いものではない。だが、それが健康上の大きな問題になるような異変であれば、決して放っておくわけには行かない。90年代のトップ・モデルであったシンディ・クロフォード(43)も、今ちょっとした悩みを抱えているようだ。

クロフォードと言えば、左の口元にあるホクロがなんともセクシー。トレード・マークでもあったのだが、現在彼女はそのホクロについて、ガン化しているのではないかと心配で仕方がないそうだ。

シンディは「鏡を見ていて感じるの。ここ数年で、少しずつホクロの様相が変わって来ているみたい」と語り、かかりつけの皮膚科医師のもとで、ガン化していないか定期的なチェックをすることになったのだそうだ。

「こういう事はあまり他人に知られたくないし、話したいテーマではなかったわ。でも知られてしまった以上お話しないとね。とにかく体中のホクロを毎年一回調べてもらうことになったわ。当然のことなのよ。私たちの誰もが、皮膚がんには無関心ではいられないはずよ。」

リッチな実業家の夫を持ち、とにかく“リゾート地での避暑”ざんまいの生活を続けている彼女。白人の肌は弱いはずだが、それを強い日差しにさらし、普段も小麦色の肌を愛している。
(【イタすぎるセレブ達】シンディ・クロフォード、ほくろのガン化を心配。)

悪性黒色腫とは


悪性黒色腫(メラノーマ)とは、メラニン色素を作る細胞であるメラノサイトが癌化によって生じる悪性腫瘍です。多くは黒褐色の病変として皮膚に生じてきます。ホクロと似た形状であるため、放置や診断において見逃されるケースもあります。

発生様式としては、正常メラノサイトが直接癌化する場合と、既存の異型母斑(dysplastic nevus)、色素細胞性母斑が癌化する場合と、2つの過程を経て生ずる可能性があります。早期より血行性リンパ行性転移を起こし、極めて予後の悪い癌です。

国内で年間1,500人〜2,000人が発症し、転移すると90%が5年以内に死に至るといわれており、転移を生じやすく、きわめて悪性度の高い腫瘍であることが分かるかと思われます。発生頻度は人種差が大きく、人口10万に対して白人10〜20、日本人1〜2、黒人1以下と、かなりの開きがあります。

頻度としては、世界的に増加傾向が著しいがんの1つであるといわれています。その誘因の1つに、過度の紫外線照射が挙げられています。ちなみに、皮膚以外にも口腔・鼻腔粘膜、脈絡膜、脳軟膜からも発生します。

病型は、悪性黒子型、表在拡大型、結節型、末端黒子型の4型があり、粘膜型を区別することもあります。日本人では掌蹠、爪甲部の末端黒子型が40%を占めていますが、最近体幹や下腿に発症する表在拡大型が増加傾向にあります(白人では体幹や四肢に好発し、表在拡大型が大多数を占める)。

悪性黒色腫の診断


診断で重要なのは、何といっても視診が重要です。黒褐色の病変をみた場合は、メラノーマを考える必要があります。一般的に、生検は禁忌であるといわれています。というのも、生検は腫瘍の播種を招くおそれがあるといわれているからです。

ですが、2週間居ないに拡大切除するなら問題ない、という意見が有力であり、疑わしい症例は最終的に治療を行う施設に紹介し、そこで生検を行うことが望ましい(ただ、生検を行う場合には全摘生検が望ましい)と考えられます。

先天性や後天性色素細胞母斑が発生母地の場合、その大きさ、形、色調が変化したり、一部が潰瘍や腫瘤状になれば悪性化を考慮します。また、中高齢者に発症した色素斑が非対称性、辺縁や濃淡が不整で6mm以上のものには注意を要します。

「メラノーマ(悪性黒色腫)を疑わせる所見」の特徴の覚え方として「ABCDE」というものが有名であると思われます。これは、
A:asymmetry 非対称性
B:borderline irregularity 辺縁が不規則
C:color variegation 色調が不規則
D:diameter enklargment 直径6mm以上
E:Elevation of surface 表面隆起

というもので、それぞれの項目の頭文字を集めて「ABCDE」と覚えたりします。

ダーモスコピーを用いて、皮膚病変を拡大かつ表層を透見して観察する検査もあります。進行例では肉眼的診断が容易であること、および真皮浸潤部のダーモスコピー所見としては無構造色素沈着、白色調ベールがみられる程度であることから、有用性は少ないですが、一方で肉眼的診断が困難な場合がある早期病変においてはいくつかの特徴的所見がみられ、有用性が高いです。

掌蹠の悪性黒色腫早期病変においては、皮丘部優位の平行な帯状色素沈着(皮丘平行パターン)で、かつ不規則な色素沈着が大きな特徴です。

悪性黒色腫の治療


悪性黒色腫の治療としては、以下のようなものがあります。
治療方針の決定のため、新病期分類にしたがって病期の評価をします。
病期は原発巣の厚さ(tumor thickness:TT)と潰瘍化、所属リンパ節転移、遠隔転移により決定されます。原発巣の厚さは、高周波エコーやMRIで評価を試みます。術前に理学的および画像上、所属リンパ節に転移が認められない場合で、原発巣の厚さが1 mm超の場合や1 mm以下でも潰瘍化を伴う場合、sentinel node biopsyを施行します。

sentinel nodeに転移があれば根治的郭清術を施行します。術前に明らかな所属リンパ節転移が認められる場合も根治的リンパ節郭清術を施行します。

治療としては、病期0〜?であれば外科的療法が原則です。
悪性黒子型や末端黒子型は臨床的に色素斑の境界がしばしば不明瞭なので、局所再発の頻度がほかの病型に比べ高いといわれています。故に、切除標本で組織学的に異型メラノサイトの範囲を確認することが重要です。

また、メラノーマは根治的外科手術を行っても再発や転移率が高いことから、術後補助療法(いわゆるアジュバント療法)を行うことが一般的です。遠隔転移を起こした進行期メラノーマの予後はきわめて不良であり、現時点では化学療法が中心です。

病期0(表皮内病変)では、病巣辺縁から5 mm〜1 cm離して皮下脂肪織深層で切除します。病期I(TT≦2 mm)では、病巣辺縁から1〜2 cm離して皮下脂肪織深層または浅在性筋膜まで切除します。

病期II(2mm<TTまたは1<TT≦2mmでも潰瘍化を伴うもの)では、病巣辺縁から2〜3 cm離して浅在性筋膜まで切除します。術後補助療法としてインターフェロンβ(フエロン)の局注を施行することがあります。TTが4 mm超の場合はDAV-フエロン療法を施行します。

病期?(所属リンパ節転移)では、原発巣切除および根治的リンパ節郭清術を施行します。原発巣は辺縁から3 cm離します。術後補助療法としてDAV-フエロン療法が頻用されています。しかしながら、DAVによる2次発癌の可能性もあるため、高齢者には施行しないなどの慎重な適応選択が必要となります。

病期IV(遠隔転移)では、原則として化学療法が主体となります。しかしながら、限局性で非進行性の肺転移病変などでは延命効果を期待して転移巣切除が行われることもあります。

脳転移に対してはガンマナイフなどを用いた放射線療法が施行されることもあります。化学療法ではDAC-Tam療法が施行されることが多いですが、有害反応が多く、繰り返し施行できない場合があります。その場合、有害反応の少ないDTIC単独療法が選択されることもあります。

「次第に大きくなるホクロ」「形(とくに辺縁など)が変わってきている」というような所見がみられたら、一度、皮膚科受診をされることが望まれます。

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