読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、新潟手の外科研究所所長である坪川直人先生は以下のようにお答えになっています。
尺骨バリアンスは、橈骨の尺側縁と尺骨頭の高さ(近位‐遠位方向)が等しい場合をzero(neutral) varianceと定義しています。これに対して、尺骨が橈骨に対して遠位方向に長い場合をplus(positive) variance、短い場合をminus(negative) varianceと定義しています。
「尺骨突き上げ症候群」とは、尺骨がplus varianceを呈することにより、尺骨頭が尺側手根骨(月状骨と三角骨)や三角線維軟骨に衝突し、手関節尺側部痛を来す疾患です。
原因としては、橈骨遠位骨端線損傷による早期閉鎖、骨軟骨腫や感染などにより、橈骨の短縮、橈骨遠位端短縮変形治癒などにより本症が発生します。Colles骨折の変形治癒により、発生することが最も多いといわれています。
症状としては、手関節尺側部痛が主症状となっています。手関節の運動は橈骨遠位端変形治癒による掌背屈方向の制限以外、前腕の回内外運動の制限が主要症状であり、それ以外の症状としては握力低下など一般的な手関節疾患と共通です。
尺骨突き上げ症候群に対する特殊検査としては、ulnocarpal stress testとgrip testがあります。ulnocarpal stress testとは手関節を尺屈し、軸圧を加えたまま前腕を回内外することにより手関節尺側部痛が誘発されます。
grip testとは手関節を強く握った後に強く尺屈し、やはり手関節尺側部痛が誘発されます。
単純X線検査も行われ、肘関節を90°屈曲、手関節を回内外中間位での手関節前後像での尺骨バリアンスの測定が必須です。
CT・MRI検査も行われ、CTでは遠位橈尺関節の(亜)脱臼、不安定性の評価のために重要です。MRIでは尺骨頭、月状骨、三角骨に低信号域が認められます。骨シンチグラフィーでは、尺骨遠位部および月状骨、三角骨に取り込みの亢進が認められます。
治療としては、以下のようなものがあります。
手関節固定用装具装用、鎮痛剤投与などの保存療法を少なくとも2〜3カ月行い、症状の改善が得られなければ手術的療法に移行します。
術前の諸検査により、遠位橈尺関節の不安定性、三角線維軟骨triangular fibrocartilage complex(TFC)損傷の状態、遠位橈尺関節の関節症変化などにより、どのような手術方法を選択すべきであるかを検討します。
手術療法としては、尺骨短縮術、橈骨矯正骨切り術、hemiresection-interposition arthroplasty(HIA)、Sauve-Kapandji手術、Wafer procedure、Darrach手術などがあります。
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右の手首に痛みがあり、「尺骨(しゃっこつ)突き上げ症候群」と診断されました。完治が難しいと言われたのですが、痛みを軽くしたり完治させたりする方法はありますか。(35歳女性)
この相談に対して、新潟手の外科研究所所長である坪川直人先生は以下のようにお答えになっています。
手首の関節は、親指側の橈骨(とう)、小指側の尺骨という2本の「前腕骨」と、手の甲の辺りに8個ある小さな骨「手根(しゅこん)骨」で構成されています。
通常、尺骨と橈骨は同じぐらいの長さです。しかし、重労働や加齢、骨折などにより、尺骨が橈骨よりも長くなってしまうことがあります。これが、尺骨突き上げ症候群です。
橈骨よりも尺骨が長くなると、小指側にある手根骨に当たってしまい、手を強く握ったり、重いものを持ったりすると、手首の小指側に痛みが生じます。
手首の関節の小指側を押したり手首を外側に曲げたりして痛みがあれば、診断がつきます。また、エックス線撮影で橈骨と尺骨の長さの差を計測したり、磁気共鳴画像(MRI)や内視鏡で、尺骨が当たる骨や靭(じん)帯の状態を確認したりして診断することもあります。
尺骨バリアンスは、橈骨の尺側縁と尺骨頭の高さ(近位‐遠位方向)が等しい場合をzero(neutral) varianceと定義しています。これに対して、尺骨が橈骨に対して遠位方向に長い場合をplus(positive) variance、短い場合をminus(negative) varianceと定義しています。
「尺骨突き上げ症候群」とは、尺骨がplus varianceを呈することにより、尺骨頭が尺側手根骨(月状骨と三角骨)や三角線維軟骨に衝突し、手関節尺側部痛を来す疾患です。
原因としては、橈骨遠位骨端線損傷による早期閉鎖、骨軟骨腫や感染などにより、橈骨の短縮、橈骨遠位端短縮変形治癒などにより本症が発生します。Colles骨折の変形治癒により、発生することが最も多いといわれています。
症状としては、手関節尺側部痛が主症状となっています。手関節の運動は橈骨遠位端変形治癒による掌背屈方向の制限以外、前腕の回内外運動の制限が主要症状であり、それ以外の症状としては握力低下など一般的な手関節疾患と共通です。
尺骨突き上げ症候群に対する特殊検査としては、ulnocarpal stress testとgrip testがあります。ulnocarpal stress testとは手関節を尺屈し、軸圧を加えたまま前腕を回内外することにより手関節尺側部痛が誘発されます。
grip testとは手関節を強く握った後に強く尺屈し、やはり手関節尺側部痛が誘発されます。
単純X線検査も行われ、肘関節を90°屈曲、手関節を回内外中間位での手関節前後像での尺骨バリアンスの測定が必須です。
CT・MRI検査も行われ、CTでは遠位橈尺関節の(亜)脱臼、不安定性の評価のために重要です。MRIでは尺骨頭、月状骨、三角骨に低信号域が認められます。骨シンチグラフィーでは、尺骨遠位部および月状骨、三角骨に取り込みの亢進が認められます。
治療としては、以下のようなものがあります。
治療は、消炎鎮痛剤を服用したり湿布や軟こうなどの薬を使ったりします。また、サポーターや手首の関節を固定する装具を付け、手首を安静に保つことも大切です。
それでも症状が良くならない場合は手術をします。長くなった尺骨を短く切って橈骨とほぼ同じ長さにし、金具で固定します。
骨の形が変形している場合は、飛び出している尺骨を部分的に切除したり、橈骨と尺骨の間の関節を固定したりし、骨が飛び出ないようにする手術をします。
一度、お近くの手の外科の専門医を受診することをお勧めします。
手関節固定用装具装用、鎮痛剤投与などの保存療法を少なくとも2〜3カ月行い、症状の改善が得られなければ手術的療法に移行します。
術前の諸検査により、遠位橈尺関節の不安定性、三角線維軟骨triangular fibrocartilage complex(TFC)損傷の状態、遠位橈尺関節の関節症変化などにより、どのような手術方法を選択すべきであるかを検討します。
手術療法としては、尺骨短縮術、橈骨矯正骨切り術、hemiresection-interposition arthroplasty(HIA)、Sauve-Kapandji手術、Wafer procedure、Darrach手術などがあります。
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